反社会性パーソナリティ障害とは?【医師が分かりやすく解説】
坂 副院長坂 副院長

反社会性パーソナリティ障害とは、社会の規則、規範を守ろうとしない、他人を傷つけたりいじめたりすることに罪悪感を持たない障害です。

反社会性パーソナリティ障害の人は親との関係などに問題があり、今までに否定的な対応をたくさん受けてきている場合もあります。
挑発的な言動、敵意を示してきたりすることがありますが、それに対して感情的にはならず、理由を根気強く聞いてあげることが重要です。
また反社会性パーソナリティ障害は治療によって、少しずつ改善していくことができます。

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反社会性パーソナリティ障害とは?

反社会性パーソナリティ障害とは、社会の規則、規範を守ろうとしない、他人を傷つけたりいじめたりすることに罪悪感を持たない障害です。
精神病質、社会病質、あるいは非社会性パーソナリティ障害とも呼ばれております。
まずパーソナリティ障害とは、一般の人と比べ、偏った考え方、行動があるため、家庭や社会、職業に支障をきたします。
どんな人でも性格の偏りなどはあるものですが、その偏りが原因で問題が現れ、日常生活に支障をきたすことではじめて『障害』と判断されます。
現在、さまざまなパーソナリティ障害が確認されており、反社会性パーソナリティ障害はその一つです。
診断基準は18歳以上であり、15歳以前の素行症が診断基準の一つとなっております。
反社会性パーソナリティ障害を発症している数は人口の、約3%が男性、約1%が女性と言われております。
反社会性パーソナリティ障害の人の中には犯罪などの問題行動を起こしやすい傾向とされていますが、反社会性パーソナリティ障害だから犯罪者ということではありません。
反社会性パーソナリティ障害の人の多くは、まわりと同じように社会生活を送れています
。ですが問題を抱えて悩んでいるという場合もあります。
そのためまわりの人が本人の悩みに気づいてあげることが重要です。

反社会性パーソナリティ障害の特徴

□欲求不満になりやすく、堪え性がない

やりたいことがあればすぐに行動に出たり、スリルや魅力的なことに対してすぐに飛びつきますが、どのような結果になるのかを気にしたりしません。

□社会の規則、規範を守れない

社会の規則、規範を破ることに罪悪感はなく、それ自体に満足感を得ます。これは社会に拒絶された怒りと復讐に生きがいを感じるからです。

□自信過剰で自説にこだわりをもつ

言葉巧みに合理化し、専門用語などを用いて自分を誇示するため、表面的な魅力を示すように見えることもあります。

□自らの不誠実な行動を正当化する

悪意や攻撃で他人を傷つけたり侵害しても、被害者に問題があると考えることで、その不誠実な行動を正当化します。

反社会性パーソナリティ障害の分類

反社会性パーソナリティ障害は5つのタイプに分けることができます。

・貪欲タイプ

物質的である物を他者から奪ってでも獲得するタイプです。常に貪欲で獲得しても満足できません。

・評判を守ろうとするタイプ

貪欲タイプが物質的な物の獲得するタイプであるのに対して、名声や評判を獲得するため、手段を選ばないのが評判を守ろうとするタイプです。
これは名声を獲得することによって、自分が侮辱されないよう、傷つけられないようにするためです。

・リスクテイカータイプ

スリルを競ったり、命知らずな行動を好んだりするタイプです。このタイプは危険を犯すこと、スリルを感じることで、生の実感を味わいます。
周囲の人々に与える悪影響に無頓着であることから、まわりから見ると反社会的であるとみられます。

・放浪タイプ

社会に対し復讐や報復といった行動とは逆に社会から離れようと考えるタイプです。夫婦関係や住まいなどの束縛によるプレッシャーから逃げます。

・悪意あるタイプ

極度の人間不信で、他人が言うことには裏があるはずだと思っているタイプです。他のタイプよりも復讐心、反逆心が強く、他人に対し権力を振るう立場についた時、横暴さが出る時があります。

反社会性パーソナリティ障害の原因

反社会性パーソナリティ障害は、遺伝的要因と環境的要因の2つが原因であると考えられています。

遺伝的要因

反社会性パーソナリティ障害の人が家族にも見られる理由については、遺伝性が示唆されています。
反社会性パーソナリティ障害の大規模なゲノムワイド関連解析(GWAS)で6番染色体の 6p21.2. の部位に共通して異常がみられることが分かっています。
反社会性パーソナリティ障害 遺伝
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5048197/

環境的要因

遺伝的要因とは関係なく、心理的、社会的な環境的要因によって反社会性パーソナリティ障害になる場合があります。
主な原因は、虐待やネグレクトなどによって道徳心、倫理観が育たない環境や薬物乱用だと言われています。
親が自分に向ける態度をもとに、他人との関わりを持ちます。よって親との愛着が十分に経験できないと他人に対する感受性、愛着行動が欠けてしまい、共感できず、他人の幸福に無頓着になります。

反社会性パーソナリティ障害の診断

反社会性パーソナリティ障害は、自分では気付きにくい障害です。一見普通に社会生活を送っているように見える人も少なくありません。
反社会性パーソナリティ障害と診断するには、二次障害や社会生活に困難が生じた場合が多いです。
不安症や抑うつ障害、アルコール、薬物依存などの物質使用障害、胃腸などに異常はないのに吐き気などの身体症状症、ギャンブル依存、他の衝動制御の障害を伴うことがあります。
このような症状をきっかけで医療機関を受診し、反社会性パーソナリティ障害だとはじめて気づくケースもあるようです。

反社会性パーソナリティ障害の診断基準

反社会性パーソナリティ障害の診断には医療機関によって異なります。
主に世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)やアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)に基づき診断をします。
以下は『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)による診断基準です。
A.他人の権利を無視し侵害する広範な様式で、15歳以降起こっており、以下のうち3つ(またはそれ以上)によって示される。
(1)法にかなった行動という点で社会的規範に適合しないこと。これは逮捕の原因になる行為を繰り返し行うことで示される。
(2)虚偽性。これは繰り返し嘘をつくこと、偽名を使うこと、または自分の利益や快楽のために人をだますことによって示される。
(3)衝動性、または将来の計画を立てられないこと
(4)いらだたしさおよび攻撃性。これは身体的な喧嘩または暴力を繰り返すことによって示される。
(5)自分または他人の安全を考えない無謀さ
(6)一貫して無責任であること。これは仕事を安定して続けられない、または経済的な義務を果たさない、ということを繰り返すことによって示される
(7)良心の呵責の欠如。これは他人を傷つけたり、いじめたり、または他人のものを盗んだりしたことによって示される。
B.その人は少なくとも18歳以上である。 C.15歳以前に発症した素行症に証拠がある。 D.反社会的な行為が起こるのは、統合失調症や双極性障害の経過中のみではない。
日本精神医学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル第5版』より引用

反社会性パーソナリティ障害と間違いやすい障害 

現在、パーソナリティ障害にはさまざまな種類があります。DSM-5では以下のように分類されております。
このうち反社会性パーソナリティ障害は、演技的で情緒的に見える特徴を持つB群に含まれており、B群に含まれている他のパーソナリティ障害と間違いやすいです。

□境界性パーソナリティ障害と反社会性パーソナリティ障害の共通点と違い

反社会性パーソナリティ障害の人は境界性パーソナリティ障害の人と比べると、情緒的に不安定になることは少なく、なおかつ攻撃的になることが多いです。

□演技性パーソナリティ障害と反社会性パーソナリティ障害の共通点と違い

衝動性、表面的、刺激を求める、怖いもの知らず、誘惑的、操作的といった共通点が見られます。
演技性パーソナリティ障害の人は他人から世話をしてもらうために操作的であるのに対し、反社会性パーソナリティ障害の人は、利益、権力、物質的満足を得るために操作的であるという特徴が見られます。

□自己愛性パーソナリティ障害と反社会性パーソナリティ障害の共通点と違い

非情、口達者、表面的、搾取的、共感の欠如といった共通点が見られます。
しかし自己愛性パーソナリティ障害には衝動性、攻撃性、虚言といった特徴はなく、子ども時代の素行症もありません。
また反社会性パーソナリティ障害の人には、他者の賞賛を得ようとはしないという違いもみられます。

反社会性パーソナリティ障害と発達障害との関係性

成人してから境界性パーソナリティ障害と診断されることは、ADHD(注意欠陥多動性障害)を患っている場合に高くなります。
素行症とは社会の規則、規範を守れず反抗的な行動を起こし続けるという特徴があり、素行障害とも呼びます。
具体的な症状は人や物への暴力的な攻撃、窃盗や長期、複数回の家出などが見られます。
またADHD(注意欠陥多動性障害)をもつ人が人間不信的行動という二次障害から素行症を発症することがあります。
これには自尊心、自己肯定感が低下から自分はダメな人間かも知れない、自分のことを誰も理解してくれないという気持ちから、まわりを信じられなくなったときに起こす行動のことをいいます。 反社会性パーソナリティ障害は子ども時代の素行症が大きく関係しています。
子ども時代に素行症を発症しないように予防し、重症化しないように発達障害を改善することが重要であるとも考えられております。

反社会性パーソナリティ障害かなと思ったときは病院に行くべき?

ご自身やご家族に反社会性パーソナリティ障害かなと感じた場合、一人で悩まずにまずは専門医療機関に相談することをおすすめいたします。
できるかぎり本人を連れていくとよいのですが、まずはご家族の相談だけでも受け付けてくれる医療機関もあります。

反社会性パーソナリティ障害の治療法

反社会性パーソナリティ障害の治療はカウンセリング療法から始まり、衝動性や暴力など具体的な症状に対し薬物治療、TMS治療(磁気刺激治療)を行う、などの治療法の組み合わせが多いです。

カウンセリング療法

カウンセラーが患者さんの心理面に働きかけ、患者さんの認知、思考、行動パターンなどの偏りを改善し、少しずつ社会に適応できるようにしていく治療法です。
1週間に1、2回、30分から1時間程度、患者さんと面接形式で行うのが一般的です。
この治療法においては、以下の3点を患者さん、周囲の人々に理解してもらう必要があります。
  • ・効果が表れるのに時間がかかる治療法で、一般的に数年以上かかる
  • ・誰にでも効果がでるものではない
  • ・効果が得られないこともある
  • 家族療法

    ご自身だけでなく家族にも治療を行う場合があります。
    パーソナリティ障害がある患者さんは、家族にも認知、思考パターンに偏りがあることが多いからです。
    家族療法は、患者さんが未成年、または家族から自立する方向での治療が行われる傾向にあります。

    薬物療法

    不安、緊張、抑うつなどの強い精神症状を一時的に和らげる目的で使用します。しかし対症療法にすぎず、障害を根幹から治すことはできません。
    反社会性パーソナリティ障害の治療として、攻撃性、衝動性を持つ患者さんに対し、抗うつ剤の用量でSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を使用します。
    部分的な反応があれば追加の非定型抗精神病薬や気分安定剤を使用します。

    TMS治療(磁気刺激治療)

    パーソナリティ障害自体にTMS治療(磁気刺激治療)が有効であったという論文が2019年に発表されています。
    J Psychiatr Pract. 2019 Jan;25(1):14-21.
    2016年にもTMS治療(磁気刺激治療)が感情や衝動性のコントロールに有効であったという報告があります。
    Front. Hum. Neurosci., 05 December 2016
    パーソナリティ障害に合併しやすい発達障害も改善することが可能です。
    発達障害に対する最新のTMS治療がなぜ効果があるのか?【医師が分かりやすく解説】

    反社会性パーソナリティ障害の人との関わり方・対応法

    反社会性パーソナリティ障害を本人が改善するにあたり、まわりの人々の対処の仕方も重要です。
    家族、友人に障害のある方がいる場合、次のことに気をつけてみてください。

    否定的な対応は避ける

    上記で説明したように、反社会性パーソナリティ障害の人は発達環境などによって、生まれてから今まで否定的な対応をたくさん受けてきている場合が多いです。そのためできるだけ否定的な対応は避けるべきです。 また反社会性パーソナリティ障害の人は挑発的な言動、敵意を示してきたりすることがありますが、それに対して感情的にはならず、理由を根気強く聞いてあげることが重要です。

    認めてあげる

    反社会性パーソナリティ障害の人が変わり始めるための要因として、誰かに認められるという体験があります。この体験を通じ、人との信頼できるつながりが持てるようになります。
    これは認められることが、自分の今までの言動が悪かったと気づく要因となるからです。
    すぐに行動が変わることは難しいと思いますが、少しずつ自分の生き方を変えていくと思います。