反社会性パーソナリティ障害の症状、特徴、原因や治療法について精神科医師が解説
発達障害専門外来
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反社会性パーソナリティ障害の症状、特徴、原因や治療法について精神科医師が解説

坂 副院長坂 副院長

反社会性パーソナリティ障害とは、社会の規則、規範を守ろうとしない、他人を傷つけたりいじめたりすることに罪悪感を持たない障害です。

反社会性パーソナリティ障害の人は親との関係などに問題があり、今までに否定的な対応をたくさん受けてきている場合もあります。

挑発的な言動、敵意を示してきたりすることがありますが、それに対して感情的にはならず、理由を根気強く聞いてあげることが重要です。

また反社会性パーソナリティ障害は治療によって、少しずつ改善していくことができます。

パーソナリティ障害全般については以下の記事を参照してください。

パーソナリティ障害の特徴、種類、診断、治療について精神科医が解説

反社会性パーソナリティ障害とは

反社会性パーソナリティ障害は、個人の利益や一時的な快楽のために犯罪行為に走ったり、人を騙したり、無謀な行為を行ったりし、そういった行為に対して良心の呵責を感じないという特徴があります。

通常なら他人の権利を尊重して踏みとどまるような状況でも自分の利益や望みを優先するため、法を犯して逮捕されたりすることも多いです。

人口の約1~3.6%が反社会性パーソナリティ障害だと言われており、男性の方が女性の6倍ほど多いと言われています。

反社会性パーソナリティ障害の症状、特徴

特徴は大きく3つあります。

他者の軽視

自分の行為によって他者がどう思うか、どういった状況になるかを適切に理解できず、平気で傷つけたり騙したりします。また、そういった行動に対して良心の呵責や罪悪感を感じず、何度も繰り返したりします。

また、上記のような行動によって他者が傷ついても、自身の行いを正当化する言動(人生は不平等、騙される方が悪い、負けて当然など)を取り、相手を非難する傾向にあります。

衝動的行動(衝動性)

将来の計画を立てることができず、衝動的に行動する傾向があります。急に引っ越したり、人間関係を変えたりします。また、危険な行動にも走りやすく、運転中に急にスピードを上げる、飲酒運転をする、違法薬物を使用するなどがあります。その結果、他人を巻き込んで傷つけてしまうことも多いです。

無責任性

無責任と言ってもかなり極端な傾向にあり、理由もなく繰り返して仕事を休んだり、借金を返さない、性的に奔放などを通して、最終的には住む場所を失ってホームレス状態になったり、法を犯して刑務所に入る人もいます。また、他者の軽視や衝動性も繋がり、数々のトラブルや危険行為の結果として事故や殺人によって若くして死亡しやすい傾向にあります。

その他の特徴

反社会性パーソナリティ障害の人は、自分の利益が得られる場面では感じよく振る舞うことができる場合が多く、知識があるように見せて転職に成功したり、社会的に地位のある人間を装って異性を口説いたりすることがあります。表面的な魅力を演出するのがうまいです。

また、自己評価が高い傾向にあり、自分の考えをなかなか曲げません。自信過剰な場合もあり、周囲からは「自分勝手」「自己中心的」と思われることも多いです。

反社会性パーソナリティ障害の原因

反社会性パーソナリティ障害は、遺伝的要因と環境的要因があるとされています。

遺伝的要因

発症に至る約50%の要因が遺伝的要因とされています。家族に反社会性パーソナリティ障害の人がいると発症しやすいです。

この分野については現在も研究が進んでおり、2016年に公開された論文では、反社会性パーソナリティ障害の大規模なゲノムワイド関連解析(GWAS)で6番染色体の 6p21.2. の部位に共通して異常がみられることが分かっています。反社会性パーソナリティ障害の遺伝に関する調査結果

(出典:Genome-wide association study of antisocial personality disorder)

環境的要因

心理的、社会的な環境要因で反社会性パーソナリティ障害になるケースもあります。

幼児期の虐待、ネグレクトによって道徳心や倫理観が育たない環境だと、他者の痛みを理解することができません。その結果、青年期後期に反社会的行動を取ると言われています。

人間は、親が自分に向ける態度をもとに、他人との関わりを持ちます。よって親との愛着が十分に経験できないと他人に対する感受性、愛着行動が欠けてしまい、共感できず、他人の幸福に無頓着になります。

反社会性パーソナリティ障害の診断

医療機関によって診断基準は異なりますが、主に世界保健機関(WHO)の『ICD-10』(『国際疾病分類』第10版)やアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)に基づき診断をします。

ICD-10による診断基準

  1. 他人の感情への冷淡な無関心。
  2. 社会的規範、規則、責務への著しい持続的な無責任と無視の態度。
  3. 人間関係を築くことに困難はないにもかかわらず、持続的な人間関係を維持できないこと。
  4. フラストレーションに対する耐性が非常に低いこと。および暴力を含む攻撃性の発散に対する閾値が低いこと。
  5. 罪悪感を感じることができないこと、あるいは経験、特に刑罰から学ぶことができないこと。
  6. 他人を非難する傾向、あるいは社会と衝突を引き起こす行動をもっともらしく合理化したりする傾向が著しいこと。持続的な易刺激性も随伴症状として存在することがある。小児期および思春期に後遺障害が存在すれば、いつも存在するわけではないが、この診断をよりいっそう確実にする。

※医学書院『ICD-10精神および行動の障害 新訂版』より引用

DSM-5による診断基準

A.他人の権利を無視し侵害する広範な様式で、15歳以降起こっており、以下のうち3つ(またはそれ以上)によって示される。

  1. 法にかなった行動という点で社会的規範に適合しないこと。これは逮捕の原因になる行為を繰り返し行うことで示される。
  2. 虚偽性。これは繰り返し嘘をつくこと、偽名を使うこと、または自分の利益や快楽のために人をだますことによって示される。
  3. 衝動性、または将来の計画を立てられないこと
  4. いらだたしさおよび攻撃性。これは身体的な喧嘩または暴力を繰り返すことによって示される。
  5. 自分または他人の安全を考えない無謀さ
  6. 一貫して無責任であること。これは仕事を安定して続けられない、または経済的な義務を果たさない、ということを繰り返すことによって示される
  7. 良心の呵責の欠如。これは他人を傷つけたり、いじめたり、または他人のものを盗んだりしたことによって示される。

B.その人は少なくとも18歳以上である。
C.15歳以前に発症した素行症に証拠がある。
D.反社会的な行為が起こるのは、統合失調症や双極性障害の経過中のみではない。

※日本精神医学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル第5版』より引用

間違いやすい(症状が似ている)障害

DSM-5ではパーソナリティ障害を10種類に分け、それを類似する特徴に基づいてA群、B群、C群の3つに分類しています。

A群 奇妙で風変わりな様子 妄想性、シゾイド、統合失調型
B群 演技的、感情的、移り気な様子 反社会性、境界性、演技性、自己愛性
C群 不安や恐れを抱く様子 回避性、依存性、強迫性

このうち、反社会性パーソナリティ障害が分類されているB群に属する他の障害との区別が必要になります。

境界性パーソナリティ障害との違い

  • 情緒的に不安的になることは少ない
  • 攻撃的な態度を取ることが多い

演技性パーソナリティ障害との違い

  • 演技性パーソナリティ障害は他人から世話をしてもらうために操作的
  • 反社会性パーソナリティ障害は利益や権力などを得るために操作的

自己愛性パーソナリティ障害との違い

  • 衝動性、攻撃性、虚言が見られる
  • 他者の称賛を得ようとはしない

発達障害との関係性

成人後に反社会性パーソナリティ障害と診断されるのはADHD(注意欠陥多動性障害)を患っている場合に高くなります。

反社会性パーソナリティ障害は18歳以上の人のみが診断されるものですが、それ以前の15歳以前に社会規範や法律に違反する行為が見られる場合は素行症(素行障害)と呼ばれます。

素行症はADHDを持つ人が人間不信的行動という二次障害から発症するケースが少なくありません。

人間不信的行動とは、自尊心や自己肯定感の低下から、自分のことを誰も理解してくれないのだという思いから起こしてしまう行動を指します。

素行症を発症しないことが反社会性パーソナリティ障害の予防につながるため、素行症の発症、重症化に繋がりやすい発達障害を改善することが重要だとも考えられています。

反社会性パーソナリティ障害の治療

反社会性パーソナリティ障害は治療が困難で、特定の治療法によって長期的に改善するというものは現在ありません。

このため、治療は社会に適応していくために患者の認知や思考、行動パターンの偏りを改善することが目標となることが多いです。

具体的な治療方法としては、カウンセリング療法をメインとして、具体的な症状(衝動性、攻撃性)の緩和に薬物療法、TMS治療を行います。

心理療法

心理療法としては様々な方法が挙げられますが、集団精神療法と家族療法について解説します。

集団精神療法

集団精神療法は、同じ障害を持つ人が複数人集まり、グループで話をしたり共同作業を行うことで社会に適応できない原因を見つけて解決する方法です。

自分がどんな問題を抱えているのかを同じ障害を持つ他者から発見しやすく、他者に対してこうしてほしいと思ったことがそのまま自分の行動の改善に繋がります。また、他人との適切なコミュニケーションを学ぶことにも繋がり、自己肯定感の向上にも寄与します。

家族療法

家族療法は、患者本人とともに家族ぐるみで適切な対処法を工夫することで症状や問題行動の解決を図るものです。

家族を問題の原因とするのではなく、家族で問題にどう向き合っていくのかという方法です。治療開始時には本人ではなく、家族だけと相談を進めるケースもあります。

家族療法は患者が未成年の場合に行われることが多く、成人している場合は患者自身が自立して上記の集団精神療法などを行う傾向にあります。

薬物療法

不安、緊張、抑うつなどの症状を緩和する目的で薬物を使用することもあります。

反社会性パーソナリティ障害の治療として、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)を使用して衝動性や攻撃性を抑える効果があります。

その他に、抗精神病薬や気分安定薬(リチウム、カルバムアゼピン、バルプロ酸)なども併用することがあります。

注意点としては、薬物による治療は対症療法に過ぎず、根幹の治療ではありません。心理療法をメインとした根幹の治療を行うためのサポートとして考えるのが良いでしょう。

TMS治療

アメリカでアメリカ食品医薬品局(FDA)の認可を受けている最新の治療法であるTMS治療(磁気刺激治療)も、パーソナリティ障害に有効だとされています。

パーソナリティ障害自体にTMS治療(磁気刺激治療)が有効であったという論文が2019年に発表されています。(論文の概要はこちら

また、2016年にもTMS治療(磁気刺激治療)が感情や衝動性のコントロールに有効であったという報告があります。(論文の概要はこちら

アメリカをはじめ、欧米では普及している治療法ですが、日本では一部の医療機関でしか治療ができません。当院ではTMS治療を行っておりますので、ご興味のある方はぜひお問い合わせください。

TMS治療についての詳細はこちらの記事を参考にしてください。

周囲のサポート

反社会性パーソナリティ障害は簡単に治るものではありません。遺伝的要因、幼少期からの環境的要因から発症していることが多いです。周囲の人はそういった背景を理解した上で、以下のようなサポートをしてあげるようにしましょう。

否定しすぎない

まず、患者の行いを否定しすぎないようにしましょう。これまでの環境で多くの否定をされ、自己肯定感が低くなっていることが大きな原因となっていることが多いです。そのため、行動に至った過程を紐解き、どこまでは良くて何が良くなかったのかを伝え、良かった点もしっかりと伝えてあげるようにしましょう。

攻撃的な態度に対して冷静に対応する

反社会性パーソナリティ障害の人は挑発してきたり、敵意を剥き出しにして接してくることがあります。こうした態度をとってきた際、感情的になって接するのではなく、何があったのかを冷静に聞いてあげるようにしましょう。

認めてあげる

これまで説明してきたとおり、自己肯定感の低さが反社会性パーソナリティ障害の原因となっていることが多いです。誰かに認められることでその人を信頼し、行動が変わっていくことがあります。

すぐに行動が変わっていくことはないですが、徐々に自分の言動や行動に気をつけるようになり、長期的にはいい方向へと生き方を変えていくでしょう。

まとめ

反社会性パーソナリティ障害は自分だけでなく他者を傷つけてしまうことの多い障害です。まだ根本的な治療法は見つかっていませんが、少しずつでも症状を改善し、社会に適応して自分らしく生きることができるようにするためにも、専門家の支援を受けながら向き合っていくことが重要です。

また、本人だけでなく家族や周囲の人も一緒に向き合い、どうしたら良い方向に進めるかを一緒に考えていきましょう。


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