うつっぽさは脳疲労の症状かも?原因やTMSを用いた回復方法について
目次
なかなか疲れが取れない、やる気が起きないなど、特に理由はないのに身体にだるさを感じている場合、脳疲労状態にあるかもしれません。
今回は、脳疲労の症状や原因、回復法についてご紹介します。
脳疲労とは?
脳疲労とは、その名の通り脳が疲労している状態を指します。
私たちの脳は一秒たりとも休むことはありません。自分が起きて活動しているときはもちろん、寝ている間も絶えずフル活動しています。寝ていても安定して心臓が動き、呼吸ができるのは脳が活動しているからです。
現代を生きる私たちにとって、インターネットやスマートフォンは生活に欠かせないものになりました。現代日本人が1日に触れる情報量は、「平安時代の一生分」であり、「江戸時代の1年分」と言われています。それだけの情報に常に触れているのですから、脳の負担はとても大きいと言えるでしょう。
自分の目的以外の情報に多く触れることで雑念が生まれ、何も考えていないつもりでも脳が勝手に疲れてしまうのです。
スマホ依存が脳疲労につながることも
スマートフォンを使うことによって、私たちの脳は絶えず情報をインプットし続けています。
流し見しているYou Tubeだって、立派な情報源です。脳を休めているようでいて、実際は脳疲労の原因になっていることも。
以下のような状態になっている人は、スマホ依存による脳疲労を引き起こしている可能性があります。
- 気づいたらスマホでSNSなどを見ている
- わからないことがあったらすべてスマホで検索している
- トイレなどすぐ戻ってくる用事でもスマホを持っていく
- 夜はスマホを見ながら寝落ちすることが多い
スマホに依存した生活だと、絶えず情報に触れることによる疲労感はもちろん、睡眠の質の低下などを招くことがあります。知らぬ間に心身の疲れを蓄積してしまう原因になりうるため、注意が必要です。
脳疲労の症状(ストレス・うつ・不安など)
脳疲労の症状は多岐にわたります。感覚的には、だるくて何事も面倒に感じるような状態です。具体的には以下のような症状が該当します。
- 寝ても疲れが取れない
- 肩こりがひどい
- 理由もなくイライラする
- 環境の変化に適応できない
- やる気が出ない
- 意味のないことをあれこれ考えてしまう
- 不安や恐怖に敏感
- 計画的に行動出来ない
- 集中が続かない
- 感情を抑えきれない など
脳疲労が続くとうつ病や不安障害のリスクもある
脳疲労によって否定的な感情が続いたり、耐え難い不安や恐怖に襲われている場合、以下のような精神疾患や症状を引き起こすリスクが高まります。
- うつ病
- 不安障害
- 摂食障害
- 失感情症
- 注意欠陥
- 発達障害
- 認知症
こういった症状が強く出るようになると、社会生活に困難が生じるようになります。長期間の治療が必要なケースもありますし、薬物療法を選択する場合は副作用のリスクもあります。症状が軽いうちに根本的な原因となっている脳疲労を回復することが重要です。
脳疲労の原因
脳疲労の原因は、脳の神経ネットワークのバランスが崩れることでマインドワンダリング状態が引き起こされることにあります。
御存知の通り、脳は高度な機能を持っている器官です。その機能は膨大な数の神経細胞ネットワークによって制御されていると考えられています。神経細胞同士が複雑に配線され、神経回路を作っているのです。
神経ネットワークにはDMN、CEN、SNという3つの種類があります。
- DMN(デフォルトモード・ネットワーク)
何もしていないときに活発になり、脳のエネルギー消費の大部分を占める。 - CEN(セントラル・エグゼクティブ・ネットワーク)
目の前のことに集中するときに活発になり、いわゆる「ゾーン」状態を引き起こす。 - SN(セイリエンス・ネットワーク)
DMNとCENを切り替える役割。外界と内部の感覚を統制する。
これらがバランスを取って機能することで、人間は安定したパフォーマンスを発揮できます。
マインドワンダリングが脳を消費する
DMNとCENのバランスが人間のパフォーマンスに重要ですが、これがDMN側に傾いてしまうと「マインドワンダリング」を引き起こします。
マインドワンダリングとは目の前のことに集中できずに「心ここにあらず」の状態を指します。よく学生を題材にした映画やドラマで、授業中に窓の外を見て考え事をしている描写がありますが、あのイメージに近いです。授業に集中しなくてはいけないのに、部活の悩みなどをあれこれと考え続けてしまい、不安やモチベーションの低下につながります。
社会人であれば、目の前の仕事に集中しなくてはいけないのに上司に指摘されたミスについてあれこれと考えてしまったりして気が散ってしまうような状態です。
DMNが過活性になりマインドワンダリングの状態が長く続くと、脳疲労が蓄積され、情動や知性、理性を司る脳の部位に変調をきたす恐れがあるのです。
疲れているときほど「あの時こうしておけばよかった」「あれがなければ今ごろこんな苦しんでいないのに」など、ネガティブな記憶や思考を反復してしまう「ぐるぐる思考(反芻思考)」が見られます。
高ストレス者に共通しているこの「ぐるぐる思考」は、常にネガティブなことが頭から離れず、常に思考が右か左か、ゼロか100か、そのどちらに向いてしまって、中間(柔軟さ)がないのが特徴です。
マインドワンダリングが起こる脳の状態
近年はfMRI(Functional Magnetic Resonance Imaging:機能的磁気共鳴画像)などを利用した脳画像の分析が進んだことで、人が集中しているときに脳のどの部位が活動しているのかが明らかになってきました。
画像から分かるとおり、DMNとCENはそれぞれ別の部位が活動しています。
DMNが活動しているときはCENは活動的でなく、反対にCENが活動しているときはDMNは活動的ではありません。このように、DMNとCENは反相関の関係にあります。
マインドワンダリングが起こるのはDMNが過活動を起こしている状態(左)で、扁桃体や海馬、前頭前野が過度に活性化し、変調をきたす恐れがあるのです。それぞれの働きは以下の通りです。
- 扁桃体:不安や恐怖、嫌悪感などの否定的な感情に関わる
- 海馬:記憶に深く関わる
- 前頭前野:知性や理性などに関わる
脳疲労から回復するとどうなるか
脳疲労はDMNの過活動によるマインドワンダリングが原因であることを説明しました。つまり、DMNの過活動を抑え、CENの活動を高めることで脳を回復することに繋がります。
脳疲労を回復すると、以下のような効果が見られます。
- ストレスやイライラを感じにくくなる
- 不安が軽減される
- 目の前のことに集中できるようになる(ゾーンに入る)
- 計画的な行動ができるようになる など
当院で診療した患者さまも、ストレスやイライラする気持ちが軽減し、周囲の物音などが気にならなくなったという人や、不安に思うことがあっても「なんとかなるだろう」と楽観的に考えることができるようになった人がいらっしゃいます。
意思決定や人前で話す機会の多い人におすすめ
脳疲労から回復し、CENが活性化することによって集中力が高まります。日常生活における様々なパフォーマンスが改善するため、どなたにも脳疲労の回復はおすすめですが、特におすすめなのは以下のような方々です。
- 重要な意思決定の機会がある役職者
- プレゼンの機会の多い営業職
- 人前に出る機会の多い芸能人
- プレーに不安を抱えるスポーツ選手(イップス)
- 常に冷静な判断が求められるトレーダー
上記のような方々はパフォーマンスの改善が特に期待できます。高い集中力が求められたり、緊張や不安を感じやすい仕事に就いている場合は脳疲労の回復効果を感じやすいでしょう。
もちろん、上記以外の仕事に就いていたり、子育てで不安を感じている場合などにも効果的です。
脳疲労の回復法
脳疲労の回復にはいくつかの方法がありますが、当院ではTMS治療を実施しています。
TMS治療
TMS治療は、8の字コイルという特殊な機器を用いて脳を磁気で刺激し、脳血流を増加させて脳機能を正常な状態に戻す治療法です。
脳疲労の回復のほか、うつ症状や不安症状の改善にも有効です。
薬物療法とは異なり副作用がほとんどなく、治療時間も1セッション20分程度です。
TMS治療機器は2017年9月に厚生労働省が医療機器として薬事承認しています。
TMS治療(経頭蓋磁気刺激)は、医療先進国のアメリカのFDAや日本の厚生労働省の認可を得た最新の治療方法です。投薬に頼らずうつ病や発達障害などの治療ができるTMS治療について、精神科医が詳しく解説しています。
マインドフルネス
マインドフルネスは「今この瞬間に集中している状態」のことを指します。神経ネットワークの話では、CENが活性化している状態です。
マインドフルネスの状態に至るためには、瞑想を通して自分の意識を集中させていく必要があります。正しい方法で毎日継続して行うことで効果を得られるため、習得するまでにある程度の期間が必要になります。
当院でもマインドフルネスを自宅で実践できるように「セルフケアサポート外来」を設置しておりますので、ご興味のある方はぜひお気軽にお問い合わせ下さい。
規則正しい生活が大切
TMSやマインドフルネス等の治療的アプローチはもちろん大切ですが、基本的には心身の疲れを溜め込まないような生活をすることが肝要です。
しっかりと栄養や睡眠を取り、適度に運動をすることからはじめ、なかなか疲れが取れないような場合には治療を検討してみましょう。
まとめ
脳疲労は現代社会を生きて大量の情報に触れる人なら、誰でも潜在的に抱えているものです。寝ても疲れが取れない感じがしたり、あれこれと考えすぎて不安になったりイライラしてしまうような場合は脳疲労を回復するために治療を受けてみることをおすすめします。
脳の状態を診断するQEEG検査(定量的脳波検査)【当日治療開始可能】
15歳男性 ADHD、アスペルガー症候群合併
21歳男性 アスペルガー症候群、不安障害合併
22歳女性 アスペルガー症候群、うつ合併
8歳女性 学習障害、ADHD合併
技術の進歩により、治療前と治療後のQEEGの変化を客観的に評価することも可能になりました。
QEEG検査で脳の状態を可視化し、結果に応じて、薬を使わない治療など個人に合った治療を提案します。