自傷行為(リストカットなど)の原因と診断、治療、発達障害との関係について【医師が分かりやすく解説】
発達障害専門外来
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自傷行為(リストカットなど)の原因と診断、治療、発達障害との関係について【医師が分かりやすく解説】

自傷行為は世界中で広く見られる現象です。特に若者に多く見られます。

自らの身体を傷つける行為で、なかなか理解することが難しいですが、こうした行為に対して様々な要因が考えられています。発達障害やその他の精神疾患が背景にあることもあります。

今回は、リストカットを始めとする自傷行為について、特徴や原因、治療法を解説します。また、自傷行為をしている友人がいる場合の対処法についてもご紹介します。

自傷行為とは?

自傷行為とは、自らの身体を傷つけたり、身体に害になるとわかっていてあえてそれを実行するなどの行為を指します。

自傷行為をする年齢層

自傷行為は生涯を通じて見られる現象ですが、その中でも思春期の若年期にかけて多く見られる行為です。

過去の多くの研究で自傷行為開始年齢を12歳前後としており、自傷行為の最も多い時期は13~19歳の思春期後期と20代前半の成人初期と言われています。

これは日本だけでなく、欧米をはじめとする世界各国で同様の傾向があります。

自傷行為の種類

自傷行為の種類は多岐にわたりますが、代表的な自傷行為は以下です。

  • 薬物を過剰に摂取する(オーバードーズ)
  • 自らの身体を切りつける(リストカットなど)
  • ライターやタバコで肌を焼く(根性焼き)
  • 自らの頭を強く打ち付ける、壁を殴る
  • 自らの身体に尖ったものを刺す
  • 異物を飲み込む

自傷行為をして病院にかかった成人4000人を対象とした最近の研究では、80%が薬物の過剰摂取、15%がカッティングを行っていました。しかし、地域によってはカッティングのほうが多く行われている可能性があります。

自殺との違い

自殺をしようとすることを「自殺企図」と言いますが、自傷行為は自殺企図とは異なります。

手首を切るなど自殺企図と重なる部分はあるものの、自傷行為は死にたいという明確な意思を持ってやっているわけではないのです。一時的に辛さを回避するための手段として自傷行為に至るのに対し、自殺企図は「自殺しか辛い現実から解放される道がない」と確信していることも多いです。

しかし、初めての自傷行為の場合は周囲からは自傷行為か自殺企図かわからないこともあります。例えば自殺を企図してビタミン剤を大量に飲み込んだものの、致死性がなく自殺には至らなかったというようなケースです。

自傷行為はその時点では明確な自殺企図がなかったとしても、長期的に見れば自殺に至る可能性は高いため、思春期の自傷行為だからといって軽く片付けてはいけません。適切なケアをする必要があります。

子どもの自傷行動との違い

自傷行為は10代から20代の若者に多いですが、より小さな子どもが自分を傷つけるような行動を取ることがあります。

これは自傷行動といい、コミュニケーションを取るのが困難な子どもが親の気を引いたりするための手段として行うものです。例えば、壁に頭を打ち付けたり、自分の腕を噛んだりします。

知的障害や自閉スペクトラム障害の子どもに見られる行動で、リストカットなどの自傷行為とは異なります。もちろん対処法も異なるので注意してください。

自傷行為に至りやすい人の特徴

以下のタイプの人が自傷行為に至ることが多いとされています。

彼らは、何かしらの耐えきれない悩みや苦しみがあり、しばらく悩んだうえで自傷行為に及んでいるケースが多いです。

  • 精神的な問題を抱えた若い女性
  • 身体的または性的虐待を受けたことのある人
  • うつ状態にある人
  • 自己嫌悪感が強い人
  • 発達障害の特性で困り感が強い人
  • 配偶者(パートナー)や友人、家族との人間関係の問題を抱えている人
  • 解雇・失業、職場での問題を抱えている人

さらに、お酒や薬を常用していると、より自傷行為をしやすい事が指摘されています。

また、上記に該当しなくても、以下のような気持ちを感じているのであれば自傷行為を行う可能性は上がるとされています。

  • 孤独感・孤立感を感じる
  • 自分が自分ではないような感覚に陥る
  • 自分には何もできないという無力感を感じる
  • なんとも言えない絶望感を感じている
  • 誰も話を聞いてくれていない気がする

自傷行為をする原因

リストカットをはじめとする自傷行為は周囲の関心を集めたり、周囲に自分の状況をアピールしたりするために行われるのだと勘違いされがちです。

しかし、自傷行為は必ずしも周囲の人へのアピールのために行われている訳ではありません。1人でいるときに気付かれないように行われていることが多いです。
長年、自傷行為に至る原因は研究されてきましたが、次のような理由があるとされています。

不快感やぐるぐる思考の軽減のため

自傷行為は、気分が落ち込んでいた時や高いストレス状態の時に、その感情から一時的に気を逸らす効果があります。

ネガティブな思考が自分に向いている時に、それを外に向けることによって不安感を軽減しています。

自傷が精神安定の役割を果たしている場合、自傷を無理やり止めても、別の解消方法が必要になるケースが多いです。自傷を繰り返す人の場合、脳内で内因性オピオイドであるエンケファリン、βエンドルフィンなどの濃度が上昇していることが明らかになっています。これらは脳内麻薬様物質と言われ、自傷に依存してしまう原因の物質です。

罪悪感による自己懲罰的な自傷行為

自傷行為は、何かに対して罪の意識を感じて自分を罰したり、罪悪感から逃れたりするための方法にもなり得ます。

罪悪感を感じるタイミングは人それぞれですが、例えば理想の自分とは違う行動をしてしまったときや、周囲の人の期待に応えられなかったときが挙げられます。
こうした自傷行為の背景には周囲に悩みを打ち明けるのが苦手な性格や、自己評価の低さが関係していることもあります。

自傷行為と発達障害の関係は? 自傷行為の分類

自傷行為は大きく3つに分類されます。

  1. 重症型自傷行為:幻覚、妄想の影響下で行われる
  2. 常同型自傷行為:精神遅滞、発達障害、脳性麻痺など
  3. 表層型/中等度自傷行為:リストカットなど

この3つの他に、強迫性自傷行為(儀式的)、衝動性自傷行為(不安や怒り)に分類できます。

この中で、壁に頭を打ち付けるなど常同型の自傷行為はアスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)に合併することが多いです。

また、リストカットなど 衝動性から来る表層型/中等度自傷行為はADHD(注意欠陥・多動性障害)に合併することが多いです。

自傷行為と解離

自傷をする人には解離が見られることが多いです。

解離とは、意識や記憶などに関する感覚をまとめる能力が一時的に失われた状態を指します。そのため、自傷行為の記憶や痛みが薄まっていることがあります。

自傷により解離を抑える人もいれば、自傷で解離が現れる人もいます。

自傷を繰り返す人との接し方

特に若者に多い自傷行為ですが、友人から自傷行為をしていると知らされることもあるでしょう。決して珍しいことではありません。自分に経験がない限り、驚きや不安を感じると思います。しかし、自傷行為をしている人たちは助けてほしいと思っているのです。そのため、相手が自傷行為をしなくて済むようにサポートしてあげるべきです。

具体的な接し方としては以下のような対応が考えられます。

  • 頭ごなしに自傷をやめなさいといわない。
  • 自傷のポジティブな面に注目し共感する。
  • エスカレートしてしまうことに対する懸念を伝える。

自傷行為をやめるように叱るのは適切ではありません。なぜなら本人も好んでしているわけではないからです。辛さや苦しさから逃れる手段として自傷行為に至っているのです。そのため、叱るのではなく、個人の意見として「自傷行為はしないほうがいい」と伝えるにとどめましょう。結局のところ、やめるかどうかは本人次第です。周囲の人ができるのは、自傷行為を止めやすいように本人の気持ちを回復させる援助です。

自傷行為に至る不安や苦しみは解決できるものだと本人に思ってもらえるように、話を聞き、可能な限り理解するように努めましょう。また、病院に付き添うのもいいでしょう。

自傷行為の診断

自傷行為は背景にある精神の状態、発達障害の特性を正確に診断する必要があります。

一般的な診断方法は、医師による診察を通し、治療が必要な外傷がないかを確認したあと、自傷行為が自殺を意図した行動だったのか、そうではないのかを判断するために様々な質問をします。また、場合によっては患者と親しい人に普段の生活の様子や生活上ストレスに感じていそうなことを質問することもあります。

同時に、自傷行為が他の精神障害に起因するものでないかを確認する必要もあります。他の精神障害が認められる場合、その治療を行う必要があるためです。

こうした診断は多くの場合で医師の主観をもとに判断されていますが、当院で行っているQEEG検査で脳の状態を調べることで、客観的なデータをもとに診断することが可能になります。

自傷行為の治療方法・改善方法

自傷行為をやめるためには、その原因となっているものが何か分析することと、他の方法で辛さや苦しさを解消することが必要です。

行動記録表の作成

自傷行為に慣れてしまうと、自分がどんなタイミングで何を思って自傷行為に及んでいるのかがはっきりとしないことが多いです。そういう場合は行動記録表を作成し、いつどこで誰と何をしていて、どんな気持ちになったのかを記録していくと良いでしょう。この記録をもとに、自傷行為に至った状況を客観的に判断することができます。

また、行動記録表を作成することで、自分の記憶がない時間があることに気づき、解離を発見することもあります。

置換スキル

自傷行為を別の方法に置き換えて心理的苦痛を解消できるようにします。これはその場しのぎの対応というわけではなく、自傷行為に至る際の心理的な負担を軽減することで、背景にある根本的な問題と向き合う時間と心を確保する目的があります。

具体的な置換スキルは、以下のような方法があります。

刺激的な置換スキル

  • 輪ゴムパッチン:手首にはめた輪ゴムを弾き、小さな刺激を与えることで自傷行為の衝動を抑える
  • 紙や薄い雑誌を破る:自分ではなく紙や雑誌を引き裂くことで衝動を解消する
  • 氷を握りしめる:氷の冷たい感覚が痛覚と区別できず、衝動を抑えられる
  • 腕を赤く塗りつぶす:リストカットのように血を見ることで安心する人に有効
  • 大声で叫ぶ:大声を出すことで衝動を抑えられる
  • 筋トレをする:自分を安全に苦しめることで、自傷から気を紛らわす

刺激的な置換スキルは慣れてしまって効果が減少していくため、次に紹介する鎮静的な置換スキルを習得することが望ましいです。

鎮静的な置換スキル

呼吸法や瞑想によってマインドフルネスを得ることで、自傷行為の原因となっている不安や緊張といった感情を鎮めることができるようになります。しかし、こういった鎮静的なスキルは習得するまでにある程度の時間がかかるため、刺激的な置換スキルと並行して練習をしておくと良いでしょう。

まとめ

自傷行為は若者に多く見られ、その大半は何らかの辛さや苦しみを一時的に解消するためだと考えられています。また、中には発達障害や精神障害など、別の原因によって自傷行為に至っている場合もあります。もし友人が自傷行為をしている場合は頭ごなしに否定せず、医師による診断を受けること、そして自傷行為に至るまでの相手の気持ちを理解するように努め、寄り添ってあげるようにしましょう。


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