自己愛性パーソナリティ障害に関して【医師が分かりやすく解説】

自己愛とは?

「自己愛」とは、文字通り、「自分が好き」という感覚を指します。
この「自己愛」は、他者に思われて育つものであり、自分への愛情は他者への愛に繋がるものです。

自己愛性パーソナリティ障害の特徴

この障害の特徴として、思い描いている理想的な自分と、何一つ取り柄のない自分という両極端なイメージしかなく、等身大の自分のイメージがないという点があります。
また、結果が全てと考える反面、地道な努力は意味がない、努力をしないことが自分の能力を証明するといったように全く正反対の考え方をする傾向にあります。

自己愛性パーソナリティ障害の原因

褒められなければ愛されないという思い込み

この障害の人は、「自分が大好き」のように見えますが、その根底には、「自分を好きになれない」という気持ちがあります。
もともとプライドを気にする傾向がある点と、育った環境の両方が関与していると言われています。

現代社会が「勝たなければ」と思わせる

社会全体が目に見えるものを追求しており、なかなか内面の価値へと目が向けられなくなっているということが関係しています。

自己愛性パーソナリティ障害の診断

誇大性(空想または行動における)、賛美されたい欲求、共感の欠如の広範な様式で、成人期早期までに始まり、種々の状況で明らかになる。以下のうち5つ(またはそれ以上)によって示される。
①自分が重要であるという誇大な感覚(例:業績や才能を誇張する、十分な業績がないにもかかわらず優れていると認められることを期待する)。
②限りない成功、権力、才気、美しさ、あるいは理想的な愛の空想にとらわれている。
③自分が“特別”であり、独特であり、他の特別なまたは地位の高い人達(または団体)だけが理解しうる、または関係すべきだ、と信じている。
④過剰な賛美を求める。
⑤特権階級(つまり、特別有利な取り計らい、または自分が期待すれば相手が自動的に従うことを理由もなく期待する)。
⑥対人関係で相手を不当に利用する(すなわち、自分自身の目的を達成するために他人を利用する)。
⑦共感の欠如:他人の気持ちおよび欲求を認識しようとしない、またはそれに気づこうとしない。
⑧しばしば他人に嫉妬する、または他人が自分に嫉妬していると思い込む。
⑨尊大で傲慢な行動、または態度。
※参考文献
『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

自己愛性パーソナリティ障害の治療

カウンセリング療法

カウンセラーが患者さんの心理面に働きかけ、患者さんの認知、思考、行動パターンなどの偏りを改善し、少しずつ社会に適応できるようにしていく治療法です。

TMS治療(磁気刺激治療)

パーソナリティ障害自体にTMS治療(磁気刺激治療)が有効であったという論文が2019年に発表されています。
J Psychiatr Pract. 2019 Jan;25(1):14-21.) 2016年にもTMS治療(磁気刺激治療)が感情や衝動性のコントロールに有効であったという報告があります。
Front. Hum. Neurosci., 05 December 2016) パーソナリティ障害に合併しやすい発達障害も改善することが可能です。
発達障害に対する最新のTMS治療がなぜ効果があるのか?【医師が分かりやすく解説】

自己愛性パーソナリティ障害とうつ病の違い

「周囲の人が自分のことを理解していない」という他責傾向が強い自己愛性パーソナリティ障害に対し、うつ病では「全て自分が悪い」という自責傾向が強い点がまず挙げられます。
また、他者を見下したり共感性に乏しく自己中心的な性格が見られる自己愛性パーソナリティ障害に対し、うつ病では律儀や生真面目など責任感が強いというような性格面での違いも見られます。