発達障害とは?症状や治療、二次障害、発達支援について
目次
発達障害とは、生まれつき脳機能の発達に偏りがある障害です。
得意・不得意がはっきりしており、その人の過ごす環境や周囲の人とうまく馴染めず、社会生活に困難が生じます。症状は外見では分からないため、人知れず生きづらさを感じていることがあります。
発達障害はその人の特性ですが、周囲から理解を得られずに「わがまま」「自分勝手」などと思われてしまうこともあるでしょう。特性を本人も周囲の人も理解し、環境を調整することで生きづらさや困り感は減っていきます。
この記事では、発達障害の分類や症状、治療法、公的なサポートについても紹介します。
発達障害者支援法による発達障害の定義
発達障害は症状の範囲が広く、曖昧になりがちです。
発達障害者支援法では、「発達障害」を以下のように定義しています。
自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの
定義では、発達障害は脳機能の障害で、それが低年齢で発現するものとされています。
この定義自体は何もおかしくはありませんが、発達障害の症状は外見から分かるものではないため、発現しても単なる性格の違いとして流されている場合があります。
また、学校のように常にやることが決まっていたり指示されたりする状況下では問題が無くても、社会に出て自分で考えて行動をしなくてはいけなくなったときに症状が出ることも少なくありません。
「大人の発達障害」もあることを覚えておきましょう。
発達障害の分類
発達障害は、行動や認知の特徴(特性)によって、「自閉症スペクトラム障害(ASD)」「ADHD(注意欠如・多動性障害)」「学習障害(LD)」の3つに分類されます。
以下の図で確認しましょう。
自閉症スペクトラム障害(ASD)
自閉症スペクトラム障害はアスペルガー症候群、自閉症、広汎性発達障害などが統合された障害です。
症状の特徴は以下です。
- 集団で何かをするのが苦手
- コミュニケーションがうまく取れない
- 特定のものに強いこだわりがある
スペクトラムは「連続性」という意味で、特性の出方が人によって強かったり弱かったりするためこのように考えられるようになりました。
ADHD(注意欠如・多動性障害)
ADHD(注意欠如・多動性障害)は、不注意・多動性・衝動性の3つの症状が見られる障害です。それぞれの要素の現れ方に傾向があり、DSM-5では「不注意優勢に存在」「多動・衝動優勢に存在」「混合して存在」の3タイプに分類されます。
以前は「注意欠陥・多動性障害」という診断名がついていましたが、2013年にDSM-5で「注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害」に変更されました。
学習障害(LD)
学習障害は全般的な知的発達に遅れは見られないものの、「話す」「聞く」「読む」「書く」「計算する」といった能力に困難が生じる発達障害のことです。主に以下の3タイプがあります。
- 読字障害(ディスレクシア):文字が読みにくい
- 書字障害(ディスグラフィア):文字を書くのが難しい
- 算数障害(ディスカリキュリア):数字の概念の理解が困難
学業や仕事において支障をきたしやすく、周囲からからかわれたりしてうつ病や不登校などの問題に繋がりやすいという問題点があります。
発達障害に併存する障害や症状は様々
発達障害はそれぞれの障害が併存する場合も存在します。上記の3つの障害すべてに当てはまる場合もありますし、知的障害を併存している場合もあります。
また、ASD、ADHD、LDの特徴の他にも以下のような症状が併存することがあります。
- 感覚過敏(五感を通して感じる刺激に過剰に反応してしまう)
- 感覚鈍麻(五感を通して感じる刺激が感じられない)
- てんかん(けいれんなどの発作が突然発生する)
- チック(急に出現する運動や音声が不随意に出現する疾患)
- トゥレット症候群(チックの中でも重症の症状)
発達障害から二次障害につながることも
発達障害の方は周囲に理解されなかったり、「なぜ周囲と同じことができないのか」という苦しさや生きづらさを抱えながら生きていることが非常に多いです。そういった強いストレスやトラウマにより、うつ症状や不安障害などを合併することがあります。これを二次障害と呼びます。
できるだけ早く発達障害の特性に気づき、環境を調整していくことでストレスやトラウマを感じないようにしていくことが重要です。
発達障害にはグレーゾーンの概念がある
発達障害は上記で挙げたASDやADHD、LDといった分類それぞれに診断基準がありますが、数値で決まっているものではありません。基準を満たしていると医師が判断すれば正式に発達障害と診断されますが、中には発達障害の傾向は見られるが診断基準は満たさないという「発達障害グレーゾーン」の方もいます。
発達障害グレーゾーンの問題点
発達障害グレーゾーンは、正式な診断が下されないために、以下のような問題を抱えることがあります。
周囲の理解が得にくい
発達障害と正式に診断を受けると、周囲も相応の配慮をしてくれることが多いでしょう。苦手なことがあっても仕方ないと納得してもらえたり、必要であれば手伝ってくれることもあります。
一方で発達障害グレーゾーンだと、「正式に発達障害と診断されたわけではない=定型発達」と思われることも多く、社会生活を送る上では「できないことが多い人」というイメージを抱かれてしまうこともあります。周囲の理解を得ることが難しいのがグレーゾーンの方々ですので、生きづらさや苦しさから二次障害を発症しやすいと言えます。
また、発達障害グレーゾーンの方はうつ病や不安障害など二次障害の症状で精神科を受診し、詳しく検査してみたら発達障害だったということも起こります。実際、当院を受診する方にもそういったケースが多いです。
必要な支援が受けられないことがある
発達障害の方に比べて困難は少ないと思われがちですが、公的な支援を含め、必要な支援が受けにくいという悩みもあります。
現在では診断がなくても受けられる支援が増えてきましたが、まだその数は多くないのが現状です。
グレーゾーンを正確に診断できるQEEG検査
従来の発達障害の診断は、知能検査や発達検査の結果をもとに医師が問診を行い、医師の経験に基づく主観で診断が下されるものでした。国際的に使用されている診断基準はあるものの、その基準を満たしているかどうかは医師が判断するため、どうしても医師によってばらつきがあるという課題があります。
当院で実施しているQEEG検査という脳波検査は、脳の状態を可視化してデータ化し、客観的に状態を診断することが可能です。発達障害以外にも、うつ特性、不安特性、PTSD特性、パニック特性、不眠特性などを判断することができます。
QEEG検査について詳しくは以下の記事も参考にしてください。
QEEG検査は脳の状態を可視化し、脳波が、脳のどの位置から、どんなタイミングでどのくらい出ているのかを画像にすることで、脳の各部位が正常に機能しているかどうかを診断することができる検査です。この記事では、QEEG検査について、通常の脳波検査との違い、具体的な検査方法、診断が可能な疾患について精神科医が解説しています。
子どもの年齢別の発達段階
発達障害という言葉にとらわれるとネガティブなイメージが付きまとうものですが、そもそも子どもがどのように発達し、成長していくのかを知ることが大切です。
子どもが大人になるまでには、いくつかの発達段階を経て成長していきます。この発達段階を一部クリアできずに成長してしまうケースが、発達障害と言われるのです。
治療して改善することもできますが、発達段階を適切に理解することで成長とともに改善するのを待つという選択肢も考えられます。
ここでは、心理学書のエリクソンが提唱した「心理社会的発達理論」に基づき、年齢別の発達段階について見ていきましょう。
乳児期
乳児期には、周囲の人間への信頼感が育っていきます。まだひとりではご飯を食べることもできないため、自分の欲求を伝えるために大きな声で泣くのです。
心理社会的課題は「基本的信頼VS不信」です。この時期にお世話をしてもらえなかった赤ちゃんは、自分の周りに対して不信感を覚え、その後の成長に影響すると考えられています。
1歳ごろ
1歳ごろに最も重要になるのは、愛着形成です。人に対しての信頼感が育つこの時期は、母親から離れずに過ごします。これによって安心感を抱き、養育者との間に愛着が形成されていきます。無条件に自分を見守り、助けてくれる存在がいることによる安心感は、思春期以降に自立した生活を送れるようにするために重要です。
1歳頃までの発達課題として、この愛着が形成される基盤が整うことが挙げられますが、発達障害の子どもの場合、本人の気質によって人に興味を示さなかったり、泣いて周囲に欲求を上手く伝える事ができず、愛着形成の準備が遅れてしまう傾向にあります。
3~4歳くらいになってようやく母親にくっついて離れない時期がやってくるため、周囲と比較すると甘えん坊のように見えることがあります。
1~1歳半ごろ
人の視線が分かるようになり、その人が見ている物を一緒に見ることができるようになります。これを共同注視といい、同じものを見て認識や感情を共有することは、社会性やコミュニケーション能力の獲得に重要とされています。例えば、親子で公園を散歩していてきれいな花を見つけたとき、親の視線の先に花が見えていることを子どもが認識して、子どもも花を見るようになる反応です。
発達障害を抱えている場合、共同注視が3歳以降になってようやく見られることがあります。また、近年では親がスマホを見ながら子育てをすることで、定型発達でも共同注視の機会を逃してしまうことが問題となっています。子どもと同じものを見て、感情を共有することは発達の過程で非常に重要です。
幼児前期
幼児前期になると、自律性が育まれるようになります。
自分でやらせてみることが重要になってくるため、着替えや排泄などに徐々に挑戦させるようにしましょう。
幼児前期の心理社会的課題は「自主性対羞恥心」です。親が先回りして助けすぎてしまうと、積極性が育まれず、新しいことに挑戦する気持ちが生まれにくくなってしまいます。
1歳半~2歳ごろ
親から離れて行動することが多くなってきますが、何か新しいものに触れるたびに不安になって後ろを振り返ったり、抱きついてきたりします。これは適切な愛着形成ができている証拠ですので、問題はありません。この発達段階を「再接近期」と呼ぶこともあります。
愛着形成が上手くできていない場合、人の愛情を疑ったり、愛情を確認するための行動を取ることがあります。小さい頃はそこまで問題にならないかもしれませんが、思春期や成人期になるとリストカットや自殺未遂など命への危険を伴う行為につながることがあると考えられているため、注意が必要です。
また、この頃になると周囲の人の表情や態度を見ながら自分の行動を決定していく現象が見られます。こういった行為を社会的参照と呼び、社会のルールや慣習を理解していくのです。この社会的参照が育たない場合、万引きなどの反社会的な行為の原因になることもあります。
2歳ごろ
言葉を話したり歩いたりするようになっていき、成長が早い場合には何かを拒否したりする反応を見せることもあります。また、親にしてもらっていたことを自分でやってみようとし始め、自律性が養われていくようになります。
この時期になったら、何でもかんでも親がやってあげるのではなく、子どもにやり方を教えて自分でやらせるようにしましょう。また、ある程度の失敗は許容してあげることで、チャレンジ精神を維持して積極的にいろいろなことに挑戦するようになります。
また、お子さんの言うことを理解し、尊重してあげるのも重要です。2歳頃から自我が芽生え、自分の意志で行動するようになります。子どもの意図を大切にして、なるべく自由に行動させてあげるようにしましょう。
幼児後期
幼児後期になると、自発性が芽生えるようになります。心理社会的課題は「自主性対罪悪感」です。
親と離れて過ごす時間が増え、自分から遊びを考えたり、友だちに話しかけたりするようになっていきます。
保護者は間違った方向や危険な方向に自発性が発揮されないように注意して見ておきつつ、子どもの自発性にはしっかりと反応してあげることが大切です。
自発性を無視してしまうと、罪悪感を抱いてしまい、自分から何かをやってみることを躊躇するようになってしまうことがあります。
3歳ごろ
3歳ごろになると自分の要求を通そうとして、親の言うことを聞かなくなってきます。社会的に良くないと思われることはしっかりと注意し、我慢させることが重要です。この時期は特に母親が非常に大変ですので、父親は子供だけでなく家族全体を支えるつもりでケアをする必要があります。
また、どうしても大変なときは祖父母や社会サービスに頼ることも検討しましょう。
4歳ごろ
すっかり親のもとを離れて自由に動き回ることができるようになりますが、その分危険な目に遭いやすくなるのもこの時期です。
自律心が育っている子どもはその後の生活の中で適切な行動を取ることができるようになります。我慢することの大切さを教えてあげながら、社会的なルールを守って行動できるようにしてあげましょう。
4歳ごろまでは発達障害の診断はできませんが、自律して社会的に適切な行動を取れない場合は発達障害(特にADHD)の可能性があるとされています。
5歳ごろ
幼稚園や保育園に通って友だちとも触れ合う中で、5歳ごろまでに相手の気持ちや立場を理解して行動できるようになります。また、日常生活での基本的な習慣はほとんど自分でできるようになり、親の手伝いをしてくれることもあります。
また、自分の頭で考えて納得のいく理由をつけて判断することができるようになってきます。自分だけではなく、他人の行動についても批判することができ、「ずるい」「おかしい」などの言葉を使うようになります。
また、集団での行動にも慣れ始め、目標に向かって数人でまとまって活動することができるようになっていきます。仲間との関係性や役割を理解し、自分の得意なことや苦手なことを少しずつ理解しながら周囲とのコミュニケーションを取れるようになり、社会性が育まれます。
学童期
学童期になると、ある程度善悪の判断がつくようになります。また、言語能力や認識力も高まり、いろいろなものに関心が向いていく時期です。
心理社会的課題は「勤勉性対劣等感」です。周囲の大人が適切なサポートをせず、叱りつけるだけだと劣等感を抱き、積極性などが失われてしまうリスクもあります。
小学校低学年(6歳~8歳)
学びへの欲求が芽生え、集中したり覚えたりといった能力が発達していきます。6歳頃になるとこういった勉強に必要な能力が形成されていきますが、それが遅い場合は学習障害(LD)やADHDの可能性があります。
また、どんなに勉強が好きでも得意不得意があります。親や周囲の大人がそれを認めてあげて、得意なことを伸ばしつつ、苦手なことを少しずつ克服していくようにサポートしてあげましょう。
テストの点数が悪いという理由で叱るのはご法度です。一緒に分からない問題に向き合ったり、得意なことをしっかりと褒めるようにしましょう。
小学校高学年(9歳~12歳)
小学校高学年になると、物事を対象として距離を置いて分析できるようになっていきます。これにより、知的な活動においても自分で興味のある方向にどんどん学習を進めていくことに繋がり、深い知識を持つようになります。
一方で、この頃には発達の個人差が顕著に現れるようになります。「9歳の壁」と呼ばれることもあるこの時期は、自己肯定感を持つ子と劣等感を感じる子に分かれやすくなる時期でもあります。
適切に自己肯定感を育んでいけるように、得意なことを積極的に伸ばしてあげたり、それが人の役に立つような経験を積ませてあげるなどのサポートをしてあげましょう、
また、集団行動に主体的に関わりだすのもこの時期です。自分たちで遊びのルールを作ったり、そのルールを守って行動するようになります。
青年前期(中学生)
青年期の心理社会的課題は「同一性(アイデンティティ)対同一性の拡散」です。
中学生になるこの時期には、思春期に入り、親や友だちと異なる自分の内面に気づき始めるころです。一方で、自意識と客観的事実のギャップに悩み、自分が何者なのか、どう生きていくべきかを模索しながらアイデンティティが確立していきます。身体的にも、精神的にも不安定なこの時期には、愛着形成がなされており、社会的基盤や自我がしっかりと形成されている場合には自然と乗り越えていくものです。
しかし、発達障害の子どもにとっては、十分な愛着が形成されていなかったり、友人関係がうまく構築できていなかったりすることで、孤立した不安な時期を過ごすことになります。
両親のサポートはもちろん、学校や社会と繋がりを保てるようなカウンセラーや医師のサポートが必要になってくるかもしれません。
青年中期(高校生)
親の保護を離れ、社会参画や自立の移行時期です。思春期の様々な感情に振り回されていた時期を乗り越え、大人の社会でどう生きていくのかを真剣に模索します。
この時期には進路選択など人生における重要な選択があるため、どう生きていくのかや自分の得意分野は何なのか、自己実現のためにはどんな生き方をするべきかをじっくりと考える必要があります。
発達障害を抱えている場合でも、社会に出て自立した生活を送れるようにしていかなくてはなりません。障害の程度にもよりますが、公的な支援機関を利用しつつ社会生活を送れるようにサポートが必要になります。
発達障害の症状・サイン
発達障害の症状やサインは多岐に渡りますが、以下のような症状やサインがあります。
自閉症スペクトラム障害(ASD)
社会性
- 自己中心的な言動が多い
- 人の気持ちを理解するのが苦手
- 人間関係が苦手
- 臨機応変な対応が苦手
- 表情が乏しいと言われる
- 空気を読み過ぎて、人と接するのが疲れる
- 思ったことをそのまま言ってしまう
- 本音と建前の区別がつかない
コミュニケーション
- 曖昧な表現や冗談が苦手
- 自分の興味のあることを一方的に話してしまう
- 会話が噛み合わない
- 表情や場の雰囲気を読むのが苦手
- 人前で演じている感覚がある
- 気を使い過ぎて、逆に疲れる
- 頭で考えていることを人に話すのが苦手
- 1対1のコミュニケーションは何とか出来ても1対複数では上手く出来ない
想像力
- 抽象的なことをイメージしたり、理解したりすることができない
- 実際に目の前にないことを想像できない
- 多くの人が「常識」と思っているようなルールがうまくつかめない
- ジェスチャーの意味が理解できない
- 暗黙の了解がわからない
その他の特徴
- 興味があるものには集中しすぎてしまい、切り替えが難しい
- 興味がないことは途端にスイッチがオフになる
- ネガティブなことを絶えず考えてしまう(ぐるぐる思考)
- 極端な思考で、臨機応変にとか適当に加減することが苦手
- 音や臭い、皮膚感覚、痛みなど、様々な感覚が過敏
- こだわりが強く、ルーティンを好み、イレギュラーに混乱する
- 計算力や記憶力などが突出して優れ、他の脳機能と比較しアンバランス
ADHD(注意欠如・多動性障害)
過眠
- 長時間寝ても、寝た気がしない
- 朝起きれない
- 日中の眠気が強い
- いつも疲れた感じがする
不注意
- 集中して話が聞けない
- 部屋の片づけができない
- 仕事や勉強などで気が散りやすく、集中力が続かない
- 課題を最後までやりきれない
- 忘れ物や落し物が多く、物をなくしやすい
- 約束を忘れてしまう
- ケアレスミスが多い
- 金銭管理ができない
- 平行していくつものことができない
- 課題や仕事を順序だてて行うことが難しい
- じっとしていると落ち着かない
多動性
- おしゃべりが止まらない
- 自分のことばかりしゃべる
- そわそわした感じで、落ち着きがなく、じっとしていられない
- 体の一部を動かす
- おしゃべりに夢中になって、今やらなければならないことを忘れてしまう
衝動性
- 突発的に話し相手の傷つくことを言ってしまう
- 内緒の話を、次の瞬間、他の人にしてしまう
- 思いついたことを、すぐに言動に移す
- イライラしやすい
- 衝動買いをしてしまう
- 何かに依存してしまう
- 気分の浮き沈みが激しい
- 我慢するのが苦手
- キレやすい
学習障害(LD)
算数障害(ディスカリキュリア)
- 数を数えるのが苦手だった
- 時計が読めない、時間がわからないことがあった
- 算数の簡単な1桁の足し算や引き算が暗算ではできなかった
- 繰り上がり、繰り下がりができなかった
- 九九がなかなか覚えられなった
- 図形の模写(視写)が、困難だった
- 筆算はできるが、いまでも暗算が苦手である
書字表出障害(ディスグラフィア)
- 就学前に文字に興味を示さなかった。
- 就学してからもひらがなで書けない文字があった(特に拗音や促音が困難だった)
- カタカナが習得できなかった
- 字をなかなか覚えられない、覚えても、忘れやすい
- 漢字を写字(視写)で間違える。漢字の部首の偏と旁(つくり)が逆になったりする
- ローマ字がなかなか覚えられない
- 英語の読み書きが苦手である
読字障害(ディスレクシア)
- 聴力は正常にもかかわらず、言われた言葉を聞き間違えることが多い
- 音読の速度が遅い。一文字ずつ区切って読む逐次(ちくじ)読みをする
- 文字や行を読み飛ばしすることが多い
- 語尾や文末を読み誤ることが多い
- 「ろ」や「る」など形の似ている文字を見分けることができない
発達障害の子どもが困っていること
発達障害の子どもは、学校生活で困りごとを抱えていることが多いです。家庭ではあまり気にならないかもしれませんが、注意して見守ってあげるようにしましょう。
自閉症スペクトラム障害(ASD)のお子さまの困りごと
- 友だちと言葉でコミュニケーションを取ることが難しく、自分の希望を伝えたり相手の希望を理解することに困難を感じる
- 周囲とのコミュニケーションが苦手で、ひとりでいることが多い。自分の気持ちをうまく表現できないために癇癪を起こしたりして、さらに孤立してしまうこともある
- 特定のことにこだわりが強く、自己流で対処することが多い。そのため、わがままだと思われたり、やり方を矯正されてパニックを起こすことがある
- 感覚過敏の症状で、太陽光が苦手だったり、大きな音のする場所を避けることがある
- 感覚鈍麻の症状で、声をかけられても気づかなかったり、怪我をして流血していても気づいていないことがある
ADHD(注意欠如・多動性障害)のお子さまの困りごと
- 授業中にじっとして話を聞いたり、読書をすることができない。また、課題を出されても他のことに意識が向いてしまい、集中できない
- 忘れ物やケアレスミスが多く、片付けも苦手。また、提出物や持ち物だけでなく、約束事なども忘れてしまい、周囲とトラブルになる
- 順番を待つなど我慢ができない。また、感情のコントロールが苦手なため、すぐにトラブルを引き起こす
- 集団行動が苦手で、周囲と同じペースで物事に取り組むことが苦手
学習障害(LD)のお子さまの困りごと
- 読み間違いが多かったり、たどたどしい読み方になる
- 文字の形が正確に覚えられず、鏡文字になってしまうことがある。また、文法のミスも多く、作文などが苦手
- 数を理解したり、覚えることが苦手。計算ミスも多く、自分で計算式を立てて考えることが困難
発達障害の大人が困っていること
発達障害の大人は、主に仕事で困難が生じることが多いです。自分の部下や上司が発達障害かもしれない場合は、症状に応じて上手くコミュニケーションを取るための工夫が必要です。
自閉症スペクトラム障害(ASD)の大人の困りごと
- 抽象的な指示が理解できない。例えば「多めに発注しておいて」という指示が一体どのくらいの数量を指しているのかを判断できない
- 臨機応変な対応が苦手で、いつもと違うことが発生するとパニックになる
- 感覚過敏の症状で、キーボードの音が気になったり、周囲の話し声が気になって仕事に集中できない
- 人間関係を築くのが困難で、同じ職場で働き続けることができない
- こだわりが強く、細部にこだわり締切に間に合わない
ADHD(注意欠如・多動性障害)の大人の困りごと
- 忘れ物やケアレスミスが多く、資料作成などで何度も修正をする
- 1つの仕事に集中することができず、タスク管理が苦手
- 書類などの紛失が多く、トラブルに繋がったり信頼を失ったりする
- 時間を守れず、取引先などに迷惑をかけてしまう
- 空気を読めず、会議の場で必要のないことを話してしまう
学習障害(LD)の大人の困りごと
- 業務マニュアルを読むことが難しく、仕事がなかなか覚えられない
- 聞いたことをメモすることが苦手。電話応対などで相手の言っていることを記憶できず、他の人に取り次げない
- 自分で式を立てて売上や利益を計算することが苦手。単純な数字の入力はできるが、数式の意味を理解できない
発達障害を疑う場合の相談先
お子さまやご自身が発達障害の可能性があると思った場合は、当院で相談のみの受診も受け付けておりますのでお気軽にご相談ください。
また、お困りごとが多かったり子育て自体に大きな不安がある場合などは、まずは公的機関で相談いただくことをおすすめします。
- 地域の子育て支援センター
- 家庭児童相談室
- 児童相談所
- 保健センター
- 発達障害者支援センター
- 療育センター など
上記の公的機関で子育て・療育相談が可能です。また、必要に応じて医療機関を紹介してくれます。
発達障害の検査・診断
発達障害かどうかを判断するために発達検査や知能検査を行うことがあります。
発達検査は、発達の特性やお困りごとを客観的に判断するための検査です。知能検査は、発達検査と同様に発達の特性を見るほか、知的能力の程度を調べることが可能です。
当院ではWAIS-ⅣやWISC-Ⅳの検査が実施可能です。検査後には心理士が結果を見ながら丁寧にフィードバックし、必要に応じたサポートをご提案させていただきます。
注意点として、発達検査や知能検査の結果のみで発達障害の診断を下すことはできません。医師の問診やQEEG検査などを行い、確定診断が可能になります。
発達障害とIQ
知能検査ではIQを測ることができますが、発達障害の場合は高いIQを持つ場合とそうではない場合があります。また、IQが高い発達障害の場合、周囲から気づかれにくく人知れず生きづらさを感じていることもあります。
発達障害の傾向があると、人間関係において孤立する傾向にあります。さらに、高いIQを持った発達障害の人は物事の核心や理論を重視した発言が多く、雑談が得意ではないため、周囲の人と会話が成り立ちにくいことがよくあります。
良い頭脳を持っていても、周囲に理解されずに苦しんでいるかもしれません。もしIQの差によってストレスを感じるのであれば、適切な集団の中に身を置くことも重要です。
発達障害の原因
発達障害の原因は多くの国の研究機関で調査されていますが、未だに分かっていないことが多いのが現状です。
そのなかでも、原因として確からしいとされていること、分かっていないことについて紹介します。
これまでで分かっていること
- 発達障害の発症には遺伝子が主な要因となっている
- 環境要因もある(低出生体重、養育者のネグレクトなど)
- 遺伝要因と環境要因が組み合わさって発症している
- ワクチンや子育てが原因ではない
まだ分かっておらず、研究段階のこと
- どの遺伝子がどのように関連して症状を引き出すのか
- 親からの遺伝の程度
- 遺伝しないで発症する確率(その人の遺伝子の突然変異)がどのくらいか
- 環境要因が何なのかはまだわからないことが圧倒的に多い
発達障害の特性の遺伝は悪いことではない
発達障害と言われるとネガティブなイメージが付きまといますが、ポジティブな側面も多いことは覚えておきましょう。
例えばアスペルガー症候群の特徴であるこだわりの強さは、雑な仕事をしないという点で発達障害でない人よりも評価されることが多いです。実際、職人やアーティストといった圧倒的な作品を作り上げる人々にはアスペルガー症候群の方も多いです。
さらに、ADHDの方は他の人が躊躇するようなことを簡単に実行したり、行き詰まった会議を斬新な発想で話を広げていくことができたりします。行動力がなかったり、斬新なアイデアが出なくて困っている定型発達の方はたくさんいることを考えると、持って生まれた発達障害の特性は何も悪いことではありません。
発達障害の治療
発達障害は完治させることは難しいですが、治療により生きづらさや困り感を改善することは可能です。また、二次障害が見られる場合は適切な治療によって症状を緩和できます。
薬物療法
薬によって脳内の神経伝達物質を調整し、症状をコントロールすることができます。ただし、効果には個人差がありますし、副作用もあります。
また、薬物療法は基本的には対症療法(症状の緩和が目的)で、根本治療ではありません。そのため、薬物療法を補助的に行い、後述する認知行動療法やTMS治療を並行して行うことが多いです。
行動療法
行動療法では、発達障害の方が苦手とする学習やコミュニケーションのトレーニングを行います。本人の行動や思考を変えることで、生きづらさや困り感を改善していくことが目的です。
TMS治療
TMS治療(経頭蓋磁気刺激法)は、脳を磁気で直接刺激して活性化し、脳機能を正常な状態に戻す治療法です。
欧米では最新の治療法として普及が進んでおり、日本でも一部の医療機関で導入が進んでいます。
近年の研究によって、発達障害の症状に対して薬物療法と同程度の効果があることが報告されています。発達障害の症状の根本治療が期待できます。
TMS治療について詳しくは以下の記事も参考にしてください。
TMS治療(経頭蓋磁気刺激)は、医療先進国のアメリカのFDAや日本の厚生労働省の認可を得た最新の治療方法です。投薬に頼らずうつ病や発達障害などの治療ができるTMS治療について、精神科医が詳しく解説しています。
発達障害の支援
療育(発達支援)
療育とは、障害のある子どもや障害の可能性のあるお子さまに対して、特性に応じた支援を行うことで困り事や生きづらさの解決や、自立して社会生活を送れるようにするものです。
障害の特性に合わせた支援をすることで、得意なことを伸ばしたり、できることを増やすことができるとされています。また、それに付随して自己肯定感や自信の向上も期待できます。
当院で行っているトレーニング
当院でも発達障害を抱えるお子さまや親御さんに対してトレーニングを行っています。
ソーシャル・スキル・トレーニング
ソーシャルスキルとは、社会で人と関わりながら生きていくために欠かせないスキルを指し、そのスキルの習得のためのトレーニングをソーシャル・スキル・トレーニングと呼びます。英語の頭文字を取ってSSTと呼ばれることもあります。
自己紹介や電話対応など、発達障害の方が苦手とするようなシチュエーションを再現し、何度もトレーニングすることでスキルを身に着けます。
当院のソーシャル・スキル・トレーニングについて詳しくは以下の記事を参考にして下さい。
ペアレント・トレーニング
ペアレント・トレーニングは、子育てに悩む親御さんが子どもとの関わり方を学び、子育ての困りごとを解消して楽しく子育てができるように支援するプログラムです。
厚生労働省による発達障害者支援施策の一つにも位置づけられており、国を挙げてペアレント・トレーニングの認知拡大に取り組んでいます。
当院のペアレント・トレーニング外来について詳しくは以下の記事を参考にして下さい。
発達障害に関する公的なサポート
発達障害に関する公的な支援制度についてご紹介します。詳しくはお住まいの地域の自治体にお問い合わせ下さい。
障害者手帳
障害者手帳を取得すると、障害の種類や程度に応じて様々な支援が受けられます。
発達障害の場合は「精神障害者保健福祉手帳」の対象になるため、医師の診断書を自治体に提出して判定を受けましょう。
また、発達障害と知的障害を併存している場合は「療育手帳」も対象になります。
障害福祉サービス
障害児通所支援は、地域で療育や支援が受けられます。児童発達支援、放課後等デイサービスのほか、医療型児童発達支援や保育所等訪問支援など充実したサービスがあるので、お住まいの地域の施設を探してみると良いでしょう。
これらのサービスは未診断のお子さまやグレーゾーンのお子さまも利用できることがありますので、診断を受けていなくてもお困りごとがある場合は連絡してみるのがおすすめです。
合理的配慮
合理的配慮とは、障害者差別解消法によって求められている配慮のことです。
障害のある方々の人権が保障され、教育や就業の機会、その他の社会生活に平等に参加できるように行政・学校・企業に求められています。
例えば、学習障害を抱えるお子さまの学習環境への配慮として、小・中学校に音声読み上げ教科書やタブレットを使用できるようにするなどが挙げられます。
まとめ
発達障害は生まれつきの特性であり、本来はポジティブな側面も多いです。発達障害を個性として捉え、一人ひとりに合った環境や関わり方を考えることでサポートしていくことが理想です。
当院でも発達障害の患者さまの生きづらさや困り感を解消し、社会生活を円滑に送れるようにサポートいたします。診断や治療にご興味のある方はぜひお問い合わせ下さい。
脳の状態を診断するQEEG検査(定量的脳波検査)【当日治療開始可能】
15歳男性 ADHD、アスペルガー症候群合併
21歳男性 アスペルガー症候群、不安障害合併
22歳女性 アスペルガー症候群、うつ合併
8歳女性 学習障害、ADHD合併
技術の進歩により、治療前と治療後のQEEGの変化を客観的に評価することも可能になりました。
QEEG検査で脳の状態を可視化し、結果に応じて、薬を使わない治療など個人に合った治療を提案します。