発達障害の学校・学級選びのポイント(メリット・デメリット)について
発達障害のお子さまの学校選びは慎重に検討したいと考えている親御さんも多いと思います。
今回は、発達障害のお子さまの学校・学級選びについてメリット・デメリットをご紹介します。小学校、中学校に上がるタイミングでお悩みの親御さんはぜひ参考にして下さい。
発達障害の学校選びの選択肢
発達障害の学校選びは、大きく分けて「公立校」「私立校」「特別支援学校」の3つがあります。
さらに、公立校の場合は「通常学級(普通級)」「特別支援学級(支援級)」「通級指導教室」の3つの選択肢から選ぶことになります。
それぞれメリット・デメリットがあるため、順にご紹介します。
公立校
公立校は、定型発達の子と同じ学校に通います。私立に比べて費用も安く、入学に際して試験を受ける必要もありません。
東京や大阪など大都市圏では私立校の選択肢も豊富ですが、地方に住んでいる場合は周囲に私立校がないという場合もあるため、多くの人にとって最優先の選択肢になるでしょう。
通常学級(普通級)
通常学級は、基本的にひとつのクラスにひとりの先生がいるスタンダードなクラスです。定型発達の子と一緒に授業を受け、行事にも参加します。
【通常学級(普通級)のメリット】
- 定型発達の子と同じ空間で生活するため、将来的に社会生活を送る場合に最も近い環境
- 友だちがたくさんでき、生き生きと過ごせる
- 集団で物事に取り組む達成感を味わう事ができる
- 合理的配慮が義務化されている
通常学級では、集団生活を通して社会生活により近い環境を経験する事ができます。
多くの個性に触れ、一人ひとりが違う人間で、得意なこと、不得意なことがあるのを肌で感じることになります。その中で自分の長所や短所と向き合い、得意なことを伸ばしたり苦手なことを克服したり手伝ってもらったりというコミュニケーション力が育まれるでしょう。
また、公立校では「合理的配慮」が義務化されています。合理的配慮とは、発達障害などで学習環境を調整してほしいという保護者やお子さまからの申し出があった場合に特性や困りごとに配慮するように便宜をはかる仕組みです。
読み書きが苦手な場合は拡大教科書やタブレットの利用、指示理解が苦手な場合は1つずつ噛み砕いて指示を出すなどの配慮をしてくれます。(どの程度対応してもらえるかは、学校側との合意形成が必要です。)
【通常学級(普通級)のデメリット】
- 一律一斉の指導のため、学習についていけない事が多い
- クラスメイトとうまく関係が構築できず、孤立してしまうことがある
- 先生が障害について詳しくなく、必要な支援ができないことがある
- 他の子とのギャップを感じてしまい、苦しさを感じることがある
通常学級は良くも悪くも必要最低限の配慮しか望めません。集団生活に慣れるためには良い環境である一方で、周囲の人が全員発達障害を理解してくれるわけでもないため、友だちを作ることができなかったり、ひどいケースではいじめに発展することもあるでしょう。
通常学級でも馴染めるかどうかは発達障害の程度にもよるため、正確な検査でどの程度の発達障害なのかを診断することをおすすめします。
QEEG検査は脳の状態を可視化し、脳波が、脳のどの位置から、どんなタイミングでどのくらい出ているのかを画像にすることで、脳の各部位が正常に機能しているかどうかを診断することができる検査です。この記事では、QEEG検査について、通常の脳波検査との違い、具体的な検査方法、診断が可能な疾患について精神科医が解説しています。
特別支援学級(支援級)
特別支援学級は通常学校にある特別な学級です。1学級あたり8名が標準ですが、全国の平均では3名となっています。
学校教育法では、以下の児童及び生徒が該当するとされています。
- 知的障害者
- 肢体不自由者
- 身体虚弱者
- 弱視者
- 難聴者
- その他障害のある者で、特別支援学級において教育を行うことが適当なもの
特別支援学級では、一般の学習指導要領ではなく特別支援学校の学習指導要領が適用されます。これにより、個々の苦手な部分を重点的に取り扱うなど、ニーズに応じたカリキュラムを学びます。
自治体によって特別支援学級の種類や数は異なります。呼び方も統一されたものはなく、養護学級、総合学級、仲良し学級、あすなろ学級など様々です。
【特別支援学級(支援級)のメリット】
- 学習面でのサポートが手厚い
- 苦手なことをゆっくり改善できる
- 専門的な知識を持った先生が対応してくれる
- 安心して過ごせる居場所になる
個々の特性に応じて様々なカリキュラムで指導されるため、学習面での困難をカバーしやすいです。普通級では一律一斉で授業が進むため、授業についていけずに困ってしまうことがありますが、支援級では苦手な分野はゆっくり着実に進めることができます。
【特別支援学級(支援級)のデメリット】
- 普通学級の友だちと関わる機会が減ってしまう
- 学習内容に偏りが生じやすい
- 協力して問題を解決する機会が少ない
- 進学先が限られる可能性がある
支援級のデメリットとして挙げられるのは、普通学級の友だちと関わる機会が減ってしまうことです。先述の通り特別支援学級は1学級8名が標準で、全国的な平均は3名です。つまり、特別支援学級に在籍しているのが1人だけというケースもあるのです。かなり小さなコミュニティで過ごすことになるため、一方では過ごしやすいですが、集団の中での過ごし方などを学ぶ機会が大きく減ってしまいます。
また、苦手なことに合わせてカリキュラムを組むため、学習進度が遅くなってしまったり、学習内容に偏りが生まれてしまうことがあります。
また、特に注意しておきたいこととして、進学先が限られてしまう可能性があります。
特別支援学級は普通学級と評価基準が異なるため、特に中学生の場合は支援級での学習が内申点に反映されないことがあります。
こうした懸念点は学級選択時に必ず学校側に確認し、お子さまの将来的な選択肢を狭めないように注意しなくてはなりません。
通級指導教室
通級指導教室では、基本的には通常学級で過ごし、週に何時間かだけ通級指導教室に移動して、それぞれの困り事や課題に合わせた支援・指導を受けます。
必要な支援や指導の内容が個別で変わるため、障害の種類によって教室も複数に分かれています。そのため、通っている学校に適した通級指導教室がない場合もあり、たとえば市区町村内の他の学校に行って通級指導教室に通うということもあります。
平成27年度の文部科学省の統計調査では、全国の公立の小学校3693校・中学校645校に通級指導教室が設置され、義務教育段階の児童生徒全体の0.8%にあたる8万3750人の児童・生徒が通級による指導を受けていると報告されています。
一人ひとりに合った教育環境の整備や、発達障害への理解が進んでいることもあり、通級指導教室で学ぶ児童・生徒は増加傾向にあります。
【通級指導教室のメリット】
- 障害に応じたカリキュラムで指導を受けられる
- 学習面以外に生活上の困難を改善するための指導も受けられる
- 基本は普通級に在籍しているため、友だちを作りやすい
通級指導教室は障害に応じて細かくカリキュラムを決めて指導を受けられるため、個人の特性に応じて最適な学習環境が整えられるメリットがあります。
また、生活面の指導も行い、障害との付き合い方や自立した生活のために困りごとの改善指導も行います。
基本的には普通級に在籍してクラスメートと過ごすため、集団生活にも慣れる事ができ、友だちも作りやすいです。普通級と支援級のいいとこ取りのような環境です。
【通級指導教室のデメリット】
- 必ずしも該当する通級指導教室があるとは限らない
- 他校の通級指導教室に通う場合、保護者による送迎が必要になることがある
- 学級数、受入可能人数の地域差が大きい
- 普通級との行き来がお子さまのストレスになる場合がある
通級指導教室は障害によって細かく分かれているため、最適な教室が自分の学校にあるとは限りません。また、他の学校の通級に通う場合、保護者の送迎が必要なこともあり、少なからず親御さんの負担があります。
障害の程度によっては普通級と通級の行き来が本人のストレスになり、症状を悪化させてしまうこともあります。本人の特性をしっかりと考え、他校の教室に通うべきかどうかを判断するようにしましょう。
私立校
私立校は大都市圏にお住まいの方にとっては選択肢のひとつになるでしょう。
公立校とは違い、学習環境に特色のある学校も多くあります。
私立校のメリット
- 学習環境に特色がある
- 同じような学力・特性を持った人が集まる
- 個性を伸ばす教育に力を入れていることが多い
私立校の場合、学習環境に特色があることが多いです。例えば、ICT教育を取り入れていて授業はすべてタブレットで行うという学校もあります。こういった学校ならば、学習障害で読み書きが苦手な子どもでも特別なサポートなしに同じ授業を受けることができます。
他にも、机に向かって授業を受けるのではなく能動的に周囲と話しながら議論をすることを重視するカリキュラムを導入している学校であれば、ADHDの多動特性がいい方向に捉えられるかもしれません。居心地の良い環境で、特性を生かして過ごせることもあるでしょう。
私立校のデメリット
- 公立に比べて費用が高い
- 合理的配慮が努力目標
- そもそも通える範囲にないことがある
私立校の大きなデメリットは、公立校よりも費用が高くなってしまうという点です。また、学校の場所によっては送迎が必要になることもあり、親御さんへの負担が大きくなりがちです。
また、公立校では義務化されている合理的配慮が私立校では努力項目でしかなく、場合によっては個人的な配慮は受けられない可能性があります。必要な支援について専門的な知識を持つ先生がいないこともあるため、事前にしっかりと確認しておくようにしましょう。
地方にお住まいの場合、そもそも私立校の選択肢が少ないケースも考えられます。
特別支援学校
特別支援学校は特別支援教育を専門に実施している学校です。通級指導教室や特別支援学級といった一部のみを支援学級とするのではなく、学校全体で特別支援教育を行っているのが特徴です。幼稚部から高等部まで設置されていることが多く、障害の程度が重い場合は特別支援学校を選択することで個人に最適な教育を受けることが可能です。
特別支援学校のメリット
- 専門性の高い支援が受けられる
- 進学や就労に関するサポートも手厚い
- 保護者に対してもサポートがある
特別支援学校の最大のメリットは、専門性の高い教員から指導を受けることができる点です。発達障害をはじめ、多くの障害に対して高い知識を持った教員が一人ひとりに対して最適な指導を行ってくれるため、特性に応じて得意なことを最大限に伸ばし、苦手なことをできる限り改善することができます。
さらに、障害を持つ児童や生徒の進学や就職についても情報が集まりやすく、普通学級に通うよりも将来の選択肢が広がることがあります。
学校の先生と障害に関する専門家の意見を聞きながら、不安を感じずに進路を相談できるのは親御さんにとってもありがたい環境と言えます。
また、お子さまが発達障害を抱えている場合、親御さんにも困難が多くなりますが、そういった親御さんの悩みに対してもきめ細かいサポートをしてくれるのが特別支援学校です。
普通級では少なからず自分で情報収集をしなくてはいけませんが、特別支援学校には障害に関するたくさんの情報が集まってくるため、負担は軽減されるでしょう。
特別支援学校のデメリット
- 保護者・お子さまの特性への理解がないと後悔することがある
- 入学手続きが煩雑
特別支援学校は、保護者もお子さま自身も特性をしっかりと理解した上で選択することが望ましいです。
お子さまが納得していない状態で無理に特別支援学校に通わせてしまうと、「普通の学校に通いたかった」とずっと恨まれることがあります。
また、お子さまの特性への親御さんの理解が足りないと、学校側のサポートに納得がいかず、適切な支援を受けられずにお子さまに負担をかけてしまうことがあります。
さらに、入学に際して精神障害者保健福祉手帳の取得が必要だったり、診断書を提出しなくてはいけなかったりという煩雑さもあります。こちらはお子さまのためにも面倒に思わず提出するようにしましょう。
発達障害の学校選び・進路選択のポイント
学校選びや進路選択のポイントは、お子さまが最も学びやすく過ごしやすい環境を選ぶことです。そのためには、お子さまの特性を親御さんがしっかりと理解しておく必要があります。
お子さまの得意・不得意を理解し、必要な支援や配慮を整理する
まず、お子さまの得意・不得意を現実的に理解し、どのような支援や配慮が必要なのかを整理するところから始めましょう。
ご家庭で観察したり、幼稚園や保育園から様子を伺ったりして情報を整理し、必要があれば医療機関にも相談してみることをおすすめします。
広く情報収集をする
そもそもお住まいの地域にどのような支援体制があるのか情報収集をしましょう。
通学予定の学校に通級指導教室はあるのか、1学年あたりどの程度の人数が特別支援学級に通っているのかなど、これからお子さまが通うことになるかもしれない環境をしっかりと把握して選択する必要があります。情報収集はインターネットを活用したり、自治体への相談、同じ地域の先輩の保護者に聞いてみるのもいいでしょう。
可能なら見学をする
情報収集をしたら、可能な限り見学に行って実際の様子を確認するようにしましょう。
学校や学級の様子は、写真だけではどうしても伝わりきらないことがあります。お子さまの特性と合っているかどうかを実際に目で見て確認することで、ミスマッチを防ぐことに繋がります。
お子さまの希望を優先する
お子さまの特性をしっかりと理解したうえで、お子さまに適切な選択肢を提示してあげられる状態が理想的です。本人の希望も聞いて、なるべく尊重してあげるようにしましょう。
お子さまの成長に応じて環境を変えることも可能です。最初は特別支援学級に在籍していたが、発達の状況を鑑みて通常学級に移るというケースもあります。また、その反対も可能です。
一度決めたからといって環境を変えられないわけではないため、成長に応じてどのような環境が適切なのかをお子さまと一緒に考えていくことが重要です。
まとめ
発達障害のお子さまの学校選び・学級選びは悩む親御さんがほとんどです。
お子さまに最適な環境を提供できるように、しっかりと情報収集することが大切です。
また、成長に応じて環境は変えることができます。そのときにお子さまに必要な環境を与えられるように、常にお子さまに寄り添って特性を理解するようにしましょう。
当院では発達障害のお子さまを持つ親御さん向けに「ペアレント・トレーニング」を実施していますので、ご興味のある方はお気軽にお問い合わせ下さい。
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15歳男性 ADHD、アスペルガー症候群合併
21歳男性 アスペルガー症候群、不安障害合併
22歳女性 アスペルガー症候群、うつ合併
8歳女性 学習障害、ADHD合併
技術の進歩により、治療前と治療後のQEEGの変化を客観的に評価することも可能になりました。
QEEG検査で脳の状態を可視化し、結果に応じて、薬を使わない治療など個人に合った治療を提案します。