発達障害(ADHD・ASD)が疲れやすいのはなぜ?理由を解説
発達障害の方は、定型発達の人よりも疲れやすいと言われています。
実際これには理由があり、発達障害の特性によって普通の生活を送っていても疲れやすいと感じている方は多くいらっしゃいます。
今回は、なぜ発達障害が疲れやすいのかという理由や対処法について解説し、発達障害の特性を改善する治療やトレーニングについてもご紹介します。
発達障害とは
発達障害は、大きく分けてADHD(注意欠如多動性障害)、ASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群)、LD(学習障害)の3つの症状がある生まれつきの障害です。
それぞれの特徴について簡単に紹介します。
ADHD
ADHDは「不注意」「多動性」「衝動性」の3つの特性を持つ障害です。小学生になる前あたりから症状が目立ち始めることが多く、成長するにつれて症状が落ち着いてくることがあります。
個人差はありますが、主に以下のような症状が見られます。
- 忘れ物や紛失が多い
- 落ち着いて座っていられない
- 深く考えずに思いつきで行動してしまう
- 好きなことに寝食を忘れて熱中する
- 色々なことに手を出すが、飽きっぽい など
ADHDは症状が軽い場合は学生時代には気づかないこともあり、社会人になってから自分の特性に気づくことがあります。
ASD
ASDは「社会性の障害」「対人コミュニケーションの障害」「強いこだわり」の3つの代表的な特性があります。子どもにも大人にも共通している特性ですが、大人になるにつれて対処方法が分かってくるため、あまり症状が目立たなくなる傾向にあります。
具体的には以下のような症状が見られます。
- 目を合わせて話せない
- マイペースな行動が目立つ
- たとえ話や冗談が通じない
- 予定が変わるとパニックになる
- 好きなことは寝食を忘れて没頭する など
こういった症状はマイナスに捉えられがちですが、マイペースに自分の好きなことを追求することのできるASDには、アーティストや研究者として才能を開花させている人も多いです。
LD
LD(学習障害)は知的障害などではないのに読み書き計算の能力に困難を抱える障害です。症状によって、「読字障害(ディスレクシア)」「書字障害(ディスグラフィア)」「算数障害(ディスカリキュリア)」の3つに分類されます。
これらのいずれかのみ抱える場合と、複数を併発する場合の両方あります。
具体的には以下のような症状が見られます。
- 文字がうまく読めない、逐次読みになってしまう
- 文字を正確に書くことができない
- 鏡文字を書いてしまう
- 数の概念をなかなか理解できない
- 簡単な計算式が立てられない など
対人コミュニケーションや行動に困難を抱えていないケースも多く、一見すると定型発達と変わらないようにも見えます。そのため、軽度の学習障害では症状に気づかれずに社会人になっていることもあります。
その他の発達障害
その他の発達障害として、発達性協調運動障害などが挙げられます。
手先が極端に不器用で、ハサミなどの簡単な道具が使えなかったり、自転車に乗れないなどの症状です。年齢に不相応なほど不器用さが目立つ場合は発達性協調運動障害の可能性があります。
発達障害が疲れやすいのはなぜか
発達障害の代表的な特性や症状を紹介しましたが、なぜ発達障害の人は疲れやすいのでしょうか。
実は、発達障害の人はその特性ゆえ、定型発達の人が無意識にやっていることにエネルギーを使ってしまっているため、疲れやすいのです。具体的な例を見ていきましょう。
環境に合わせるために我慢している
発達障害の方は、周囲に合わせるのが苦手なことが多いです。例えばADHD特性のある方はじっとしていることや静かにしていることが苦手な傾向にあります。また、ASDの人は空気が読めないために周囲の状況を細かく分析して適切な行動を取ろうとします。小さい頃はそういった意識がないかもしれませんが、成長するにつれて静かにしなくてはいけないタイミングなどを理解し、その状況に合わせるために我慢したり常に注意を向けているため、定型発達の人よりも疲れやすいのです。
感覚過敏によるストレス
発達障害の方の中には、五感で感じる刺激にとても敏感な人がいます。これを「感覚過敏」と呼びますが、この症状によるストレスが大きな疲労感を生み出していることがあります。
感覚過敏の症状としては、以下のようなことが気になったりストレスになったりします。
- 日光や蛍光灯の光が眩しすぎる
- 周囲の人の会話やタイピング音が気になって集中できない
- 肌触りの独特な服が着られない
- 香水などの匂いに耐えられない
こうしたストレスが職場や通勤電車などで常に襲いかかるため、それを我慢するストレスが原因で疲れてしまうことがあります。
多動性・衝動性によって行動量が多い
ADHDの方は、興味のあることや自分がやってみたいと思ったことに何でも飛びついてしまう傾向があります。そのため、気づいたら毎日スケジュールがパンパンになっていることが多いです。他の人との約束事だと断ることもできず、寝る時間や食事の時間を削ってしまい、体力が持たないのです。いわゆる「キャパオーバー」の状態です。
発達性協調運動障害によって日常動作が疲れる
発達性協調運動障害を抱えている場合、日常生活の簡単な動作すら難しく感じることがあります。例えば電車の吊り革を持つだけなのに異常なほど強く握ってしまったり、靴紐を上手く結べずに何度もやり直したり、歯磨きの力の入れ具合が分からずに出血してしまったりします。極端に手先が不器用だったりすることで、日常的な動作に多くのエネルギーを消費してしまうのです。
過集中によるエネルギー不足
ASDの方に多いですが、興味のあることに対しての集中力が並外れていることがあります。例えば数学が好きな場合、問題を解くことに熱中しすぎて寝食を忘れてしまい、ふと我に帰ったときにエネルギーが枯渇しているのです。
こういった「過集中」は短時間で大きな成果を挙げることがある一方で、心身に大きな負担をかけてしまうことが多いです。
発達障害の疲れやすさへの対処法
発達障害の疲れやすさを解消するためには、疲れの原因となっていることを把握し、それが発生しない環境を作ることが重要です。
環境に合わせる必要をなくす
周囲に合わせることで疲れてしまう方は、周囲に合わせずに済む環境に身を移すことが最も効果的です。社会で生活していくには社交性がないといけないと思っている方も多いですが、フリーランスとして働いたりリモートワークが一般的になりつつある近年は、最小限のコミュニケーションだけでも十分に仕事をして生活していくことができます。
生活を変えることが難しい場合は、周囲に合わせるために無理をする時間と同じくらい、自分の居心地のいい時間を確保するようにしましょう。会社の昼休みは近くの公園でひとりでゆっくりするなど、周囲に気を使わない時間を設けることが大切です。
刺激を緩和させるためのグッズを活用する
感覚過敏が原因で疲れてしまう方は、刺激を緩和させるグッズを活用するようにしましょう。周囲の音が気になる場合はイヤホンやヘッドホンを着用できるように職場に許可をもらったり、そもそも職場の環境音が苦手な場合はリモートワークの許可をもらうことで対応できます。感覚過敏用のグッズはたくさんあるので、自分の特性に合わせて必要だと思うものを試してみましょう。
休憩をタスク化する
多動性や衝動性の強いADHDの方は、スケジュールを組むときに「休憩」をタスクとして組み込むようにしましょう。予定が決まる前に「この時間は誰とも会わずにひとりで休む」と決めてしまうことで、無理のないスケジュールで行動することができます。
苦手な動作を避ける
発達性協調運動障害の方は、自分の苦手な動作をしなくて済むような工夫をすることで疲労感を減らすことができます。
例えば、靴紐が上手く結べない場合は紐を結ぶ必要のない靴(スリッポンなど)を履いたり、ハサミや包丁を使わないで済むようにあらかじめ切り分けられた物を購入したりすることで対処できます。
過集中を防ぐため、アラームを活用する
集中しすぎて疲れてしまう人は、スマホのアラームを活用するようにしましょう。あらかじめ集中する時間を決めておくことで、過集中による疲れを防ぐことができます。
また、時間管理の方法として「ポモドーロ・テクニック」などを活用することもおすすめです。本来は集中力を維持するために行う方法ですが、一定時間で強制的に休憩を挟むことで過集中を防ぐことができます。
発達障害の特性を改善する治療・トレーニング
発達障害の特性によって疲労感を感じている方は、その特性を改善することで日々の疲労感を軽減する事ができるようになります。
ブレインクリニックでも対応しているTMS治療とSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)についてご紹介します。
TMS治療
TMS治療は磁気刺激で脳の特定部位を刺激し、脳血流を増加させることで脳機能を正常な状態に戻していく治療法です。
発達障害の場合、ADHDやASDの二次障害として起こる感覚過敏や不安障害、パニック障害、うつ特性などに有効です。日常生活で困り感を抱えている方の症状を改善することで、疲労感を軽減することができます。
TMS治療(経頭蓋磁気刺激)は、医療先進国のアメリカのFDAや日本の厚生労働省の認可を得た最新の治療方法です。投薬に頼らずうつ病や発達障害などの治療ができるTMS治療について、精神科医が詳しく解説しています。
SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)
SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)は、社会で人と関わりながら生きていくために必要不可欠なスキルを身につけるための訓練です。当院ではVRを用いたSSTを実施しており、苦手なシチュエーションを繰り返し練習することができるのが特徴です。
SSTによって日常で自分が苦手とすることを訓練し、適切な対処法を身につけることで困り感を解消することができます。ストレスなく対処ができるようになれば、疲労感も軽減していきます。
まとめ
発達障害の方が疲れやすいのは、定型発達の方が無意識に行っていることにエネルギーを使っているからです。ストレスになっている環境や状況を可能な限り取り除くことで疲労感を軽減することが可能です。また、治療によって発達障害の特性による困り感を改善していくことでも疲労感の軽減が期待できます。
脳の状態を診断するQEEG検査(定量的脳波検査)【当日治療開始可能】
15歳男性 ADHD、アスペルガー症候群合併
21歳男性 アスペルガー症候群、不安障害合併
22歳女性 アスペルガー症候群、うつ合併
8歳女性 学習障害、ADHD合併
技術の進歩により、治療前と治療後のQEEGの変化を客観的に評価することも可能になりました。
QEEG検査で脳の状態を可視化し、結果に応じて、薬を使わない治療など個人に合った治療を提案します。