発達障害の上司や部下の特徴と良い接し方、付き合い方
目次
- 1 発達障害とは
- 2 発達障害の上司の特徴
- 2.1 理論的ではなく、感情的に話をする
- 2.2 問題がおきるとすぐパニックになる
- 2.3 部下のミスを責め立てるのみで解決しようとしない
- 2.4 会話のキャッチボールが下手で、丁寧にはなしても間違った風に解釈したり、うまく伝わらず何度も同じ話をしなければならない
- 2.5 衝動的に動いてミスをしたり、非効率だったりする
- 2.6 非現実的な目標や提案を思いつきですることがある
- 2.7 報告したことを完全に忘れていることがある
- 2.8 仕事に支障がでる嘘をつくことがある
- 2.9 自分の非を認めない
- 2.10 部下への配慮、思いやりに欠ける
- 2.11 ストレスを感じていると辛くあたってきたり、物にあたったりする
- 2.12 書類やゴミが机に散乱していて汚い
- 3 発達障害の上司との接し方、付き合い方
- 4 発達障害の部下の特徴
- 5 発達障害の部下との接し方、付き合い方
- 6 まとめ
皆さんの身近に発達障害の方はいますか?
実は発達障害は10人に1人はいるとされており、身近に発達障害の方がいるのは全然珍しいことではないのです。10人に1人ということは、割合的には100人の会社であれば10人は何らかの発達障害特性を持っているということです。
そのため発達障害者が上司になることも、部下になることもあると思いますが、定型発達の方と同じように接していてはなかなか仕事がスムーズに進まず、苦労すると思います。
そこで今回は、発達障害の上司や部下の特徴と、仕事がスムーズに運ぶ接し方を紹介します。
発達障害とは
発達障害とは、生まれつき脳機能の発達の偏りによる障害です。得意なことと不得意なことに特性があり、社会生活に様々な困難が発生します。発達障害は周囲からはわかりにくく、どのようなことに困るかは個人差が大きいです。
大人になって発達障害に初めて気づく
発達障害があることになかなか気づかないで社会人になり、初めて自分が発達障害だったと気づくことがあります。
学校生活は基本的に時間割通りに規則正しく進むため、言われたとおりにしていれば問題は表面化することは少ないのです。
しかし、社会人になるとスケジュールを自分で管理しなくてはならなかったり、初対面の人と交渉をしたり、答えの無い問題に向き合ったりする必要があるため、急激に対応範囲が広がります。これによって自分が周囲に比べてできないことが多いことに気づき、発達障害であることを疑うことがあるのです。
発達障害の3つのタイプ
発達障害には3つのタイプがあります。それぞれご紹介します。
ADHD(注意欠陥多動性障害)
ADHDはすぐにものを失くしたりする「不注意」や、じっとしていられない「多動」、突飛な行動に出る「衝動性」などを特徴とする障害です。集中力が続かず、様々なミスを何度もするため、学校生活や社会生活では困り事が多いです。
一方で、独自の視点や豊かな発想力が活かせる環境だとその才能を発揮し、他の人にはできないような大活躍をすることもあります。
ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)
ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)は社会的なコミュニケーションや他の人とのやり取りが上手くできず、興味や活動が偏るという特徴があります。感情や認知に関する脳の異常だと考えられており、育て方が原因ではないとされています。
また、上記の様ような症状が原因で周囲と適切なコミュニケーションが取れず、うつ病などの二次障害につながることもあります。
学習障害(LD)
学習障害(LD)とは、知能発達には遅れが見られないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」能力に困難が生じる発達障害のことです。LDのタイプは以下の3種類があります。
- 読字障害(ディスレクシア)
- 書字障害(ディスグラフィア)
- 算数障害(ディスカリキュリア)
症状に個人差があり、意識しないと気づかれないことが多いです。例えば読字障害で音読が苦手な場合、周囲からはサボっている、ふざけているなどと思われ、障害であることを疑わずに扱われることがあります。本人は真面目にやっているため、こうした周囲の態度に傷ついてしまい、うつ病などの精神障害を併発することもあります。
→ディスレクシア(読字障害)について
→ディスグラフィア(書字表出障害)について
→ディスカリキュリア(算数障害)について
発達障害の上司の特徴
発達障害の上司はどのような特徴を持っているのか見ていきましょう。
理論的ではなく、感情的に話をする
例えば部下のミスに対して、今回は何が原因でミスが発生したのか、そして次からどうすればいいのかを教えず、とにかく怒って次からやめるようにしか言ってこないような話し方をする傾向にあります。
問題がおきるとすぐパニックになる
何か不測の事態が発生すると、どう行動していいかわからずパニックになります。冷静さを欠き、突飛な行動に出ることがあります。
部下のミスを責め立てるのみで解決しようとしない
ミスを解決するための方法を考えて伝えるのではなく、終始部下のせいにしてそのミスを責めます。そのため、部下は同じミスをしないように気を使いますが、具体的な解決策がないためにまたミスをしてしまうことにつながったりします。
会話のキャッチボールが下手で、丁寧にはなしても間違った風に解釈したり、うまく伝わらず何度も同じ話をしなければならない
丁寧に話しても、「つまり~ってこと?」の確認をもらうと違った解釈をしていることがあります。そのため、理解してもらうまで同じことを繰り返し説明する必要があります。
衝動的に動いてミスをしたり、非効率だったりする
計画的に物事を進めるのが苦手で、急に違うことをして間違ったり、やり方を変えたりするため、部下が振り回される傾向にあります。
非現実的な目標や提案を思いつきですることがある
衝動的な側面があるため、その場でクライアントにできもしない提案をしてしまい、取り返しがつかなくなることがあります。
報告したことを完全に忘れていることがある
口頭でも、書面でも、チャットでも報告した旨を伝えているのに、「あの件ってどうなったの?返事まだ?」といった質問をされることがあります。
仕事に支障がでる嘘をつくことがある
例えばクライアントに提出する資料の確認をしてもらうようにお願いしたとき、確認したといいつつ実際には確認していないといったことがあります。
自分の非を認めない
上記のように提出資料の確認をお願いしていたのに嘘をついて確認しておらず、実際にクライアントから指摘が入ったとき、部下のせいにして自分は悪くないと保身に走ることがあります。
部下への配慮、思いやりに欠ける
何の説明もなしに仕事を振って混乱させたり、思いつきで頼み事をしてきたりと、部下のことを考えずに自分勝手に行動する傾向にあります。
ストレスを感じていると辛くあたってきたり、物にあたったりする
ストレスを上手く発散することができず、部下に対しての口調が荒くなったり、ものにあたったりします。威圧的な態度に見えることもあり、周囲の雰囲気を悪くしてしまいます。
書類やゴミが机に散乱していて汚い
片付けたり整理したりというのが苦手で、書類が山になっていたり、ゴミが散乱していて
雑然としています。また、そのせいもあって頻繁に書類を紛失したりします。
発達障害の上司との接し方、付き合い方
発達障害の上司の特徴について紹介してきましたが、ではどうしたらうまく付き合い、仕事を円滑にすすめることができるのでしょうか。以下に接し方のポイントを紹介します。
あいまいな表現をしない
「納期が予定より少し遅れそうです」と発達障害の上司に伝える場合も、発達障害はあいまいな表現が理解できません。今日の午後には上がってくるのかな、と勝手に思い込み、話が違うと怒ってきたりします。
何か期限を伝える際は、「納期が3日間遅れます。15日の午前中には仕上がります」と、はっきり確実に表現をしましょう。これで混乱することが減るはずです。
また、冗談や婉曲的表現も混乱をまねくだけです。誰が聞いても冗談だと思うようなことでも言葉通り受け取ってしまうため、何かを伝える際はストレートな物言いを心掛けましょう。
絵に描いて説明する
発達障害には視覚に訴えるのがもっとも効果的な表現方法です。
文字や絵を描きながら、「AがBになるので、これはCになります」と、言いながら紙に書いて伝えましょう。言葉で話すよりも、ぐっと分かりやすいです。
この方法は、東大でも使われており、東大では授業の内容を文字に書き起こす「書き起こし文化」なるものがあります。(余談ですが、東大生にはASDが多いと言われています)
どの発達障害なのか種類を知る
上述したとおり、発達障害にはおもに3つの種類があります。
上司がどの発達障害なのか特徴がわかったほうが、接し方のコツもわかります。
- ASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群)
- ADHD(注意欠如多動性障害)
- LD(学習障害)
傷ついたらはっきり言う
ASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群)の方は人の気持ちを察することが苦手なので、悪意なく失礼なことを言ってしまいます。
ちょっと太っただけで、「太ったねー豚に似てきたよ」なんてことを、女性社員にもさらっと言ってしまうこともあります。そしてそこは、はっきりと「今の太ったという言葉と、豚という言葉は心外です。もう言わないでください」言いましょう。
言った本人は失礼だったとか、相手が傷ついたとかを言われないと理解する事が出来ません。
仕事の優先順位をあらかじめ考えておく
発達障害は優先順位を決めるのが苦手です。
たとえば、「AとBとCはどの仕事から優先したほうがいいでしょうか?」と聞いても、何を先にすればいいのかがわからず、聞かれても困ってしまいます。
そのため、「Cが納期が早いので、Cからして、終わり次第A、Bの順でどうでしょうか?」など、答えをあらかじめ考えておきましょう。
提案して承諾をもらうという形ならYesNoで答えられるので、答えが簡単です。
発達障害の部下の特徴
続いて、発達障害の部下の特徴を見ていきましょう。
指示に対して返事をしたのに、見当違いなことをやっている
上司からの指示を聞いて「わかりました」と返事をしたのに、しばらくして進捗を確認すると見当違いなことをしている場合があります。これは十分な理解ができていないのに返事をしてしまうのと、不明点を上司や同僚に質問できないという要因によります。
指示を最後まで聞いていない
発達障害の中でもADHDの症状がある場合は、指示を最後まで聞いていないことがあります。そのため、指示された仕事を半分終えてそのままにしており、終わっていないということがあります。
言葉をそのまま受け取り、実行する
例えば上司から「休日はしっかり休め」と言われていた場合、何らかの事情で休日に出勤しなくてはいけなくなった場合でも、「休日はしっかり休め」の言葉どおりに行動するため、仕事をしなくてはいけないタイミングにも関わらず休んでしまったりします。臨機応変に対応することが苦手な傾向にあるのです。
仕事のやり方に強いこだわりがある
例えばエクセルやワードなど、様々なショートカットが使えるようなソフトを使用して効率よく仕事をできるように言われても、頑なに自分のやり方を変えません。
電話応対など、予測不能な仕事が極端に苦手
発達障害の中でも学習障害の方に多いのが電話応対が苦手という特徴です。耳から情報を得ることが苦手で、相手の名前や所属企業名を覚えておくことができなかったりします。また、あらゆる人から電話がかかってくるので準備ができず、混乱してしまいます。
メモが取れず、ミスが多い
書字障害の人はメモを取ることが苦手で、上記の電話応対や上司から口頭で言われたタスクを忘れてしまう傾向にあります。
非言語コミュニケーションが苦手
言葉をそのまま受け取り、実行するという特徴にも近いですが、相手の仕草や表情から感情を読み取ることが難しい傾向にあります。そのため、例えば上司が笑いながら「変なこと言うなって~」と単なるコミュニケーションを取ろうとして言った言葉に対して、「いえ、変なことは言っていません」と真面目に返答してくる、といったことが起こりえます。
こうした特徴があるため、冗談が通じないと言われることが多いです。
さじ加減がわからない
「ちょっと」や「多め」といった曖昧な表現がわからず、上司の認識と大きくズレることがあります。
たとえば会議の人数が5人で、「資料は少し多めに刷っておいて」と依頼されたとき、発達障害を抱えている人は15部くらい印刷してしまうことがあります。印刷ミスの可能性を考慮して「少し多め」と言っていることを察することができず、認識にずれが生じるのです。
発達障害の部下との接し方、付き合い方
発達障害の部下との接し方は、とにかく相手が理解しやすい伝え方を心がけることが重要です。
具体的な指示を出す
まず、曖昧な表現は絶対に避けるようにしましょう。「15時からの5人の会議で使うこの資料を、印刷ミスのことも考えて7部印刷して、14時55分に会議室Aの机に並べておいて」といった形で、とにかく細かく、具体的な指示を出すようにしましょう。曖昧な表現があるとどう対応していいのかわからず、困ってしまいます。
専用のマニュアルを準備する(させる)
業務マニュアルが準備されている場合は、その自分専用のものを作成させるようにしましょう。上記の指示出しと同じように、曖昧な表現を可能な限り排除したものが望ましいです。例えば「頃合いを見計らって」や「お手すきの際に」は結局いつのことなのかわかりません。そのため、「15時を過ぎて〇〇の返事が来ていないとき」や「朝出社してPCを立ち上げる前」といった形で具体的なシチュエーションやタイミングを記したマニュアルを作成します。そうすると、曖昧な表現に迷わずに業務に当たることが可能です。
文字や図での説明を徹底する
特に学習障害(LD)の方に対しては、口頭での説明は理解が難しいです。そのため、口頭で説明する際はテキストや図を使って視覚的にも伝えるようにしましょう。
また、ICレコーダーを準備して、何度も聞き直せるようにするのも効果的です。
まとめ
発達障害の上司や部下との接し方についてご紹介しました。
日本では2004年に「発達障害者支援法」が制定され、2016年の改正では発達障害のある人が社会生活を営む上で直面する不利益は、本人ではなく社会の責任であるという考えが示されています。
定型発達と比べてケアするべき部分は多いかもしれませんが、より多くの人が障壁を感じない社会にしていくためにも、接し方やサポートの仕方を理解しておくことが大切です。
脳の状態を診断するQEEG検査(定量的脳波検査)【当日治療開始可能】
15歳男性 ADHD、アスペルガー症候群合併
21歳男性 アスペルガー症候群、不安障害合併
22歳女性 アスペルガー症候群、うつ合併
8歳女性 学習障害、ADHD合併
技術の進歩により、治療前と治療後のQEEGの変化を客観的に評価することも可能になりました。
QEEG検査で脳の状態を可視化し、結果に応じて、薬を使わない治療など個人に合った治療を提案します。