ビジネスイップスとは?症状、なりやすい人を解説

ビジネスイップスとは?症状、なりやすい人を解説

スポーツ界で知られるようになったイップスですが、精神的・心理的な原因でこれまでできていたことができなくなるという症状は、仕事においてもあり得る話です。

今回は、仕事におけるイップスである「ビジネスイップス」について解説します。

ビジネスイップスとは

ビジネスイップスは、仕事においてこれまでできていたことが心理的な原因でできなくなることを指します。医学用語ではありません。

ゴルフや野球などでよく見られるイップスは、パッティングや塁間の送球など、これまでは簡単にできていたことが急に困難になり、場合によってはプロ選手が現役を引退してしまうこともあるような症状です。

イップスについて

ビジネスにおけるイップスは、重要な決断を下すべき立場にある経営者、マネージャーなどによく見られます。

ビジネスイップスの症状

ビジネスイップスの症状は、経営者・マネージャーに見られる症状と、メンバークラスの社員に見られる症状があります。

具体的には以下のような例があります。

経営者・マネージャー

  • 大きな判断ミスをしてから、決断を下すことができなくなった
  • 裏切りに遭ってから、慣れた人と話すときに声が出にくくなった
  • 事業に対する意欲が湧かなくなった

メンバークラス

  • 言葉はスラスラ出てくるのに、メールの文面がまとまらなくなった
  • プレゼンや上司の前で話すときだけうまく話せなくなった
  • 電話の応対がだんだんできなくなっていく
  • 書類にサインするとき、字が思うように書けない

こういった症状は、一見すると心が弱い、踏ん張りが足りないという言葉で片付けられてしまうことがありますが、普段は問題なく話せるのに特定の場面になると突然声が出なくなるというのは一種の障害とも言えます。

特定の状況で話すことができない症状が明らかに重い場合、場面緘黙症の可能性もあります。この場合は背景に発達障害がある可能性も含め、言語聴覚士などを交えて専門的な治療を行う必要があります。

場面緘黙(選択性緘黙)について

また、イップスは医学的な用語ではないため、病院の診断では局所性ジストニアや職業性ジストニアと診断されることがあります。その他、声が出にくい場合は痙性発声障害、文字が書けない場合は痙性書痙という診断が下されることがあります。

いずれにしても、闇雲に頑張れば改善するものではありません。また、上記のようにこれまでできていたことができなくなる状態が続くと、自己肯定感を低下させ、うつ病や不安障害などの本格的な精神疾患につながることもあります。

ビジネスイップスになりやすい人

ビジネスイップスになりやすいのは、真面目で責任感が強く、優しい人です。また、完璧主義の人もイップスになりやすいとされています。

ビジネスをするにあたり、真面目で責任感が強いことはいいことです。しかし、それが原因で自分を責めてしまったり、何もできない人間だと思い込んでしまうことはビジネスイップスに繋がります。

また、周囲のことを気にしすぎてしまう人もビジネスイップスになりやすいです。周囲からどう見られているかを意識することは重要ですが、失敗したくないという思いが強くなりすぎて、思うように行動できなくなることがあります。

いずれも人間性が悪いというわけではありません。それぞれの個性として大事にすべきですが、そういった自分がいることを受け止め、折り合いをつけられるようにする必要があります。

ビジネスイップスの対処法

ビジネスイップスになってしまった場合、いくつかやるべきことがあります。

職場の人に打ち明ける

難しいかもしれませんが、職場の上司や同僚には打ち明けるようにしましょう。自分がいま決断に不安を感じていること、なぜか特定の業務がうまくできないことを伝えておくことで、周囲のサポートが得やすくなります。

周囲に伝えずに仕事をしていると、周囲はなぜできないのかを全く理解できません。結果的に評価が下がっていき、さらに自信を失うことにつながってしまいます。

メリハリをつけて休む

ビジネスイップスになると、仕事の効率も落ちてしまうため、休むことすら怖くなってしまう場合があります。仕事のことを考えすぎてしまうと、苦手なことにばかり意識が集中してしまい、心が休まりません。そのまま仕事を続けていても自律神経の不調に繋がることがあるため、気分転換も兼ねて休みをとるようにしましょう。

ビジネスイップスの治療

ビジネスイップスに限らず、イップスは医学的根拠がないため、これをすれば必ず治るという治療はありません。しかし、しかし、イップスと症状が類似しているジストニアに対しては、薬物療法や精神療法、そしてTMS治療(磁気刺激治療)が有効であるとされています。

TMS治療(磁気刺激治療)

TMS治療は頭部に特殊なコイルを当て、脳に磁気刺激を与えて脳神経のネットワークのバランスを改善し、正常な活動に戻す治療法です。

イップスの原因とされているジストニアに対して、TMS治療の有効性が報告されています。

下図では、TMSによる刺激を与えた場合(黒いグラフ)にジストニアの重症度が改善されていることがわかります。

TMSによるジストニア改善を示すグラフ
TMS治療によるジストニア改善を示すグラフ

※TWSTRS:トロントウエスタンけいれん評価尺度。重症度,機能障害度および疼痛度を評価する

※CDQ-24:頭頸部ジストニア質問票。スコアが高いほど、障害の重症度または生活の質が悪いことを示す

(出典:Cerebellar Intermittent Theta-Burst Stimulation and Motor Control Training in Individuals with Cervical Dystonia

また、TMS治療は薬物療法と比べて副作用の心配もほとんどありません。

TMS治療はアメリカを始めとする欧米では普及が進んでいます。日本ではまだ一部の医療機関でしかTMS治療を受けることはできませんが、当院では治療が可能です。

TMS治療について詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。

まとめ

ビジネスイップスは、経営者やマネージャークラスに多く見られる症状です。当院にも経営者やマネージャークラスの方がストレスを軽減するために治療に来られるケースがあります。仕事ができる人だからこそ陥りやすい症状ですので、無理をせずに早めに対処をして、精神疾患にならないようにしていきましょう。

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医師の主観ではなく、大規模脳波データベースと比較し、客観的なデータで症状の程度を診断
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15歳男性 ADHD、アスペルガー症候群合併

21歳男性 アスペルガー症候群、不安障害合併

22歳女性 アスペルガー症候群、うつ合併

8歳女性 学習障害、ADHD合併

技術の進歩により、治療前と治療後のQEEGの変化を客観的に評価することも可能になりました。
QEEG検査で脳の状態を可視化し、結果に応じて、薬を使わない治療など個人に合った治療を提案します。


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