イップスとは?スポーツにおける症状、原因、治療法を解説

イップスとは?スポーツにおける症状、原因、治療法を解説

野球やゴルフをしている方なら、イップスという症状を聞いたことがあると思います。思うようにボールが投げられなかったり、短いパターを外してしまったりという、それまで問題なくできていたことが心理的な影響でできなくなることを指します。

今回は、イップスの症状や原因、そして治療法について解説します。

イップスとは

野球やゴルフなどの競技者の間では広く知られているイップスは、心理的な理由で思うように身体が動かず、動作に支障が出る運動障害です。

イップスの起源

イップスという用語が最初に使われたのは1967年のことでした。1930年代に活躍したプロゴルファーのトミー・アーマーの著書『ABCゴルフ』の中で、今まで問題なくパッティングをしていたゴルファーがある日突然パットが入らなくなり、しかもそれがカップのはるか手前で止まったり、反対にカップをはるかにオーバーするものしか打てなくなってしまう症状にイップスと命名したのが始まりです。

イップスとは、英語ではyipsと書き、「うわっ!」とか「きゃあ!」といった意味の感嘆詞です。

イップスと名付けられる前から、ゴルファーの間では症状自体は認識されており、ショートパッド恐怖症などと呼ばれていました。

現代のイップス

現在では、ゴルフに限らず、野球、テニス、クリケット、ダーツなど、あらゆるスポーツ競技において同様の症状が確認されており、競技者を長く苦しめる非常に厄介な運動障害として認識されています。

最近では、イチロー選手がテレビ番組のインタビューで高校時代にイップスを発症し、プロ野球選手になっても数年間苦しんでいたことを告白していました。このように、競技者であればトッププロの選手でさえも発症する可能性があります。

スポーツの世界ではイップスの症状は長年理解されてきませんでしたが、昨今はその症状が競技者、指導者の間でも理解されるようになってきています。気合が足りない、気持ちが弱いという精神論から、症状を改善するために何ができるかを検討する指導者が増えてきており、以前よりはイップスの苦しみを1人で抱えることは少なくなってきているように思います。

イップスの有病率

イップスの有病率について正確なデータはありませんが、海外の報告ではゴルフ競技者のうち25~50%の人にイップスの症状が見られるという報告があります。

また、大阪大学が行ったアンケート調査によると、36%のゴルフ競技者がイップスを経験していることが報告されています。

さらに、他のスポーツにもイップスは見られるため、実際にイップスに悩んでいる方は非常に多いと推測されます。

イップスの症状

イップスは多くのスポーツで見られます。まず、以下のキャッチボールの動画をご覧ください。

このように、簡単に投げれそうな距離でも、腕が引っかかってしまいスムーズな投球動作ができなくなっています。

いくつかのスポーツのイップスの症例を見ていきましょう。

野球

野球では主に投手、捕手、内野手に多く見られます。また、状況によっては外野手にも見られます。具体的な症状は以下です。

【投手】

  • ストライクが入らない、暴投癖がある
  • 捕球後、一塁にうまく投げられず、走って近づいてトスで処理する
  • 牽制が暴投になってしまう
  • 敬遠のように緩いボールが投げられない

【捕手】

  • 投手への返球が暴投になる
  • 二塁への送球が暴投になる
  • バント処理で暴投してしまう

【内野手】

  • 簡単なゴロの処理でも悪送球をしてしまう
  • 近い距離でうまく投げられない

【外野手】

  • 中継への送球が暴投になる
  • センターからセカンドベースのような近い距離でコントロールが定まらない
  • フライを捕球したあと、急いでいないのに内野への送球が暴投になる

投手に見られる制球難は、メジャーリーグで活躍していたものの突如の制球難で引退を余儀なくされたスティーブ・ブラスにちなみ、『スティーブ・ブラス病』と呼ぶこともあります。

ゴルフ

ゴルフにおいては、パターで症状が見られる方が多いですが、ティショットやアプローチでもイップスに悩む方が多いようです。具体的な症状は以下です。

  • 1メートルのショートパットで50センチショートしたり、2メートルオーバーする
  • ティーショットで構えてから打つまで非常に長い時間がかかる
  • スイングの途中で止まってしまう
  • 練習場ではうまく打てるのに、コースに立つと練習通りに体が動かない

ゴルフの場合は接待などで取引先や上司、部下と一緒にコースをまわることも多く、プレッシャーのかかる中でプレーをすることが原因になっていたり、その一打がスコアに直結するという競技の特性もあってイップスになってしまう方は多いようです。

サッカー

サッカーでは、以下のような症状があります。

  • シュートが枠に飛ばない
  • シュートチャンスと分かっていても足が動かない
  • PKが蹴れない
  • トラップが全くできなくなる
  • パスが思ったところに出せない
  • ドリブルをするのが怖く、焦ってパスを出してしまう
  • パントキックが定まらない

サッカーも1点の重みが大きいスポーツで、大事な場面でシュートを外した経験から身体が動かなくなったりする方が多いようです。

バスケットボール

バスケットボールでは、確実に点を取れると思われている場面でのイップスがあるようです。

  • フリースローがぎこちない
  • レイアップが決まらない

NBAの選手でも、こうした症状に悩まされている方は多いようです。

テニス

  • サーブが思うように打てない
  • 素振りはスムーズにできるが、実際にフォアハンドで打とうとすると手首や前腕部が固まって思い通りに打てない
  • バックハンドはできるが、フォアハンドだけが思い通りに打てない
  • テイクバック時にラケットがどこにあるか感覚がない

動作の中でも身体的に自由度が高いケースで見られるようです。バックハンドはどう打つか考える余地が少なく、制限が多いためにあまりイップスになる方はいないようです。

卓球

卓球もテニスと同じく、身体的に自由度の高いフォアハンドで症状が多いようです。

  • フォアハンドの際、オーバーしてしまう、または短くなってしまう
  • フォア打ちの際、肩から手首にかけて固まったような感覚になって打てない
  • フォア打ちの際、手に力が入らなくなる

ダーツ

ダーツもイップスになる人が多い競技です。ダーツのイップス症状を『ダータイティス』と呼ぶこともあります。

  • テイクバックした腕が硬直し、投げられない
  • ダーツを握ってしまい、離せなくなる
  • 投げる前にダーツをポロポロ落としてしまう

ボウリング

プロボウラーの間でも、イップスの症状は存在するようです。

  • 助走の足がうまく出ず、何回も投げ直しをする
  • 手からボールが離れない

アーチェリー・弓道

アーチェリーや弓道でもイップスは存在します。大きく3種類の症状があるようです。

ターゲットパニック』と呼ぶこともあるようです。

  • 射るタイミングでないのに射ってしまう(早気、スナップリリース
  • 早気の状態から慌ててとどまりビクッとする(びく、フリンチング
  • 矢を引ききった状態から矢を離そうとしても離れない(もたれ、フリージング

早気という症状が最も問題になることが多く、悩んている方も多いようです。

イップスの原因

スポーツの世界ではイップスという名称が広く知られるようになってきましたが、医学的にはジストニアという症状に分類されています。

ジストニアとは

ジストニアは、筋肉や骨に異常がないにも関わらず、全身あるいは身体の一部がねじれたり、震えたりして思い通りに動かない症状を指します。

遺伝子異常など先天的な原因のこともありますが、同じ動作を繰り返すスポーツ選手、楽器奏者なども発症します。そのため、「職業性ジストニア(動作特異性ジストニア)」と呼ばれます。

この職業性ジストニアがいわゆるイップスとほぼ同義の意味で使われています。

職業性ジストニアの代表例は、書痙や奏楽手痙、歌手やアナウンサーの発声障害などが挙げられます。しかし、これらの症状についても十分な研究があるとは言えず、いまだ発展途上の分野となっています。

ジストニアの原因

ジストニアの原因は脳の中枢神経系にあるとされています。大脳皮質や大脳基底核、視床、小脳などを含む運動制御システムの異常と考えられています。

いまだその発症機序の詳細は明らかになっていませんが、脳機能の調整をすることによって症状を改善することができるとされています。

心理的要因も大きい

イップスはこれまで精神的な問題であると言われてきましたが、医学的な根拠はありません。しかし、発症に至るにはほとんどの場合で何らかの精神的ショックが関係しています。具体的には以下のようなショックが考えられます。

  • 先輩に死球を当て、怪我をさせてしまった
  • 大事な試合でシュートを外し、責められた
  • 勝負の決まる場面でパットを外してしまった

こうしたショックが原因で、同様の場面での不安や恐怖が大きくなり、結果的に身体が動かなくなるのです。

イップスの治療

イップスは医学的根拠がないため、これをすれば必ず治るという治療はありません。しかし、イップスと症状が類似しているジストニアに対しては、薬物療法や精神療法、そしてTMS治療(磁気刺激治療)が有効であるとされています。

薬物療法

薬物療法では、ボツリヌス毒素を不活化した局所注射や、抗不安薬を使用することがあります。しかし、これらの治療薬は競技者にとってドーピングとなる可能性も高いため、あまりおすすめはできません。また、ボツリヌス毒素に対する抗体が生成され、注射量を増やしていかなければいけない人もいます。

精神療法

身体に過緊張が見られたり、特定の状況への不安や恐怖が見られる場合は、リラクゼーションを目的としてメンタルトレーニングなどを行うことがあります。

TMS治療(磁気刺激治療)

TMS治療は頭部に特殊なコイルを当て、脳に磁気刺激を与えて脳神経のネットワークのバランスを改善し、正常な活動に戻す治療法です。

イップスの原因とされているジストニアに対して、TMS治療の有効性が報告されています。

下図では、TMSによる刺激を与えた場合(黒いグラフ)にジストニアの重症度が改善されていることがわかります。

TMSによるジストニア改善を示すグラフ
TMS治療によるジストニア改善を示すグラフ

※TWSTRS:トロントウエスタンけいれん評価尺度。重症度,機能障害度および疼痛度を評価する

※CDQ-24:頭頸部ジストニア質問票。スコアが高いほど、障害の重症度または生活の質が悪いことを示す

(出典:Cerebellar Intermittent Theta-Burst Stimulation and Motor Control Training in Individuals with Cervical Dystonia

また、TMS治療は薬物療法と比べて副作用の心配もほとんどありません。

TMS治療はアメリカを始めとする欧米では普及が進んでいます。日本ではまだ一部の医療機関でしかTMS治療を受けることはできませんが、当院では治療が可能です。

TMS治療について詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてください。

まとめ

イップスは競技者にとって、思うようにプレーができないもどかしさや、チームメイトに迷惑をかけてしまうという申し訳ない気持ちを感じさせます。

イップスは多くの方が悩んでいる問題です。まずは周囲に相談することからはじめ、リラックスしてプレーのできる環境を作っていきましょう。

それでも改善しない場合は、当院でも実施しているTMS治療をおすすめいたします。

実際に治療効果が見られた人もいますので、まずは気軽にご相談ください。

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15歳男性 ADHD、アスペルガー症候群合併

21歳男性 アスペルガー症候群、不安障害合併

22歳女性 アスペルガー症候群、うつ合併

8歳女性 学習障害、ADHD合併

技術の進歩により、治療前と治療後のQEEGの変化を客観的に評価することも可能になりました。
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