全般性不安障害とは?症状、特徴、診断、治療、対処、接し方について【医師が分かりやすく解説】

全般性不安障害とは?

全般性不安障害とは、時間、予定のずれ、仕事、学校、家族、健康などに対して、自分で不安の感情をコントロールできない状態、過剰に心配をし、普段の活動に支障をきたす状態を全般性不安障害といいます。  全般性不安障害は、不安や心配のコントロールにトラブルが生じて、日常生活に支障が出るほどの状態であり、一般的な「心配性」とは区別されています。
  • ・自分の身の回りの様々な出来事に対して過剰に苦痛を感じ、長続きする傾向がある。
  • ・不安や心配の感情が関係なくいきなり生じる。
  • ・不安や心配の感情が体調不良になって現れる。
  • 以上の症状を感じ、長期化している場合、全般性不安障害を発症している可能性があります。

    全般性不安障害の主な症状

    全般性不安障害に共通して現れる症状

  • ・過剰な不安と心配をする日が、しない日よりも多い状態が少なくとも6ヶ月以上続く。
  • ・自分自身で心配を抑制することを、むずかしいと感じる。
  • 全般性不安障害でも個人差がある症状

    不安と心配の感情と共に、このような症状が現れます。
  • ・落ち着きがない、緊張感、神経の高ぶり
  • ・疲れやすい
  • ・集中できない、心がからっぽに感じる
  • ・挑発されたと感じると、すぐにキレやすくなってしまう
  • ・筋肉が震えたり、筋肉痛になったり、収縮感を感じたりするなどして緊張する
  • ・寝付きが悪く、途中で起きてしまうなどの睡眠障害
  • ・発汗、吐き気、下痢などの体調不良
  • ・突発的に起こった出来事に対し、顔面蒼白、冷や汗、動機、不眠、脱力感などの精神的、身体的反応
  • 全般性不安障害を発症しやすい人の特徴

    全般性不安障害は、生活上の全てに対して不安を感じ、その不安が長期化していくことにより発症します。そのため、時間の経過によって不安の出現が定期的になる可能性が増え、30歳前後での発症する人が多いです。
    そして、年齢を重ねていくと症状は比較的緩和していくと言われています。
    また、女性の方が男性より2倍発症しやすいといわれております。
    加えて、以下の性格をもつ人は全般性不安障害を発症しやすいといわれております。
  • ・周囲の環境を敏感に感じとってしまう
  • ・コンプレックスを抱えており、自信がない
  • ・完璧主義者、完璧以外に極端な不満を持つ
  • ・過度の保障を必要とする
  • しかし、これらの特徴がある人が必ず発症するとはいえません。

    全般性不安障害はの経過は

    全般性不安障害の症状は、生涯を通じ慢性化し、良くなったり、悪くなったりを繰り返します。
    また、心配したり、不安になったりする対象は、年齢や自身の置かれている環境などによってその都度変化します。
    子どもは特に、学業や友人関係、スポーツなどにおいて、自分は優秀なのかどうかと、過剰に心配する傾向があります。
    大人は、仕事への責任の重大さ、自身・家族の健康、家計、身の周りの人たちに起こりうる災難、日常的におこるささいな時間・予定のずれなど定期的に心配します。

    全般性不安障害の原因

    原因として、性格、環境的要因、生物学的要因の3つがあります。
    性格からくる要因として、我慢強い性格、ネガティヴ思考、リスクをとらない性格などがあります。
    我慢強い性格が全般性不安障害の原因になってしまうのは、我慢という行動は、他人に嫌われるのが怖いなどといった不安や心配する感情があるからです。
    また、ネガティヴ思考が原因になってしまうのは、常にネガティヴな気持ちから不安や心配の感情が多いからです。
    そして、リスクを取らない性格が原因になってしまうのは、常にリスクに伴う不安や心配があり、行動することによって危険にあう可能性をネガティヴに捉えてしまう傾向があるからです。 環境的要因として、子どもの頃の逆境や親の過保護を受けた経験が当てはまります。しかし、これらは十分な根拠があるわけではありません。 生物学的要因として、脳内の神経伝達物質であるセロトニンが関与している場合があるという説で、遺伝性が認められています。 よって全般性不安障害は遺伝的要因により発症する場合もあると考えられています。 しかし、全般性不安障害の原因については、まだ究明できていない部分も多いため、更なる研究が必要です。

    全般性不安障害と併存しやすい症状

    全般性不安障害と併存しやすい症状として、不安分離障害、広場恐怖症、パニック障害などの他の不安症や、うつ(大うつ病)が挙げられます。
    上記の症状が併存症と診断されていない場合でも、過去から現在にかけて発症している場合が多くあります。
    また、感じている不安や心配を打ち消すためにアルコールを継続的に摂取し、アルコール依存症になるケースも多いと言われております。

    全般性不安障害の診断基準

    アメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神障害のための診断と統計のマニュアル』第5版)によれば、全般不安症/全般性不安障害として以下の診断基準があります。
    日本精神神経学会/監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』より引用
    A.(仕事や学業などの)多数の出来事または活動について過剰な不安と心配(予期憂慮)が起こる日のほうが起こらない日より多い状態が少なくとも6ヶ月間にわたる。
    B.その人は、その心配を抑制することが難しいと感じている。
    C.その不安および心配は、以下の6つの症状のうち3つ(またはそれ以上)を伴っている(過去6ヶ月間、少なくとも数個の症状が、起こる日のほうが起こらない日より多い)。注:子どもの場合は1項目だけが必要。
  • ⅰ落ち着きのなさ、緊張感、または神経の高ぶり
  • ⅱ疲労しやすいこと
  • ⅲ集中困難、または心が空白になること
  • ⅳ易怒性
  • Ⅴ筋肉の緊張
  • Ⅵ睡眠障害(入眠または睡眠維持の困難、または落ち着かず、熟眠感のない睡眠)
  • D.その不安、心配、または身体症状が、臨床的に意味のある苦痛、または、社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
    E.その障害は、物質(例:乱用薬物、医薬品)または他の医学的疾患(例:甲状腺機能亢進症)の生理学的作用によるものではない。
    F.その障害は、他の精神疾患ではうまく説明できない
    例:パニック障害におけるパニック発作が起こることの不安又は心配、社交不安症における否定的評価、強迫症における汚染、または他の強迫観念、分離不安症における愛着の対象からの分離、心的外傷後ストレス障害における身体的訴え、醜形恐怖症における想像上の外見上の欠点の知覚、病気不安症における深刻な病気をもつこと、または、統合失調症または妄想性障害における妄想的信念の内容、に関する不安または心配
    診断基準:DSM-5 A.(仕事や学業などの)多数の出来事または活動についての過剰な不安と心配(予期憂慮)が、起こる日のほうが起こらない日より多い状態が、少なくとも6ヵ月間にわたる。 B.その人は、その不安を抑制することが難しいと感じている。 C.その不安および心配は、以下の6つの症状のうち3つ(またはそれ以上)を伴っている(過去6ヵ月間、少なくとも数個の症状が、起こる日のほうが起こらない日より多い) 注:子どもの場合は1項目だけが必要 落ち着きのなさ、緊張感、または神経の高ぶり 疲労しやすいこと 集中困難、または心が空白となること 易怒性 筋肉の緊張 睡眠障害(入眠または睡眠維持の困難、または、落ち着かず熟眠感のない睡眠) D.その不安、心配、または身体症状が、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。 E.その障害は、物質(例:乱用薬物、医薬品)または他の医学的疾患(例:甲状腺機能亢進症)の生理学的作用によるものではない。 F.その障害は他の精神疾患ではうまく説明されない[例:パニック症におけるパニック発作が起こることの不安または心配、社交不安症(社交恐怖)における否定的評価、強迫症における汚染または、他の強迫観念、分離不安症における愛着の対象からの分離、心的外傷後ストレス障害における外傷的出来事を思い出させるもの、神経性やせ症における体重が増加すること、身体症状における身体的訴え、醜形恐怖症における想像上の外見上の欠点や知覚、病気不安症における深刻な病気をもつこと、または、統合失調症または妄想性障害における妄想的信念の内容、に関する不安または心配] ※参考文献 『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院) 『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

    全般性不安障害の治療法

    全般性不安障害の治療法には主に薬物療法とTMS治療などがあります。

    薬物療法

    即効性があるといわれている抗不安薬を用います。代表的なのはベンゾジアゼピン誘導体、セロトニン5-HT1A受容体作動薬であるタンドスピロンなどです。
    ベンゾジアゼピンは不安や緊張を和らげてくれる効果があります、ですが連用すると依存しやすいといわれており、アルコールとの併用は厳禁です。
    セロトニン5-HT1A受容体作動薬であるタンドスピロンの効果の発現には時間がかかり、2~4週間程度が必要とされます。
    代表的な抗不安薬であるベンゾジアゼピン系薬剤と比較して筋弛緩作用や依存性などの有害事象が少なく、高齢者に使いやすいですが、吐き気・下痢・頭痛・めまいなどの副作用があります。
    また、連鎖的に表れる不安には抗うつ薬を用います。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)や、5-HT1A受容体部分作動薬などです。
    全般性不安障害は精神を安定させる脳内伝達物質、セロトニンの調節の問題が大きく関わっています。そのため、セロトニンに直接作用する抗不安薬には効果があるといわれているのです。
    薬には副作用もあり、効果の見られない人もいます。
    低年齢の子どもの場合、薬の投与はより慎重に判断すべきです。

    TMS療法

    2017年にカナダのクィーンズ大学で全般性不安障害に対して、TMS治療(磁気刺激治療)の二重盲検比較試験(double-blind sham controlled clinical trial)が行われました。
    全般性不安障害 TMS治療(磁気刺激治療)
    臨床の評価項目はハミルトン不安評価尺度(HAM-A)を用いて行われ、安に伴う精神症状や自律神経症状,不眠,認知障害,抑うつ気分などが含まれます。
    右のDLPFCを高頻度で刺激しています。
    TMS治療を終えた2-4週間後に、さらにハミルトン不安評価尺度(HAM-A)のスコアが良くなっていることが報告されています。
    薬を飲むのをやめると不安の症状がまた出てしまうのと比較すると対照的です。
    Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 2017 Aug 1;78:61-65.
    2018年のマサチューセッツ総合病院の報告では、全般性不安障害の不安と不眠の両方の症状に対して効果があったと言われています。
    全般性不安障害 TMS治療(磁気刺激治療)
    特に不眠の改善が顕著であったようです。

    精神療法

    全般性不安障害に有効な精神療法として代表的なのは以下の2通りです。

    認知行動療法

    認知行動療法は、自分がどのタイミングで不安、心配を感じているのか、客観的に観察し、自動思考(瞬時に浮かぶ認知)のクセを把握します。そして、いざ状況に直面した際には、どのように考え、対処すればよいかを考え、思考をコントロールしていく治療法です。

    森田療法

    1919年に森田正馬によって考案された精神療法です。森田療法は全般性不安障害の治療として、1920頃に確立された古い方法です。
    不安や恐怖という感情を無理に排除せず、不安や恐怖はふがいないなどの囚われから脱し、あるがままの心の状態を受け入れることが最終目標となります。
    そこで、自分のあるがままの不安や恐怖を受け入れ、自分の中の健康や豊かな感情に気づくことができるとされております。

    全般性不安障害の対処方法

    全般性不安障害に対して、日常生活でできること、それは生活習慣を整えることです。
    生活習慣が乱れた日が続くと、普段よりネガティブであったり、イライラしやすいなど精神状態が不安定になるからです。
    そのため、以下の生活習慣を意識して整えていきましょう。
  • ・十分な睡眠をとる
  • ・バランスのとれた食事をとる 
  • ・適度な運動をする
  • ・アルコールの摂取を控える
  • また、生活習慣を整えるほかにも有効な対処法があります。
  • ・環境を整えるための人間関係の調整
  • ・自分でできるリラックスの確立
  • 全般性不安障害の人との接し方

    全般性不安障害の人は、自分の抱えている不安や心配などを、周囲の人に相談、訴えることが多いです。
    その際、不安や心配に伴い、心も身体にも不調が長く続いていることを理解してあげることが大切です。
    具体的な接し方を以下に挙げます。
  • ・気持ちの問題、性格だと決めつけない。
  • ・否定的なことを言わない、できないことがあっても責めない。
  • ・不安を訴えているときは、アドバイスをするより、まずはどんな時も側にいてあげるという意思表示をする。
  • ・辛い時は休める環境を整え、安心感を与える。
  • ・本人が意識を変えようと努力しているときには褒め、賛同してあげる。
  • これらを意識して温かい気持ちで支えてあげることが大事となります。

    まとめ

    全般性不安障害は、多数の出来事や活動に対し過剰な不安、心配をする症状を発症し、同時に体調不良も現れる疾患です。しかし、 不安の感情は全ての人がもつ感情であり、疾患であるかどうかを自己判断するのは難しいです。
    また、慢性化することで治りにくいため、早期から治療することが大切です。そこで、周囲の人もただの心配しすぎだとは思わず、優しく見守り、場合によっては医療機関に相談するよう勧めてあげてください。