適応障害とうつ病との違いについて

適応障害とうつ病との違いについて

適応障害は、特定の状況や出来事が耐え難いほど辛く感じられ、気分や行動に症状が出るものです。よく言われる五月病などはこの適応障害に該当します。

今回は、適応障害の概要、症状、診断、治療について精神科医が紹介します。また、多くの人が疑問に思っているうつ病との違いについても解説します。

適応障害とは

WHO(世界保健機構)の診断ガイドラインであるICD-10によると、適応障害は以下のように定義されています。

ストレス因により引き起こされる情緒面や行動面の症状で、社会的機能が著しく障害されている状態

ストレスを感じる状態は人それぞれです。ストレスを感じた出来事や状況に関わらず、その人にとって重大で、日常生活に支障をきたすレベルで抑うつ気分、不安や心配が強くなってしまい、明らかに正常とは言えない状態である場合は適応障害と言えます。

適応障害の人口比率は、日本では正確な調査をされてはいませんが、ヨーロッパでの報告によると一般的には人口の1%と言われています。

適応障害の症状

適応障害の症状は、ストレスのかかる環境、本人の性格によって異なります。

大きく分けると以下の4つの特徴がありますが、ここからさらに個人差があります。

過度な不安症状

過度な不安を感じてしまい、その恐怖心によって動悸や息切れ、手の震えなどが頻繁に起こるという特徴が現れます。

うつ症状

すべてのことを悲観的に捉えてしまったり、理由もなく憂鬱な気分になったり、喪失感に襲われたりといった症状が現れます。また、ほんの些細なことでも涙が止まらないといったこともあります。

異常行動

無断欠勤、過剰飲酒、無謀な運転、喧嘩など、年齢や社会的な身分を考えたときに絶対にやらないようなことをしてしまいます。

子どもの場合は「赤ちゃん返り」という行動を取ることがあり、例えば指をしゃぶったり赤ちゃん言葉を使って甘えてきたりという行動が見られることがあります。

体調不良

学校や会社に行こうとすると頭痛や腹痛に悩まされたり、腰痛が起こったりします。

適応障害の診断

DSM-5では、適応障害の診断基準について以下のように定義されています。

A.はっきりと確認できるストレス因に反応して、そのストレス因の始まりから3ヶ月以内に情動面または行動面の症状が出現

B.これらの症状や行動は臨床的に意味のあるもので、それは以下のうち1つまたは両方の証拠がある

  1. 症状の重症度や表現型に影響を与えうる外的文脈や文化的要因を考慮に入れても、そのストレス因に不釣り合いな程度や強度をもつ著しい苦痛
  2. 社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の重大な障害

C.そのストレス関連障害は他の精神疾患の基準を満たしていないし、すでに存在している精神疾患の単なる悪化でもない

D.その症状は正常の死別反応を示すものではない

E.そのストレス因、またはその結果がひとたび終結すると、症状がその後さらに6ヶ月以上持続することはない

(出典:DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引

ストレス症状が正常な範囲を超えているというのは、例えば普段ほとんどお酒を飲まない人が一日に缶ビールを10本空けて、次の日会社に遅刻してしまうなど、その人にとって予想できないような状態まで症状が進行している場合を指します。

また、他の精神障害がある場合はそちらの診断が優先されます。うつ病の診断基準と適応障害の診断基準を満たす場合は、うつ病の診断が優先されます。

適応障害とうつ病の違い

適応障害とうつ病は、現れる症状が似ているために同じものだと考えている人もいるかも知れません。しかし、明確な違いがあります。

まず適応障害ですが、上述したような不安感、憂うつな気分、身体症状などはストレスに直面しているときにだけ出現します。原因となるストレスから離れているときは症状が出ずに安定しているという特徴があります。

仕事に行く前には頭痛や腹痛に苦しみ、憂うつな気分にもなりますが、休みの日にどこかに出かけるのは普通に楽しむことができる場合が多いです。

これに対してうつ病の場合は1日中気分が落ち込んでおり、何をしていても楽しくないという状態が長く続きます。

症状自体は似ていますが、概ね以下のような違いがあると言えます。

行動面の違い

適応障害では抑うつ状態の不安や焦りなどから、突然大きな声を出したり泣き出したりという気分のむらが見られることが多いです。また、アルコールへの依存、嘘をつくなどの特徴も見られることがあります。こういった特徴はうつ病にはあまり見られません。

また、適応障害の場合は自分の行動に罪悪感を持たないことが多いです。典型的なうつ病の場合は自分を責めてしまうため、ここも違いがあります。

ストレスの対象から離れたとき

ストレスの対象から離れたときに抑うつ状態が続くかどうか、というのが適応障害とうつ病の大きな違いです。

適応障害の場合は自分が辛いと感じる特定の状況や環境から離れると症状が和らぎ、趣味を楽しんだりすることができるようになります。一方でうつ病の場合はストレスの原因から離れても抑うつ状態が続きます。

適応障害からうつ病に移行するケースは多い

適応障害とうつ病は症状が似ているという話をしましたが、適応障害からうつ病へと移行してしまう人も多くいます。また、適応障害だと診断を受けても、経過観察をするうちにうつ病だと再診断されるケースもあります。

適応障害の診断を受けた人のうち、5年後には40%以上の人がうつ病などの診断名に変更されているというデータもあります。適応障害はその後の治りにくい病気に移行してしまう前段階という可能性もあるため、症状が出ている場合はなるべく早く医療機関を受診したほうが良いでしょう。

適応障害の治療

適応障害の治療についてですが、まず最初に必要になるのがストレスの除去のための環境調整です。その後、本人がストレスに対して強くなるような心理療法、そして、対症療法として薬物療法も検討します。

また、近年ではTMS治療(磁気刺激治療)という選択肢もあります。それぞれ見ていきましょう。

環境調整

まずはストレスの原因を除去するために環境調整を行います。もちろんできる範囲でということにはなりますが、例えば仕事を休職してみる、学校を少し休んでみるなどです。その後、職場であれば配置転換をするなどの対処をすることで、ストレスから離れることができるため、症状も改善されます。

しかし、ストレスの原因が家族にある場合などは離れることができません。こういった場合は環境調整だけでの改善は難しいため、別の治療も必要になります。

心理療法

ストレスを感じてしまうパターンをカウンセリングなどを通して知り、このパターンを改善していくことでストレスを軽減する方法です。認知行動療法といい、多くの精神疾患でも取り入れられてる治療法です。

また、ストレスがある状態を認め、その状態に対して建設的な行動に打ち込むように導く森田療法という選択肢もあります。

森田療法について

薬物療法

情緒面、行動面での症状に対しては、薬物療法を取り入れることもあります。

うつ状態の緩和のために抗うつ薬、不安症状、不眠症状の緩和のためにベンゾジアゼピン系の薬を使用し、他の治療に取り組みやすい状況を作ります。

薬物療法は対症療法であり、適応障害の根本的な治療ではありません。そのため、薬を飲んで治るものではないため、環境調整やカウンセリングは重要になります。

TMS治療(磁気刺激療法)

TMS治療は欧米で普及が進んでいる治療法で、磁気刺激で脳の特定部位を活性化させることで脳血流を増加させ、低下した機能を元に戻していきます。

副作用が少なく安全性が高いのが特徴です。また、治療期間も6週間程度と短く、これまで薬物療法で効果が見られなかった人にも効果が見られることがあります。1回あたりの治療時間は20分程度です。

日本ではまだ導入している医療機関が少ないですが、当院ではTMS治療が可能です。

下記の記事も参照いただきつつ、ご興味があればお問い合わせください。

家族や周囲のサポート

適応障害は周囲の人間のサポートが重要です。こころの病気だからと放っておくことはせず、いつでも相談に乗るよという姿勢を見せてあげてください。

そのうえで、本人が主体的にストレスに向き合って解消できるように調整したり、支援してあげることが大切です。

注意点としては、本人の適応力を過小評価してはいけません。過剰に同情したり、配慮をしたりすることは本人の現実逃避を助長することがあります。あくまでも本人が主体となってストレスに対処していけるように、適切な距離感でサポートをするようにしましょう。

まとめ

適応障害はストレスからくる心身の不調が特徴です。適切な治療をしていかないと、うつ病などの治療に時間がかかる大きな病気に繋がりかねません。適応障害を疑った場合は早期に医療機関を受診して治療を進めるようにしましょう。

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