自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)に合併することのあるサヴァン症候群とは?
坂 副院長坂 副院長

サヴァン症候群とは、知的障害や発達障害を持っており、加えて特異な才能も持っていることを言います。

サヴァン症候群とは

自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)などの症状を持ちながらも、一方で突出した「才能の小島(island of talent)」を持つ患者を、「サヴァン症候群(savant syndrome)」と呼びます。
最近の研究では、Hawlinの報告によると、自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の子供の4人に1人はサバンと言われています。
そう考えるとサバンは症候群とても身近な存在です。 サヴァン症候群の才能は、音楽、絵画、彫刻、計算、記憶など多岐に及びます。
例えば、映画「レインマン」に登場するレイモンド・バビットのモデルとなったキム・ピークは、脳梁欠損などの深刻な中枢神経系の異常が存在するにもかかわらず、過去に読んだ約9,000冊の書物の内容を正確に記憶しているという驚異的な能力を具えたサヴァン症候群の人物として知られています。

サヴァン症候群は大きく分けて以下の2つに分類することが出来ます

有能サヴァン

 本人の全体的な知的発達のレベルに比べて、ある分野の能力だけが際立っている状態のことをいいます。ただし本人の中でその能力が際立っていても、それが必ずしも世の中でも秀でているというわけではありません。

・天才サヴァン

 ある分野の能力が際立っているという点は有能サヴァンと同じですが、天才サヴァンは世間から見ても秀でた能力を持っています。

サヴァン症候群の特徴や能力

以下のように、様々な分野で秀でた能力が見られます。
  • ・一度しか聴いてない曲を演奏することができたり、絶対音感がある
  • ・指定した年月日の曜日を即答できる
  • ・広い土地の地理や道路などを覚えている
  • ・何も見なくても性格な時間がわかる
  • ・まるで写真のような絵を描くことができる
  • などがあります。しかし能力や程度は人それぞれなので、サヴァン症候群だから凄い特殊な能力があるとは限りません。

    サヴァン症候群と絵の能力

    イギリスの建築画家のスティーヴン・ウィルシャー氏は、記憶力だけで、その場所の詳細なパノラマ図を人前で描くことが出来ます。
    ウィルシャーは見たものをそのままに記憶することのできる映像記憶者(カメラ・アイの能力者とも言われる)です。

    サヴァン症候群の天才的な能力はなぜ生じるか?

    どのようにしてサヴァン症候群になるのか、現在様々な研究がされています。

    ・一部の情報の処理能力が長けている

     情報の全体ではなく、一部に特化して情報処理をする能力が高いのではないかと言われており、これと同様のことが自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の人にも見られることからこの説が考えられています。

    ・長時間の練習

    円周率の数字を何千と記憶可能なサヴァン症候群の人は、膨大な時間を記憶に費やしていると言われています。
    他の自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の人と比べて知能指数(IQ)は変わりなかったという報告もあります。
    Intelligence Volume 32, Issue 2, March–April 2004, Pages 121-131
    人との関わりなど社会的なことに時間を費やす事が少ないので、興味のあることだけに集中する事が出来ます。

    ・強迫観念

    驚異的のレベルまでスキルを上げないといけないという強迫観念も影響してると言われます。

    ・共感覚

    ある刺激に対して通常の感覚だけでなく異なる種類の感覚をも生じさせる特殊な知覚現象を示します。
    例えば、共感覚を持つ人には文字に色を感じたり、音に色を感じたり、形に味を感じたりします。
    共感覚を持つ人は高い記憶力などサヴァン症候群に特徴的な能力を持つことが分かっています。
    Cortex Volume 45, Issue 10, November–December 2009, Pages 1246-1260

    サヴァン症候群は男性に多い

    自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)自体が男性に多く、男女比はおおよそ4:1とされています。
    しかし多くの報告で自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)にみられる男女比よりもサヴァン症候群の男女比が高く、サバンは男性に発現しやすいようです。 BolteとPoustkaやHawlinらの報告ではサヴァン症候群の男女比は5:1から7:1とされています。

    サヴァン症候群とカレンダーの計算

    「あなたの誕生日は何年・何月・何日ですか?」「それは何曜日ですか?」
    前者は簡単な質問ですが、後者の質問にも簡単に答えられるのがサヴァン症候群です。
    サヴァン症候群に見られる特別な能力で最も多いとされているのは「カレンダー計算」で、サバンの半数以上にみられています。 カレンダー・サバン症候群には他のサバン症候群の能力が併存することも少なくありません。
    非常に高いの記憶能力の合併が最も多いと考えられていますが、卓越した数学能力もよく合併しています。

    カレンダー・サバン症候群の特徴

  • 1) 幼少時からカレンダーに接している
  • 2) 解答するまでの時間は、問題の年月日の現在からの遠さに関係している
  • 3) 閏年の規則性は理解している可能性が高いです
  • 4)サバンの正答率は概ね90%以上です
  • サヴァン症候群の人は カレンダーをどのように計算しているのか?

    様々な研究成果から推測がなされています。カレンダー計算は無意識に自動的に行われるようになり、その脳内の作業過程を説明出来ない事が多いですが以下の報告があります。
    親からカレンダーを与えられてカレンダーに強い興味を持ち、それをおもちゃにして遊んでいたカレンダー・サバン症候群が多く報告されています。
    カレンダー計算を得意とするサバン症候群の人はカレンダーを長時間集中して観察し、そこに何らかの規則性を見つけ、それを活用する楽しさを覚えたことがサバン症候群の能力に関係していることが示唆されています。

    サヴァン症候群の高い数学的能力

    「電光石火の計算者(lightning calculator)」といわれる数学的サバン症候群の人がいます。
    数学的サバン症候群はサバン症候群全体の17%を占め、58%のカレンダーサバン症候群に次いで多いとされています。
     数学的サバン症候群の人たちが示す数学的才能は特定の領域に限られている事が多いです。
    例えば四則演算と素数の同定の両方の領域等に優れた能力を示す傾向があり、カレンダー計算の才能を同時に示すケースが少なくありません。
    カレンダー計算には四則演算が基盤になることを考えれば、これは当然かも知れません。

    サヴァン症候群の高い音楽的能力

    自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の人は、音楽への興味・関心が強い傾向があり、また何らかの優れた音楽的才能を持つ場合が少なくないと報告されています。
    また、自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の人は、絶対音感を持っている人が相対的に多いと報告されています。
     絶対音感とは、なんら参考となる対照音がなくても、ある音を聞いて、その音の音程を認知できる能力をいいます。
    例えば、440Hzの楽音(人の話し声や雑音ではない)を聞いて、それを一点イ音(A音)=440Hzの音と認知でき、高度の絶対音感の保持者であれば、441Hzの音には「どの音程の音でもない」と認知できることです。
    音楽的サバン症候群の方の大部分の人は絶対音感を持っています。
    音楽的サバン症候群のほとんどの人は、楽譜を読むことができず、非常に多くの曲をを記憶によって演奏します。
    すなわち、音楽的症候群サバンにおいては卓越した記憶力が伴っていますが、音その記憶力は、曲の記憶に限定されることがほとんどです。
    音に過敏な自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)には、すぐれた音楽的才能が隠れている可能性があることが報告されています。

    音楽的サバン症候群の特徴

  • 音楽的才能、盲目、自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の3つが備わっていることが多く、よく音楽的サバン症候群の3主徴といわれます。
  • 抜群の記憶力があります。
  • 絶対音感の保持者している事が多いです。
  • 音楽的な訓練を受けずに高度な演奏をします。
  • 楽器は、ピアノを主とする鍵盤楽器が多いです。
  • 即興演奏をこなします。
  • サバン症候群の日本人

    山下清(1922~1971)は、絵画とちぎり紙を用いた貼り絵で素晴らしい作品を作り、現在でもサバン症候群の日本人として高い評価を受けています。「誰とも合わずマイペースで」「弟子入りを希望する人を全て断り」「人並みはずれた記憶力があり」「超がつく程の几帳面さ」などの症状があったと言われています。

     山下精神病理学者の式場隆三郎に注目されて指導を受け、山下清の美術的な才能が開花しました。

    山下清は、18歳の時に突然放浪の旅に出かけるようになりました。
    この放浪の旅で出会い感動した情景を絵にしましたが、旅先で絵を描くことはなく、感動した情景は映像記憶として家に持ち帰り、そこで製作しました。
    山下清のサバンと考えられる絵画の才能は、本人が潜在的に持っていた才能はもとより、周囲の人たちがその才能を見出して支援し続けたことで、大きく開花できたものと考えられます。