アスペルガー症候群に向いている仕事・向いていない仕事

アスペルガー症候群に向いている仕事・向いていない仕事

目次

アスペルガー症候群の人はコミュニケーション能力などに偏りがあり、社会人になって仕事をする際には多くの困難が生じることが多いです。

この記事では、アスペルガー症候群の特徴や向いている仕事・向いていない仕事の例をご紹介し、仕事をする上で気をつけることや支援等についても解説します。

アスペルガー症候群とは

実は、アスペルガー症候群という病名は現在は使われていません。

2013年に刊行されたアメリカ精神医学会の診断基準であるDSM-5において、自閉症と統合してASD(自閉症スペクトラム障害)という病名になりました。

スペクトラムとは「連続体」という意味で、症状の似ている自閉症とアスペルガー症候群を別物として捉えるのではなく、症状のグラデーションのように捉えようとする考え方が反映された名称となっています。

ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について

有病率

アスペルガー症候群の有病率は人口の0.1~1%程度とされています。自閉症スペクトラム障害の有病率もおよそ人口の1%となっていますが、DSM-Ⅳから診断基準が拡大されていることもあり、それを踏まえた有病率かどうかは定かではありません。

およそ100人に1人程度はアスペルガー症候群の症状があるため、中規模の会社であれば1~2人程度は該当する可能性があります。

アスペルガー症候群の原因

アスペルガー症候群の原因は詳しくは分かっていません。

昔は「親の育て方やしつけが問題だ」とも言われていましたが、現在その説は明確に否定されています。

現在発病の原因として挙げられているのは「遺伝要因」と「環境要因」です。

遺伝要因

遺伝子の解析が進み、アスペルガー症候群の発症に関連する遺伝子が複数報告されています。しかし、どの遺伝子が原因となっているかは様々な遺伝子が複雑に関連しているために特定できていません。

現在言えるのは、同じ遺伝子を持つ一卵性双生児が自閉症を発症している確率を調査した結果からも遺伝的要因が高いということです。

環境要因

遺伝要因の他には、環境的な要因が考えられています。

一卵性双生児の場合でも100%双子の双方が発症するわけではないため、遺伝以外の要因もあるとされていますが、まだその要因ははっきりとは分かっていません。

アスペルガー症候群の特徴

アスペルガー症候群には「社会性の障害」「言語コミュニケーションの障害」「想像力の障害」の代表的な3つの特徴があります。

社会性の障害

相手の気持ちを汲み取って行動できない、その場の空気を読んで発言できない、暗黙のルールに気づけないという障害です。

「なんでそんなことをするのだろう?」と思うような行動や言動をして周囲を困惑させることがあります。

言語コミュニケーションの障害

アスペルガー症候群の人は言葉の理解や使い方に独特の特徴があるため、コミュニケーションが難しい場合があります。

具体的な例としては、誰も普段は使わないような小説の一説を頻繁に使ったり、間接的な表現が理解できずに相手の発言を真に受けてしまったりします。

その他にも、耳から入ってくる情報の処理が苦手な傾向にあり、他者との会話についていけないことがあります。

想像力の障害

アスペルガー症候群は強いこだわりを持っている事が多く、決まった手順やスケジュールに非常にこだわります。

そのため、新しい人や状況に対して対応がうまくできず、パニックになってしまうことがあります。また、こだわりが強いために視野が狭くなってしまい、全体像の把握が苦手な傾向にあります。

仕事で起こしやすいトラブル・悩み

アスペルガー症候群の人は強いこだわり故に仕事上のトラブルに繋がっていることが多いです。例えば、以下のようなトラブルが考えられます。

先輩や他の社員のアドバイスや意見を受け入れず、マイルールを優先してしまう

こだわりの強さから、他の人から「こうしたほうがいいよ」という意見を聞くことができず、ひとりだけ違うやり方で続けてしまいます。それが原因となってトラブルになり、どうしようもなくなって会社を辞めてしまうこともあります。

細かすぎる

細部にこだわりすぎるあまり、仕事の進捗が遅れてしまったり、時間配分がうまくいかずに締め切りを守れないことがあります。

また、人と会話をしている最中でも気になった事があるとそちらに意識が向いてしまい、会話に集中できないこともあります。

ざっくりとした説明が理解できない

曖昧な指示にイライラしてしまったり、「わかりました」と言っても理解していないことが多いです。また、矛盾や疑問を感じるとそれ以上話を理解できずに止まってしまいます。

自分のミスを認めない、謝らない

コミュニケーション能力に障害があるため、自分のミスを認める事ができなかったり、そもそもミスを認識していないために謝らないということがあります。

ミスを指摘されてもそれがミスだと理解できずにパニックを起こすこともあります。

他人のミスを指摘せずにはいられない

相手がたとえ上司だとしても、不正やルール違反を見つけるとすぐに指摘してしまいます。悪いことではないですが、それによって空気を悪くしてしまうことがあります。

周囲からは「極端に正義感が強い人」と見られることが多いです。

大勢での仕事が苦手

チームで仕事をしていると、発言のタイミングが分からなかったり、理解したふりをして先に進めてしまったりします。また、気の使い方がおかしくて周囲に変な人だと思われてしまうことがあります。

他人との距離感がつかめない

裏表がないといえば聞こえはいいものの、誰に対しても常に同じように接するため、上司や取引先に対してもタメ口で話してしまったりすることがあります。

もしくはその反対に、どんなに親しい友だちでも極端に敬語を使って話すため、距離を感じることもあります。他者との適切な距離感がつかめないのが特徴です。

身だしなみに無頓着

アスペルガー症候群の人は自分の興味のあることにはとことん熱中しますが、そうでないことには極端に無頓着です。そのため、おしゃれや服装に興味がない場合は「着られればいい」という程度にしか考えてないことがあり、制服の着こなしなどで何度も注意を受けたりします。制服の着用が必須の職場ではそれ自体が苦痛となってしまい、無断欠勤につながったりすることもあります。

冗談を真に受けてしまう

アスペルガー症候群の人は相手の言葉を額面通りに受け取ってしまうため、それが原因でトラブルになることがあります。

例えば、「休日はゆっくり休みなさい」と上司から言われた場合、休日出勤の日でも「休日だから」という理由で無断欠勤してしまうことがあります。本人はわざとやっているわけではなく、言われたとおりに休んだだけだと思っているため、なぜ休んではいけなかったのか理解できないということが起こります。

何かを頼む際には、伝え方に気をつける必要があります。

会社のルールを理解できない

「始業時間の5分前には出社する」といった、会社で暗黙のルールとされているようなことを理解できないことがあります。

明確にルールとして決めてある場合は守るため、細かいことまで明文化して伝えることが重要です。

仕事のやり方が変わるとパニックを起こす

アスペルガー症候群の人はこだわりが非常に強いため、仕事のマニュアルが変わってしまうと対応できずにパニックになることがあります。頻繁にやり方が変わってしまうような職場では臨機応変に対応できず、それがストレスとなって体調を崩してしまう可能性もあります。

アスペルガー症候群に向いている仕事

アスペルガー症候群の方は、特性の強さにもよりますが、

  • 一人でできる仕事
  • タスクが明確な仕事
  • 集中力や記憶力が求められる仕事
  • ノルマがない仕事

がおすすめです。

人よりも極端に苦手な分野がある一方で、他の人には真似できないほど高い能力を発揮する分野も持っている可能性が高いため、自分に合った仕事を選ぶことが重要です。

多くの人が苦手とする高い集中力を維持することが求められる作業

  • ライン作業高所作業
  • 精密材料加工
  • 工芸品作家
  • プロゲーマー
  • プログラマー

記憶力と発想力を生かした仕事

  • 設計技術者
  • ウェブデザイナー
  • アフィリエイト
  • ゲームクリエーター
  • ファッションデザイナー
  • 写真家
  • 建築士
  • 弁護士

理論的思考を生かした知的専門職

  • 大学教員
  • 予備校講師
  • 専門事務
  • システムエンジニア
  • 病理医

アスペルガー症候群に向いていない仕事

アスペルガー症候群の方は臨機応変な対応が非常に苦手なため、複数のことを短時間で処理する必要があるような仕事や予測不可能なことが起こりやすい仕事はパニックを起こしてしまうことが考えらるため、避けたほうがいいでしょう。

アスペルガー症候群に限ったことではないですが、自分の得意なことを仕事にしたほうが良いため、以下のような仕事で困難を抱えている場合は転職を視野に入れることをおすすめします。

複数の要求を短時間に処理する仕事

  • レジ打ち
  • レストランのウェイター など

予測不可能な問題に対応する仕事

  • 旅行代理店
  • ディーラー など

柔軟な対応が必要な仕事

  • オペレーター
  • 予約係り
  • 営業 など

仕事で気をつけるべきこと

アスペルガー症候群の場合、意思疎通に難があるケースが多いです。そのため、以下のような対策を自分で行い、周囲にも協力してもらうことが重要です。

コミュニケーションが取りにくいと感じた時

同僚や上司とのコミュニケーションが取りにくいと感じる場合、一旦聞き役に徹するようにしてみましょう。

アスペルガー症候群の方は、自分が思っているよりも一方的に話してしまっていることが多いです。そのため、相手とうまく会話が噛み合わないな、対立してしまっているなと感じたら、一旦は完全に聞き役に徹してみることをおすすめします。

聞き役に徹して相手の意見をすべて聞くことで、何を伝えようとしているのかを整理することができ、対応しやすくなります。

相手に口頭で指示されたことが分からない時

相手の指示が理解できない場合は、口頭ではなくチャットや文面でも指示をもらうようにしましょう。

アスペルガー症候群の場合、耳からの情報処理が難しいことがあるため、口頭での指示は必ずテキストでも再度送ってもらうようにすることで理解できるようになります。

指示された内容がマニュアルになっていない場合は、後々混乱してしまうため、一旦自分でマニュアルを文書化して上司に確認を取るようにすると効果的です。

周囲の人の対応方法

アスペルガー症候群の人が同僚や部下にいる場合、いろいろなトラブルが発生します。その中でも適切な対応をすれば都度仕事を理解して進めることが可能です。

ミスを報告しない・謝らない場合

アスペルガー症候群の人は、ミスを報告したり謝ることが苦手なことが多いです。これはそもそも「自分はマニュアルに沿って行動しただけだから悪くない」と思っていることが多く、起きた結果に対して納得していないからです。

こういった傾向がある人には、ミスの原因や状況をしっかりと共有し、なぜミスが起きてしまったのか、どういった対応をすればよかったのかを丁寧に説明してあげる必要があります。

また、マニュアルに当てはまらない業務が発生した場合はすぐ上司に相談するというルールを設けておくことで、分からないまま進めてしまうことを防止する事ができます。

常識に欠ける行動をする場合

遅刻や無断欠席が多かったり、身だしなみに気を遣えない場合、「どうして遅刻や無断欠席をしてはいけないのか」や「身だしなみを整えるべき理由」について丁寧に説明してあげるようにしましょう。

多くの人は教えられなくても理解して実践できることですが、アスペルガー症候群の場合は暗黙のルールや社会的な常識とされていることも「ルールとして」教えてあげる必要があります。しっかりと説明した後は上司が率先してルールを守るように行動して教えるのが効果的です。

体調不良を訴える場合

アスペルガー症候群に限らず、発達障害の特性を持つ人は「感覚過敏」という症状を持つ場合が多いです。そのため、以下のようなことを訴えてくることがあります。

  • 蛍光灯が眩しくて目を開けていられない
  • 他者の会話が気になってしまい集中できない
  • 作業環境の臭いが苦手で耐えられない

こうした症状がストレスとなって体調を崩し、場合によってはうつ症状や不安症状などの二次障害を引き起こすことがあります

こういった訴えがある場合はデスクの位置を変えたり耳栓などの着用を許可するなど、環境調整をしてあげるようにしましょう。

合理的配慮とは

上述したように、感覚過敏の症状がある場合に環境調整を行ったり、仕事の指示をテキストで渡すようにするなど、障害のある人に対して業務に支障が出ないように配慮することを「合理的配慮」と言います。

合理的配慮は2016年に施行された「障害者差別解消法」と「障害者雇用促進法」に導入されている概念で、行政機関や民間事業者に対して障害者に対する合理的配慮の提供を求めています。

障害を持つ人のニーズに応じて、負担となりすぎない範囲で特例を認めることを指しており、一律でルールを定めるなどの対応を行う必要はないとされています。

合理的配慮の具体例

アスペルガー症候群に対する合理的配慮としては、以下のような例が考えられます。

  • 抽象的な指示にならないよう、テキストと図を使って指示を出す
  • 業務の指示はひとつずつ出す
  • 業務を依頼するときはマニュアルを作成して依頼する
  • 指示を出す人を固定する(対人関係が苦手なため)

合理的配慮の注意点としては、障害を持つ人からの申し出が前提となっている点が挙げられます。つまり、アスペルガー症候群を持つ本人が業務上の困りごとを上司や同僚に相談した場合に、必要に応じて提供するべきものということです。困り事がある場合は早めに相談するようにしましょう。

アスペルガー症候群への支援

アスペルガー症候群の方が就労に何らかの困難を感じている場合、以下のような公的な支援を利用することが可能です。

精神障害者保健福祉手帳

障害者手帳を取得することで様々な支援制度を利用しやすくなったり、障害者雇用枠への応募が可能になります。

アスペルガー症候群をはじめとする発達障害専用の手帳はありませんが、精神障害者保健福祉手帳が取得可能です。

注意点として、アスペルガー症候群であれば必ず手帳を交付してもらえるとは限りません。日常生活、社会生活における困難の度合いによって交付が決定します。

詳しくはお住まいの地域の自治体に確認してみるようにしてください。

当院ではQEEG検査という脳波検査によって発達障害の可能性を客観的に診断可能です。特性の強さまでわかるため、ご興味のある方はぜひお問い合わせ下さい。診断書の発行も可能です。

就労移行支援

一般企業への就労を目指す障害や疾患のある方が働くためのスキルを身につける事のできるサービスです。職業訓練、就職活動のサポート、職場定着支援の3つの支援が基本となっています。

職業訓練ではビジネスマナーやコミュニケーションのトレーニング、パソコントレーニングなどを行います。また、就職後も専門のスタッフが様子を伺い、必要に応じた支援を行ってくれます。

就労移行支援の利用の注意点として、毎週決まった時間に事業所に通って利用するため、定職に就いている場合は利用できません。

その他の支援

就労移行支援の他にも、発達障害者支援センター、若者サポートステーション、障害者職業センターなども利用できることがあります。お住まいの地域で利用できそうな施設やサービスがあるかどうか調べてみることをおすすめします。

また、どういったサービスがあるか分からずにお困りの場合は、市区町村役場の障害福祉課に相談すれば利用可能なサービスを紹介してくれますので、そちらも是非活用して下さい。

まとめ

アスペルガー症候群は特性ゆえに社会生活に多くの困難を抱えがちです。また、向いている仕事と向いていない仕事がはっきりしているため、自分の特性に合った仕事を選ぶようにしましょう。得意なことをしているときは、他の人には真似できないような圧倒的な成果を出せることも多いのがアスペルガー症候群です。ぜひ、自分に合った仕事につけるように公的支援も活用してみてください。

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