
不安障害の1つであるPTSD(外傷後ストレス障害)とは?【医師が分かりやすく解説】
目次
- 1 PTSD(外傷後ストレス障害)とは?
- 2 PTSD(外傷後ストレス障害)発症のきっかけや原因
- 3 PTSD(外傷後ストレス障害)はいつ発症するのか
- 4 PTSD(外傷後ストレス障害)の症状
- 5 なぜPTSD(外傷後ストレス障害)による精神的な衝撃は大きいのか
- 6 外傷体験後には誰でもPTSD(外傷後ストレス障害)になるのか
- 7 PTSD(外傷後ストレス障害)を悪化させてしまう要因
- 8 一般的なストレスとPTSD(外傷後ストレス障害)の違い
- 9 PTSD(外傷後ストレス障害)だと気が付かないことがあるのはなぜか
- 10 PTSD(外傷後ストレス障害)の症状
- 11 子どものPTSD(外傷後ストレス障害)
- 12 PTSD(外傷後ストレス障害)の対処法
PTSD(外傷後ストレス障害)とは?
PTSDとは、命にかかわるような事を経験したり、大きなショックをうけるような場面に遭遇したりすることで強く恐怖を感じ、そのことがトラウマとなって恐怖を感じた場面に戻ったような感覚を何度も体感し、その度に恐怖が思い起こされる病気のことです。
命にかかわるような経験などをしたあとは、誰でもそのことを思い出し恐怖を感じますが、普通であれば時間と共にその恐怖は軽減されていきます。
しかしPTSDの場合は、この恐怖が薄れることなく持続します。トラウマとなるような外傷体験のあとにトラウマ症状が1ヶ月以上続き、苦痛を強く感じていたり、日常生活に支障をきたしている場合を急性ストレス障害、3ヶ月以上続く場合では慢性ストレス障害、と診断されます。
PTSD(外傷後ストレス障害)発症のきっかけや原因
きっかけ
PTSDは生死にかかわるような出来事やショックな出来事など、外傷体験が起きた後に発症します。その体験には以下のようなものがあげられます。
など
原因
原因は大きく分けて2つあります。
1. 心理的原因
怖い体験を再びすることになったとき、それに上手く対処できるようにするためと言われています。
フラッシュバックするのは辛いことですが、その経験が役に立ち、後に似たような出来事が起こったときには状況を理解するのを助けるでしょう。
また、過覚醒になるのは危険な状況に置かれた時にすぐに対応し、必要な行動を起こすことができるためです。
2. 身体的原因
ストレスを感じた時にでるホルモンにアドレナリンがあります。
通常ではアドレナリンはストレスがなくなると分泌量が減ります。
しかしPTSDの場合、外傷体験の影響でアドレナリンが出続け、常に緊張し眠れなくなってしまいます。
また、脳の海馬という領域はアドレナリンの分泌量が多いとうまく機能しません。
結果として外傷体験の記憶に対応できなくなり、フラッシュバックや悪夢が続いてしまうのです。
PTSD(外傷後ストレス障害)はいつ発症するのか
PTSDの症状は、外傷体験の直後から6ヶ月以内にみられます。
2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件の1ヵ月後、米国市民の11.4%がPTSDに、9.7%がうつ病になったと報告されています。
(Wikipediaより画像引用)
PTSD(外傷後ストレス障害)の症状
症状は大きく分けて3つあります。
1. 悪夢、フラッシュバック
トラウマとなった当時の体験が寝ているときに悪夢となって現れたり、起きている間にもフラッシュバック(追体験)するといった症状がみられます。
当時の痛みやにおい、物音や恐怖心など、その時と同じ状況を心と身体で再び体験するためとてもリアルに感じられます。
フラッシュバックが引き起こされるのは、その体験に関連したささいなことです。
例えば事故にあった日が雪だったとしたら、雪の日にフラッシュバックが誘発されることがあります。
2. 外傷体験に関係する刺激の回避、精神的麻痺
フラッシュバックを繰り返すのは辛いことです。
そのため外傷体験を思い出さないように仕事や趣味に打ち込んだり、外傷体験に関連した話題や場所などを避けて気を紛らわせるようになります。
また、精神的苦痛に対して、何も感じなくなるよう感情を麻痺させたりします。
人とコミュニケーションをとることが少なくなるため、周囲の人の重荷になることがあります。
3. 絶えず警戒している(過覚醒)
リラックスすることができず神経質になり、周りに危険がないか常に警戒するようになります。いつでも不安で不眠になることがあります。
その他の症状
など
なぜPTSD(外傷後ストレス障害)による精神的な衝撃は大きいのか
外傷体験により、人生は常に危険と隣り合わせであると実感し、これまでのように安心安全に過ごせる、というようには感じられなくなってしまいます。
PTSDとは九死に一生を得たあとに起きる正しい回避行動なのです。
外傷体験後には誰でもPTSD(外傷後ストレス障害)になるのか
外傷体験後、多くの人は1ヶ月ほど急性ストレス障害というストレスに関連した症状がみられますが数週間ほどで治まり、PTSDのように症状は長期化しません。
PTSDは外傷体験をしたうちの3人に1人の割合と言われ、外傷体験やストレスを上手く対処できなかった人がなりやすいといえます。
PTSD(外傷後ストレス障害)を悪化させてしまう要因
外傷体験のショックが大きいほどPTSDになりやすいです。PTSDの悪化につながる外傷体験には以下のような特徴があります。
など
一般的なストレスとPTSD(外傷後ストレス障害)の違い
一般的なストレスとは、人間関係や仕事など普段の生活で感じる精神的な苦痛のことです。
このようなストレスでも胃潰瘍や頭痛、抑うつなど心や身体に症状はでますが、PTSDとは異なります。
PTSD(外傷後ストレス障害)だと気が付かないことがあるのはなぜか
怖い体験や自分が抱えている症状について他者に話したくない気持ちがあり、また周りの人もそうした体験談をあまり聞きたいとは思わないため、PTSDを見逃してしまうことになるのです。
PTSD(外傷後ストレス障害)の症状
外傷体験の経験があり、下記のような症状があてはまるか確認しましょう。
こうした症状が外傷体験後6週間以上続き、症状が軽減する様子がないようであれば一度医師の診察を受けると良いでしょう。
子どものPTSD(外傷後ストレス障害)
子どもの場合、再体験をするのは遊んでいる最中に多いと言われています。ごっこ遊びやおもちゃがきっかけとなります。
そのため今までの遊びや興味のあったものに興味を持てなくなったり、身体の不調を訴えるようになります。
PTSD(外傷後ストレス障害)の対処法
PTSDの軽減に繋がることとして以下のようなものがあります。
反対に、PTSDを助長させてしまう行動には以下のようなことがあります。
外傷体験に対しては、自分の頭の中で整理し理解することで徐々に適応できるようになります。
そのため誰かに体験した内容や自分の思いを話すことが大事になってきますが、周りの人が話を聞いてくれない、自分のことを避けたり責めたりしてくる、といった対応をとられてしまうとPTSDは良い方向には進まず、乗り越えることは困難となってしまいます。
医師の主観ではなく、客観的なデータで診断
脳の状態を診断するQEEG検査(定量的脳波検査)

治療前と治療後のQEEG検査結果の変化

人工知能(AI)を用いて、ディープラーニング(深層学習)することで、様々な脳の状態を統計学的に把握することが出来るようになりました。
5歳から高齢者(大人)まで幅広い年齢層の方に対してQEEG検査の結果に即した、結果に応じて、薬を使わない治療など個人に合った治療を提案する事も可能です。
客観的指標のない精神科領域において、欧米では非常に需要のある検査法です。