マインドフルネスとは何か?心理療法としての効果についても解説
目次
AppleやGoogleが社員研修にマインドフルネスを取り入れていることは有名ですが、近年は日本でもマインドフルネスを導入する企業が増えてきています。
今回は、そもそもマインドフルネスとは何か、どういった効果が期待できるのかについて解説していきます。
また、当院ではマインドフルネスを取り入れたセルフケア・サポート外来がございます。
マインドフルネスとは
マインドフルネスの定義は厳密にはありませんが、「今この瞬間に集中している状態」を指します。
ストレスの軽減、集中力の強化などの効果が得られるとされており、世界で大きな注目を集めています。
マインドフルネスは、もともと仏教の経典で使用されているパーリ語の「サンマ・サティ」のサティの英訳です。
仏教上の意味合いは
- 人々を苦しみから完全に解放するための自己認識
- 悟りへと徐々に導いていくための智慧
を育むために役立つものとされています。
日本語では、「注意深い」「集中」「気づき」などの訳を当てられることが多いです。
マインドフルネスの実践方法
マインドフルネスは行為を指す言葉ではなく、状態を指す言葉です。マインドフルネスの状態に至るためには、瞑想を通して自分の意識を集中させていく必要があります。
1回の実践でも一時的な効果は得られるとされていますが、基本的には毎日継続して行うことを前提としています。
ここでは実践方法として、呼吸瞑想、ボディスキャン瞑想、歩行瞑想の3つをご紹介します。
呼吸に集中する瞑想法
1つ目の瞑想法は、呼吸に集中する瞑想法です。もっともスタンダードな方法で、どなたでも実践しやすい内容です。
呼吸瞑想のやり方
- 椅子や床に座る
座り方は特に決まっていません。椅子に腰掛ける、床にあぐらをかく、何でもOKです。ただし、深い呼吸ができるように背筋を伸ばすことがポイントです。 - 呼吸に意識を向ける
肩の力を抜き、目もリラックスして閉じたり半目の状態にします。自然なペースで呼吸をしてください。意識を自分の呼吸だけに集中させます。
呼吸のコツ
腹式呼吸が理想ですが、難しい場合には自然に鼻からゆっくりと吸って口から吐くようにしましょう。
呼吸の意識の向け方
新鮮な空気が身体に入ってくるところを意識します。鼻先や口など、実際に空気の出入りしているところに意識を向けると良いでしょう。
ボディスキャンによる瞑想法
ボディスキャン瞑想は横になって行います。あぐらをかけない人、身体に痛みを感じる人でも取り組みやすい方法です。
ボディスキャン瞑想のやり方
- ヨガマットやベッドの上に横になります
- 身体の各部位に意識を集中させていきます。順番は適当になっても問題ないですが、足先から頭頂部にかけて集中させていくと良いです。以下の順番でそれぞれ3分ずつ意識を集中させていきましょう。
- 左足
- 右足
- 腰
- 腹
- 胸
- 背中
- 両腕
- 肩
- 首
- のど
- 顔
- 後頭部
- 頭頂
- 体全体
意識のコツ
最初は思うように意識を向けられないことがありますが、そういった方はなんとなく意識を向けるでも問題ありません。また、同じ体勢をとっているうちに身体のどこかに痛みを感じてしまった場合、その部分に意識を集中させて痛みをありのままに感じても問題ありません。
重要なのは、「自分の身体に意識を集中させること」です。
歩行による瞑想法
歩行による瞑想では、歩きや身体の動き、感覚に意識を集中させる方法です。
歩行瞑想のやり方
いつもよりゆっくりとしたペースで歩き、視線は少し前を向きます。
足の裏で地面を踏みしめている感覚に集中します。
かかとから着地し、つま先まで踏み込み、地面から離れる感覚を感じましょう。
意識の向け方
足の動きに意識を集中させ、前だけを見ます。周囲の様子が気になってしまうと意識が集中できないため、広い公園など安全な場所で行うのが良いでしょう。
心理療法としてのマインドフルネス
マインドフルネスは様々な心理療法に取り入れられており、ストレスの低減、うつや不安障害の治療に使われることがあります。
マインドフルネスの効果を科学的に実証する動きは盛んで、数々の研究報告があります。
うつ病の再発防止に関する研究
2015年にはうつ病の再発防止に関するメタアナリシス(複数の独立した研究結果を統合して統計的に分析する方法)の結果が発表されています。(参照:Can non-pharmacological interventions prevent relapse in adults who have recovered from depression? A systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials)
この研究の結論として、マインドフルネス認知療法(MBCT)を受けたグループのうつ病再発リスクは22%減少したと報告されています。
多くの研究結果を統合してより高い見地から分析された結果のため、マインドフルネスによる効果は科学的にも認められていると言えます。
慢性疼痛に関する研究
2017年には、慢性疼痛に関するメタアナリシスが行われています。(参照:Mindfulness Meditation for Chronic Pain: Systematic Review and Meta-analysis)
この研究では755個の研究から38個の研究をランダムに抽出し、延べ3,536人を対象として分析が行われました。その結果、マインドフルネス瞑想を行ったグループは有意に慢性疼痛が緩和されているという結果が報告されています。これらの研究に参加した患者は身体の痛みに悩まされていましたが、うつ症状の緩和とQOL向上に効果が見られたとされています。
健常者の精神症状、生活の質に関する研究
2015年に、健常者を対象として生活の質を改善するかという研究がされました。(参照:Mindfulness-based stress reduction for healthy individuals: A meta-analysis)
この研究では676の研究から29件を抽出し、887名が対象となりました。この結果、マインドフルネスストレス低減法(MBSR)によってストレス、うつ病、不安や苦痛の軽減に中程度の効果があることが報告されています。
マインドフルネス瞑想で期待できる効果
上述の通り、マインドフルネスは身体的、精神的に様々な効果が期待できます。すでに病名のついた精神疾患をお持ちの方も、病名はついていないが心身の不調に悩んでいる方も、どちらも効果が期待できます。
もちろん効果には個人差がありますが、基本的にデメリットはないため実践してみる価値はあるといえるでしょう。
身体的効果
- 免疫システムの機能向上
- 慢性疼痛の改善
- 不安障害/不眠症/恐怖症/摂食障害/依存症の症状改善
- 緊張の緩和
精神的効果
- ストレスの軽減
- 学習力/記憶能力/集中力の向上
- うつ病の再発防止・軽度のうつ病の症状改善
- 感情コントロールの向上(共感力・おもいやり・適切な意思決定・幸福感など)
マインドフルネスのメリット
マインドフルネスのメリットは、実践するハードルが非常に低いことです。
特別に準備するものはありませんし、いつでも、どこでも実践できます。
また、実践する方法もいくつかあり、個人に合った方法を試すことも可能です。
マインドフルネスを実践することによって身体的、精神的に悪影響はないとされているため、基本的にはデメリットはありません。しかし、疾患の治療を目的としたマインドフルネスの実践の場合は医師に相談し、自己流ではなくマインドフルネス瞑想の知識のある人の元で実践するようにしましょう。
まとめ
マインドフルネスは様々な身体的、精神的症状の改善に有効とされています。
習得するまでに多少時間はかかりますが、手軽に実践できるため、継続しやすいことも特徴です。
まずは自分のできる範囲で始めてみて、自分にあった方法を探していきましょう。
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