ディスレクシア(読字障害)の症状、原因、対処法について精神科医が解説
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ディスレクシア(読字障害)の症状、原因、対処法について精神科医が解説

周囲と比べて全く知能に問題はなさそうだし、会話も成立するのに、文字の読み書きだけが非常に苦手という方がいます。今回は、ディスレクシア(読字障害)の症状や原因、対処法について精神科医が解説します。

ディスレクシア(読字障害)とは

ディスレクシアとは、文字を読むことに困難がある障害を指す通称です。ギリシャ語由来ですが、日本語では難読症、識字障害、読字障害という呼ばれ方をしています。また、読むだけでなく書くことも困難なケースが多いことから、読み書き障害と呼ばれることもあります。

文字を書くのが困難な障害をディスグラフィアといい、別の障害として区別されていますが、読むのも書くのも難しいという方が多いです。

ディスレクシアの人口比率

ディスレクシアの人がどのくらいいるのかは正確にはわかりません。統計が発表されていないためです。しかし、障害者白書(平成25年度版)内の「児童生徒の困難の状況」にある、「知的発達に遅れはないものの学習面で困難のある児童生徒の割合」の「学習面で著しい困難を示す」の推定値である4.5%が最も近いと言われています。

出典:平成25年版障害者白書第1編第2章「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果」

ちなみに、欧米のディスレクシアの人口比率は10~15%と言われています。日本よりも研究が進んでいるため、ディスレクシアが顕在化しているとも言えますが、英語やフランス語は綴りと発音の間に複雑な関係があるため、読み書きの困難が表面化しやすいとも考えられます。

失読症との違い

ディスレクシアと似たような障害として失読症が挙げられますが、この2つは明確な違いがあります。

  • ディスレクシア:発達性学習障害(LD)の1つ
  • 失読症:脳の損傷によって起きる高次脳機能障害の1つ

つまり、ディスレクシアが先天的に読み書きが困難な状態を指し、失読症は後天的に読み書きが困難になった状態を指します。

治療法や対処法も非常に似ていますが、根本の原因が違うというところはおさえておきましょう。

ディスレクシアの主な症状

もちろん個人差はありますが、ディスレクシアの症状は大きく2種類に分けられます。「文字の読み方がわからない」タイプと「文字の形がわからない」タイプです。それぞれ音韻処理不全、視覚情報処理不全ということもあります。以下で詳しく見ていきましょう。

「どう読むのか理解できない」音韻処理の不全

ディスレクシアの人は、音韻の処理に関わる大脳基底核と左前上側頭回という領域に機能異常があるという説が主流です。音韻機能は最小の音単位を認識して処理する能力ですが、これが正常でないために音の聞き分けや読むことが困難になっていると言われています。

文字と音が紐付かない

例えば、「あ」を”a”という音で発音するということが難しいことがあります。また、「ゃ」「ゅ」「ょ」「っ」などの小さい文字の発音がわからなかったり、「ー」という伸ばす音が認識できなかったりします。

単語が理解できない

例えば「ら」「む」「ね」と一文字ずつを理解して発音することができても、「らむね」と1つのかたまりとして読むことができないことがあります。

音を記憶できない

読んだり話したりする際は言葉を音として記憶しています。

例えば、「今日は天気がいい」という文を読むとき、頭の中では「今日/は/天気/が/いい」と適切な位置で区切って単語や助詞を認識、記憶し、それを同時に処理して「今日は天気がいい」と読んでいます。

ディスレクシアの場合はこの記憶と処理を同時に行うことが難しく、結果的に流暢に読むことができない場合があります。

「文字の形がわからない」視覚情報処理の不全

ディスレクシアの人の中には、普通の文字の見え方とは違った見え方をしている人もいると言われています。障害のない人からすれば「なぜそんな読み方になるのだろう?」と不思議に思うようなこともありますが、先天的な障害であることを理解して接するようにしましょう。以下に主な症状を紹介します。

文字がにじんだり、ぼやけたりして見える

ノートを水に濡らしたように文字がにじんだり、メガネを忘れたときのように二重に見えることがあります。

文字が歪む

文字がグニャグニャになったり、飛び出して見えることがあります。

鏡文字に見える

文字が左右反転して見えることがあります。

点描画に見える

文字がとぎれとぎれで、点で書いているように見えることがあります。

ディスレクシアの原因

詳しい原因が解明されているわけではありませんが、近年の研究ではディスレクシアを持つ人は脳活動の異常が見られることが分かってきました。

ディスレクシアの中でも音韻処理機能に障害があるディスレクシア児14名と健常児15名、健常成人30名を対象とし、音韻処理課題を行っている際の脳活動をfMRIによって測定した結果、健常成人や健常児に比べて、ディスレクシア児では大脳基底核で過活動が見られ、逆に、左前上側頭回で低活動が認められたという研究結果が出ています。

大脳基底核は、運動調節、認知機能、感情、動機づけ、学習など様々な機能に関与している分野で、音韻処理課題においては効率性に関わっていると考えられています。ディスレクシア児におけるこの部位の過活性は、音韻処理の効率の悪さを反映しているのではないかと言われています。

左前上側頭回は、音韻処理の熟達性に関係しています。ディスレクシア児におけるこの部位の不活性化は音韻情報の構成や処理の困難を反映していると考えられます。

さらに興味深いのは、こうした報告のうち大脳基底核の異常については英語圏のディスレクシアではほとんど指摘されていない点です。これは、話す言語によっても病態が異なる可能性を示唆しています。

出典:明星大学研究紀要・杉本明子「ディスレクシアの脳科学」

ディスレクシアの人が困ること

ディスレクシアの人は知的な遅れがあるわけではないため、日常生活での困りごとはないようにも思われます。しかし、意識していないだけで文字が関わってくるタイミングはたくさんあり、そのたびに困難を感じているのです。ここでは、日常生活での代表的な困難と、それに付随する対人関係での困難についてご紹介します。

学校・仕事・日常生活

学校や仕事では文字を扱ったコミュニケーション機会が多くあります。そのため、事あるごとに困難を感じます。

板書ができない

まず、字を読むことが難しいので黒板の文字をノートに板書することが難しいです。また、ディスレクシアはディスグラフィアでもあるケースが多いため、見た文字をノートに書き写すという作業が難しく感じます。作文では原稿用紙のマス目をはみ出して書いてしまったり、音読もぎこちなくしか読むことができません。

書類作成ができない

デスクワーク中心の社会人では、書類作成をする機会が非常に多くあります。例えば句読点を書き忘れたりするミスを何度も上司に怒られてしまったりします。

メモが取れない

また、聞いたことをすぐに書き記すことが難しいため、メモが苦手です。そのため、言われたことを覚えていなかったり、すぐに聞き返してしまったりします。

電話を取るのが苦手

メモを取るのが苦手という点にも関係しますが、電話の応対が苦手な傾向にあります。聴覚記憶が苦手なため、電話口て聞いた相手の名前が覚えられないなどのミスが多発します。

バスの目的地がわからない

日常生活では、バスの行き先を理解するまでに時間がかかり、乗り遅れたり、違う方向のバスに乗ってしまったりということが発生します。また、電車でも同じです。

運転中に標識を見落とす

ディスレクシアの困難の中でもとりわけ危険があるのが標識の見落としです。標識の文字が理解できずに曲がるべきところを曲がれない程度ならまだしも、標識の注意書きを見落として進入禁止の道路に立ち入ったりすることもあります。大きな事故に繋がりかねない危険があります。

小説が読めない

趣味の観点では小説などの小さい文字が苦手ということがあります。文庫本に書いてあるような小さな文字は二重に見えたりにじんだりして読むことが難しいです。しかし、最近では音声で聞くタイプの読書サービスもあるため、以前に比べたら小説を楽しむための選択肢は広がってきています。

対人関係

ディスレクシアは知的な遅れはないため、会話によるコミュニケーションが一切取れないというわけではありません。しかし、文字の読み書きが苦手なことで対人関係において様々な困難が生じます。

いじめ

まず、クラスメートや同僚に読み書きができないことをからかわれることがあります。本人はわざとやっているわけでもないので、からかわれることで傷つきます。さらに、場合によってはいじめにも発展し、不登校や引きこもりなどの二次障害につながっていくことが考えられます。

うつ病

今でこそディスレクシアを公表する有名人なども出てきて、文字が読めない、書けないという障害が少しずつ認知されてきました。しかし、まだまだ知らない人もいますし、他のことは周囲と同等に対処できていることからも、読み書きがうまくできないのはサボっているからだと責める教師や上司がいることも事実です。本人も必死に努力していますし、サボる気もない、できることならスラスラと読みたいと思っているのです。そういった気持ちを踏みにじって自信を喪失させる一部の人間がいるため、うつ病を発症することがあります。

このように、障害への理解が足りないことで二次障害を引き起こしてしまう現状があります。まずは周囲の人が障害を理解し、どうしたら本人が過ごしやすいかを考えるようにしましょう。

ディスレクシアの対処法

ディスレクシアだからといって文字が読めないと諦めてしまっては、学業にも仕事にも影響がでることがほとんどです。そのため、可能な限り読みやすくするための工夫は必要です。

文字のフォントを大きくわかりやすくする

まず、文字が小さいほど二重に見えたりする傾向にあるため、大きくわかりやすいフォントにするなどの工夫ができます。丸ゴシックなどの見やすいフォントに加え、サイズを大きくする、行間を十分に開けるなどの工夫をしましょう。

余計な文字を隠す

一度にたくさんの文字が目に入るとうまく読むことができないため、下敷きなどを使って読みたい部分以外の文字を隠しましょう。こうすることで読むべき文字がはっきりするため、読みやすくなります。

声に出して勉強する

耳から聞く情報は理解しやすいことが多いため、音声で聞いて勉強するようにするのも良いでしょう。また、教科書を見ながらその音声を聞くことによってスムーズに文字と音、意味がつながって理解できることもあります。最近では電子教科書などもあるので、活用しましょう。

文の区切りに/を引く

文章のまとまりを理解できない場合、/を引くことではっきりと区切りを示してあげるのも効果的です。ないよりもスムーズに読むことができるようになるでしょう。

スマートフォンやタブレットを使う

スマートフォンやタブレットでは、文字の大きさを任意の大きさに設定できたり、その場で拡大して読むことができます。また、音声による読み上げ機能などもあるため、よりスムーズに学習できるでしょう。学校と相談し、板書を取る代わりに写真を撮らせてもらうのも一つの方法です。

ディスレクシアの治療

現在、ディスレクシアに対して医学的に有効な治療法は確立していません。そのため、基本的には対症療法として読み書きのトレーニングを行います。

最近ではビジョントレーニングという視覚機能を高めるためのトレーニングを行うことが増えています。

ビジョントレーニングとは、40年以上前からアメリカ合衆国で提唱、開発されてきたトレーニング方法です。例えばスポーツ選手のパフォーマンス向上や発達障害の子どもの学力、運動能力の向上に有効とされています。このビジョントレーニングがディスレクシアにも有効とされ、徐々に日本でも導入が進んでいます。

みなさんもテレビなどで壁に20個くらいのボタンが合って、光った場所をすばやく押すトレーニングを見たことがあるのではないでしょうか。こうしたトレーニングの応用で、ディスレクシアの症状を改善することができるとされています。欧米では広く取り入れられている手法です。

自分もしくは自分の子どもがディスレクシアではないかと感じた場合、まずは専門機関での検査をしましょう。一般的には、知能検査のWPPSI、WISC、WAISなどを行い、その他に脳のMRIを撮ったりします。また、ADHD(注意欠陥多動性障害)や自閉スペクトラム症(アスペルガー症候群)の併発も考えられるため、そちらの検査も行うことがあります。

基本的には、本人が苦手なことを把握し、日常生活の困難を少なくするための工夫やトレーニングを一緒に考えていくことになります。ICTを利用すれば従来よりも学習面での困難は減っていきます。家族だけでなく、学校ともよく相談して環境整備を進めるようにしてください。

まとめ

ディスレクシアは知能に遅れがないのに読み書きが著しく苦手な学習障害です。周囲の理解がないといじめや理不尽な説教による不登校、引きこもり、うつ病などの二次障害に繋がります。今回紹介した症状の中でも個人差はあるので、まずは専門機関を受診して本人がどのようなことが苦手なのかをしっかりと把握し、その上で周囲の人間がどうサポートしていけるかを考えるようにしましょう。


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