強迫性障害の症状、原因、治療について精神科医が詳しく解説
発達障害専門外来
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強迫性障害の症状、原因、治療について精神科医が詳しく解説

戸締まりをきちんとしたか不安になって家に戻って確認した経験がある方はいるのではないでしょうか。また、毎朝のルーティーンが決まっていて、それをやらないと気持ち悪いという方もいると思います。

こうした経験は誰しもあることですが、明らかに度が過ぎていたり、意味がない、嫌だとわかっているのにやめられない状態の人は、「強迫性障害」という障害の可能性があります。

今回は、強迫性障害について、症状や原因、診断、治療について解説したあと、周囲の人が強迫性障害の方に対してできるサポートをご紹介します。

強迫性障害とは

強迫性障害は自分でも無駄なことだとか意味のないことだとわかっているのに、どうしても頭から離れない事があったり、何度も同じ行動を繰り返してしまい日常生活に影響が出てしまう症状です。注意深い、心配性だと片付けられてしまうことも多く、自分が強迫性障害であることに気づいていない方もいます。辛くなっていたり不便を感じている人は、専門機関での相談、治療が必要な障害です。

国内ではどのくらいの人が強迫性障害かは明らかになっていませんが、およそ40~50人に1人の割合で見られると言われています。発症年齢は19~20歳が多く、成人患者の30~50%は小児期から青年期に症状が出始めています。

強迫性障害の症状

強迫性障害の症状は大きく分けて2つあります。自分の意志に反してある考えが頭から離れない「強迫観念」、強迫観念に紐づく不安を解消しようと何度も同じ行動を繰り返す「強迫行為」です。これらのせいで日常生活に支障をきたす状態が強迫性障害です。

代表的な強迫観念と強迫行為について見ていきましょう。

  1. 不潔恐怖と洗浄
    何かウイルスに感染してしまうことを恐れて、繰り返し手を洗ったり、何回も入浴したりします。電車の吊り革、手すりなどに触れた手を洗わずにいると、色々なものに接触して汚染を広げてしまうというような不安を感じています。また、トイレを使うたびに何時間も掃除しないと気が済まなかったりもします。
  2. 加害恐怖
    車の運転中に石を踏んだ感覚があると、人を轢いてしまったのではないかと不安になってしまい、現場に戻って確認したり、現場の近辺の人や警察に対して確認したりします。その他にも、間違ったことを伝えてしまっていないか気になって何度も確認するなど、誰かを傷つけていないか、迷惑になってしまっていないか不安に感じてしまいます。
  3. 確認行為
    家を出るときに戸締まりをしたか、ガスを止めたか、電気を消したかなどが気になってしまい、何度も家に戻って確認します。自分の行為の完全性を常に疑ってしまうため、何度も確かめてしまうのです。例えば作成した書類を上司に確認してもらう前、何度も最終確認をしてから出ないと不安で提出できないといった症状もあります。
  4. 儀式行為
    決めた順番通りにやらないと不吉なことが起こると不安に感じ、少しでも間違ったら最初からやり直してしまいます。例えば服を着る順番が全て決まっていると考えていて、それを間違えると一度全部脱いでからまた着直したりします。その他にも、掃除の順番、お風呂で身体を洗う順番など、色々なものの順番が決まっていてそれに異常にこだわります。他にも、道を曲がるたびにお祈りするなど独自の考えにとらわれて、実行しないと不安でたまらなくなってしまいます。
  5. 数字への固執
    不吉な数字を極端に避けたり、ラッキーナンバーに極端にこだわります。例えば縁起が悪いとされている「4」や「9」が病院の番号札に書いてあるとどうしても不安になって変えてもらうように依頼したりします。
  6. 配置、対称性への固執
    テーブルの上のものの配置を必ず決まった状態にしないと気が済まなかったり、2つあるものは左右対象に置かないと不安になってしまいます。また、決めた配置から少しでもずれていると気になってしまうため、その調整に何分もかけてしまうことがあります。
  7. 不要なものの保存
    大切なものを捨ててしまうのではないかと思い、なかなかゴミを捨てられない、仕分けして捨てるものを確認したはずなのに何度も確認してしまうなど、不要だと分かっているのに保存してしまいます。

強迫性障害の原因

強迫性障害に特有の要因は特定されていませんが、脳内の特定部位の障害や、神経伝達物質のセロトニンの機能異常によって起こると言われています。

また、対人関係のストレスや、受験、妊娠、出産といったライフイベントがきっかけとなって発症しているケースが多いです。

その他にも、遺伝的要因、几帳面な性格、考え方など、様々な原因が考えられています。

強迫性障害の診断

強迫性障害の診断基準は、WHOが定めるICD-10とアメリカ精神医学会が定めるDSM-5の2つがあります。

診断基準:ICD-10

確定診断のためには、強迫症状あるいは強迫行為、あるいはその両方が、少なくとも2週間連続してほとんど毎日存在し、生活する上での苦痛か妨げの原因でなければならない。強迫症状は以下の特徴をもっているべきである。

  1. 強迫症状は患者自身の思考あるいは衝動として認識されなければならない。
  2. もはや抵抗しなくなったものがほかにあるとしても、患者が依然として抵抗する思考あるいは行為が少なくとも1つなければならない。
  3. 思考あるいは行為の遂行は、それ自体が楽しいものであってはならない(緊張や不安の単なる低減は、この意味で楽しいとはみなされない)。
  4. 思考、表象あるいは衝動は、不快で反復性でなければならない。

※引用『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)

診断基準:DSM-5

A.強迫観念、強迫行為、またはその両方の存在

強迫観念は以下の1. と2. によって定義される:

  1. 繰り返される特徴的な思考、衝動、またはイメージで、それは障害中の一時期には侵入的で不適切なものとして体験されており、たいていの人においてそれは強い不安や苦痛の原因となる。
  2. その人はその思考、衝動、またはイメージを無視したり抑え込もうとしたり、または何か他の思考や行動(例:強迫行為を行うなど)によって中和しようと試みる。

強迫行為は以下の1. と2. によって定義される:

  1. 繰り返しの行動(例:手を洗う、順番に並べる、確認する)または心の中の行為(例:祈る、数える、声に出さずに言葉を繰り返す)であり、その人は強迫観念に対して、または厳密に適用しなくてはいけないある決まりに従ってそれらの行為を行うよう駆り立てられているように感じている。
  2. その行動または心の中の行為は、不安または苦痛を避けるかまたは緩和すること、または何か恐ろしい出来事や状況を避けることを目的としている。しかしその行動または心の中の行為は、それによって中和したり予防したりしようとしていることとは現実的な意味ではつながりをもたず、または明らかに過剰である。

注:幼い子どもはこれらの行動や心の中の行為の目的をはっきり述べることができないかもしれない。

B.強迫観念または強迫行為は時間を浪費させる(1日1時間以上かける)。または臨床的に意味のある苦痛、ま たは社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

C.その障害は、物質(例:乱用薬物、医薬品)または他の医学的疾患の直接的な生理学的作用によるものではない。

D.その障害は他の精神疾患ではうまく説明できない(例:全般不安症における過剰な心配、醜形恐怖症における容貌へのこだわり、ため込み症における所有物を捨てたり手放したりすることの困難さ、抜毛症における抜毛、皮膚むしり症における皮膚むしり、常同運動症における常同症、摂食障害における習慣的な食行動、物質関連障害および嗜好性障害群における物質やギャンブルへの没頭、病気不安症における病気をもつことへのこだわり、パラフィリア障害群における性的衝動や性的空想、秩序破壊的・運動制御・素行症群における衝動、うつ病における罪悪感の反芻、統合失調症スペクトラム障害および他の精神病性障害群における思考吹入や妄想的なこだわり、自閉スペクトラム症における反復的な行動様式)

該当すれば特定せよ

病識が十分または概ね十分:その人は強迫症の信念がまったく、またはおそらく正しくない、あるいは正しいかもしれないし、正しくないかもしれないと認識している。

病識が不十分:その人は強迫症の信念がおそらく正しいと思っている。

病識が欠如した妄想的な信念を伴う:その人は強迫症の信念は正しいと完全に確信している。

該当すれば特定せよ

チック関連:その人はチック症の現在症ないし既往歴がある。

※引用『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

強迫性障害の治療

強迫性障害の治療は薬物療法、精神療法が一般的で、近年はTMS治療という磁気刺激を使った治療も有効とされています。

薬物療法

原因の1つと考えられているセロトニン異常を調整するため、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)という抗うつ、抗不安薬を使用します。

服薬量が多いと効果も期待できるため、効果が認められる場合は次第に薬の量を増やします。効果が期待できない場合は薬の変更を行ったり、治療方法の変更を行います。

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が効きにくい方は、以下のような原因が考えられます。

患者背景や症状の特徴

  • 早発例(男性)
  • 初診時の全体的機能水準が低い
  • 罹病期間がより長期
  • 強迫症状の内容が多彩
  • 治療前の重症度が高度

併存症

  • 社交不安障害、チック障害、統合失調型パーソナリティ障害
  • 境界性、回避性、強迫性パーソナリティ障害

強迫症状の特徴

  • 対称性、整頓、溜め込み症状が優勢
  • 性的、宗教的など観念優位型
  • 強迫性緩慢

精神療法

精神療法では、森田療法、認知行動療法が一般的です。症状の特性や患者様の治療意識によっても変わります。

森田療法では、精神的、身体的症状の原因となっている強迫観念を無理に打ち消すことはせず、どう行動したらそれによる症状を改善できるかを考え、生活できるようにしていきます。

認知行動療法では、曝露反応妨害法という手法を用い、不安に向き合い、我慢するためのトレーニングを行います。例えば不潔恐怖を抱える患者さまの場合は、汚いと思うものをレベルで分けて考え、比較的軽いものから触っても手を洗わずに過ごす訓練をします。慣れてきたらレベルを上げていき、徐々に我慢できるようにしていきます。また、この方法は病院だけでは足りないため、家庭でも実施する必要があります。

TMS治療

アメリカではアメリカ食品医薬品局(FDA)から認可されている最新の治療法で、脳の特定部位を磁気で刺激し、脳血流を増加させることで正常な機能に戻すという治療です。

TMS治療は強迫性障害に有効であることが研究によって示されています。(詳しくはこちらの英語の記事を参照してください)

強迫性障害(OCD)患者22人を対象とした最近の多施設共同研究では、6週間の両側のrTMSにより、プラセボと比較して強迫性障害(OCD)症状及びうつ症状が有意に軽減されたことが示されました。さらに、この効果はその後の追跡調査でも持続しました。

TMS治療は日本ではまだ一部の医療機関でしか受けることができません。当院ではTMS治療を行うことが可能ですので、ぜひお問い合わせください。

TMS治療に関する詳細はこちらの記事を参照してください。

周囲のサポート

強迫性障害は家族や周囲の人にも大きな影響が及びます。巻き込み症状と言って、手洗いや戸締まりの確認がちゃんとできたかを家族や周囲の人に対しても繰り返し求めます。また、自分が作ったルール(帰宅したらお風呂場に行って服を全部脱いで全身を洗う等)を自分の見ているところで強制したりします。

こうした症状は本人の症状が悪化するほどより強力になっていき、最後には耐えきれないほどの大きな負担になります。こうした要求にはすべて応じたほうが治療に向いていると思うかもしれませんが、どんどんエスカレートしたり結局自分の思うようにいかずに余計に不安を掻き立てることにもつながるため、本人と話し合ってルールを定めるのが重要です。

家族にも強要することの不合理性や非現実性を本人に伝え、巻き込み症状について制限をすることで治療環境も安定していきます。

家族や周囲の人にとってはストレスを感じることも多いと思いますが、患者本人が最も苦しんでいることを忘れず、病気について理解するように努めましょう。治療には比較的時間がかかりますが、根気強く支えてあげることが大切です。

まとめ

強迫性障害は様々な症状があり、悪化すると家族や周囲の人も巻き込んでしまい、負担が大きくなってしまう障害です。早期の治療が悪化を防ぎます。患者本人が治療に前向きに取り組めるよう、周囲のサポートが重要になります。生活リズムを整える手助けをしたり、社会との関わりがなくなってしまわないようにしてあげましょう。


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