デパスの効果や副作用は?高齢者や妊婦が使用する際の注意点、依存性についても医師が解説
目次
デパスとは、1984年に発売されたベンゾジアゼピン系に分類される抗不安薬・睡眠薬です。
一般的にはエチゾラムという名前で知られています。
脳の神経細胞の興奮を鎮める「ガンマアミノ酪酸(GABA:ギャバ)」の機能を助ける効果を持っています。いわば「脳の過剰なはたらきにブレーキをかける」性質をもったお薬といえます。
今回は、デパスの主な効果や副作用、使用上の注意点、依存性について解説していきます。
デパスの使用例
デパスは脳の過剰な働きを抑える性質があるため、主に以下の症状が見られる際に使用されます。
- 神経症における不安・緊張・抑うつ・神経衰弱症状・睡眠障害
- うつ病における不安・緊張・睡眠障害
- 心身症(高血圧症,胃・十二指腸潰瘍)における身体症候ならびに不安・緊張・抑うつ・睡眠障害
- 統合失調症における睡眠障害
- 不安・緊張・抑うつおよび筋緊張(頸椎症、腰痛症、筋収縮性頭痛)
不安や緊張の症状に対して幅広く使われているお薬ですので、服用したことがあるという方も多いかもしれません。
デパスには気持ちを落ち着ける効果が期待できるため、日常生活だけでなく、不眠の改善にも効果が期待できます。また、筋弛緩作用も強いため、肩こりなどの筋緊張を和らげる目的でも使われています。
デパスの特徴
デパスは2016年10月まで向精神薬としての指定を受けておらず、処方制限は特にありませんでした。しかし、向精神薬に指定されてからは様々な規制を受けるようになりました。気軽に使われてきた薬でしたが、様々な副作用を考えると注意して使うべき薬であるという認識に変わったのです。
とはいえ、医師の指示に従って用法用量を守って使用すれば有用な薬であることは間違いありません。
デパスの効果・メリット
上記の使用例に上げた不安や緊張を緩和する効果があります。よって、不眠などに対して有効です。以下で詳しく解説します。
効果
抗不安作用
不安や緊張、不眠といった症状が現れるのは脳の神経細胞の過剰な興奮によるものですが、デパスは脳のリラックス系の神経受容体に結合することで、リラックスさせることができます。
筋弛緩作用
脊髄反射を抑えることで筋肉の緊張を緩める作用もあります。がんこな肩こり、腰痛、緊張型頭痛に応用されることがあります。
催眠作用
興奮状態を沈めて寝付きを良くします。そのため、特に催眠作用の強いものは睡眠薬として用いられています。ただし、筋弛緩作用から睡眠時無呼吸が悪化することがあるため、服用の際には注意が必要となります。
抗けいれん作用
けいれんを予防したり、抑えたりすることができます。
メリット
即効性が期待できる
お薬の効き方をみるにあたり、重要なのは「半減期」と「最高血中濃度到達時間」です。
- 半減期:血中濃度が半分になるまでの時間(=体から排出される時間)
- 最高血中濃度到達時間:血中濃度がピークになるまでの時間(=薬の效果を一番感じる時間)
デパスは、半減期が約6時間、最高血中濃度到達時間が約3時間となっています。
半減期が短いということは、効き目が短いということです。
一方で最高血中濃度到達時間は約3時間ということで、効果を最大限感じるまでに約3時間かかることになります。結構かかると思う方もいるでしょうが、デパスの場合は服用後1時間で急激に血中濃度が上がっていきます。そのため、飲み始めて20~30分ほどでその効果を実感する方が多いです。つまり、即効性のあるお薬ということです。
また、半減期が短いため、デパスを1日中効かせようとする場合は1日3回の服用が必要になります。
ジェネリック薬品がある
デパスは現在4剤形が発売されています。
それぞれジェネリック医薬品(後発品)が発売されていますので、それぞれの薬価を表にまとめました。
種類 | 先発品 | 後発品(ジェネリック医薬品) |
---|---|---|
0.25mg錠 | 9.2円 | 5.9円 |
0.5mg錠 | 9.2円 | 6.4円 |
1mg錠 | 10.6円 | 6.5~9.8円 |
1%細粒 | 52.9円 | 23円 |
※2020年5月現在
先発品も後発品もお薬の有効成分は同じであり、同等な効果を示すための試験をクリアしています。そのため、効き目や安全性についてはジェネリックでも特段変わりはありません。しかし、製造方法や製剤工夫が会社によって様々であるためそれぞれが微妙に異なります。
そのため、先発品からジェネリックに変えた際に効き目が弱くなったと感じる人もいらっしゃいます。その場合は少し高くても先発品を服用するといいかもしれません。
デパスの副作用・デメリット
ここまでデパスのメリットについて話をしてきましたが、デパスはあくまでも対症療法を目的とした薬であるため、病気や症状の根本的な改善は期待できません。
続いて、デパスがもたらすデメリットにも目を向けていきましょう。
デパスがもたらす副作用
デパスは効果を強く実感できる一方で、脳の機能を低下させることで不安や緊張を落ち着かせているため、眠気やふらつきといった副作用が認められることがあります。そのため、服用の際は副作用について十分に留意しながら、日常生活への支障や転倒などにも気を付ける必要があるでしょう。
また、依存性については特に注意が必要です。
眠気
デパスの副作用として代表的なものとして、眠気があります。デパスは催眠作用があるため、眠気が強く表れてしまうことがあります。不安や緊張が強まっているときには気にならないかもしれませんが、落ち着いた時に眠気が強まるということがあるので注意が必要です。抗不安薬ではありますが、催眠作用が強いために睡眠薬として使われることもあります。
眠気の副作用は、服用を続けていると徐々に薄れていくことも少なくありません。お薬によるメリットが多いようであれば、少し様子を見たり服用のタイミングを変えてみるなどの工夫も選択肢になるでしょう。
ふらつき
抗不安薬には、筋弛緩作用もあります。緊張が強くて頭痛や肩こりなどがある方にはプラスに働く一方で、筋肉の緊張を緩めることで、ふらつきや脱力感となってしまうこともあります。デパスは筋弛緩作用が強く、ふらつきの副作用に注意が必要な抗不安薬です。
ふらつきは、高齢で足腰が弱っている方には特に注意が必要です。転倒して怪我をしたり、寝たきりになってしまうリスクもあります。
デパスの依存性
デパスの副作用の中でも特に気をつけたいのが依存性です。
デパスに限らず、抗不安薬を長期的に服用していると、お薬をやめていくときに離脱症状が生じることがあります。これは身体依存といい、身体がお薬に慣れてしまうことで、今度はお薬をやめる際にバランスが崩れてしまうという状態が起こりえます。
依存性が出始めるのは状況によりますが、1ヶ月以上使う場合は注意したほうが良いでしょう。
また、医師の指示に従わずに服薬すると依存になりやすいため、注意してください。服用のタイミングや用量は医師が計算して副作用が少なくなるように決めていますので、無視すると副作用が出たり、期待する効果が表れなかったりします。絶対にやめましょう。
デパスの離脱作用
離脱作用とは、上記で述べたような薬の量が増えてしまったり、良くなっているのにやめられないなどの身体的、精神的な症状を指します。
デパスの場合は身体依存が起こり得ます。お薬に体が慣れてしまい、いきなり中止すると離脱症状が出てしまうことがあるのです。
離脱作用を和らげるためには、薬をゆっくりと減らしていく必要があります。大きく3種類の減薬方法があり、いずれかの方法を試して効果を見つつ、難しい場合は別の方法を試すという形で離脱作用を和らげます。
症状が改善してきたからといって勝手に服用をやめたりすると、離脱症状が起こりやすくなります。
減薬方法①漸減法
漸減法は、1~2週間毎に薬の量を減らしていく方法です。最初に試すことが多い方法で、服用量が少なくなってくるほど、減量も慎重にしていく必要があります。
減薬方法②隔日法
隔日法はお薬の服用の間隔を少しずつ長くしていく方法です。
例えばこれまで毎日服用していた人は1日おきに服用するようにして、離脱症状が表れなかったら次は2日おきにして、、というように、徐々に服用の間隔を延ばしていき、最終的には服用をやめるというものです。
患者さんによっては漸減法よりも隔日法のほうが続けやすいということもあります。
減薬方法③置換法
上記の漸減法、隔日法での減薬が難しかった場合に置換法が取られることが多いです。
置換法とは、作用時間の長いお薬に置き換えていき、その後に減薬をするものです。デパスの場合、置き換えられる代表的なお薬はメイラックスやセルシン/ホリゾンです。
これらのお薬は作用時間が長く、減薬しても体からゆっくりと抜けていきます。
デパスが身体に及ぼす影響
高齢者の場合
高齢者の場合、眠気やふらつきといった副作用の他に、せん妄にも注意が必要です。また、日本では明確にはなっていないものの、海外ではデパスの服用で認知症のリスクが高まるという報告があります。
この認知症のリスクに関しては、医師の指示に従って正しく服用していればそれほど高いリスクがあるわけではありません。
妊娠中の場合
基本的には妊娠中はお薬は控えたほうが良いものです。しかしながら、最低限のお薬を続けていかないと不安定になってしまう方もいらっしゃいます。
デパスのお薬の添付文章には、「治療上の有益性が危険性を上回ると判断された場合にのみ投与すること」と記載されています。
妊娠に絞って影響を考える際は、以下の2点を考えることになるでしょう。
- 奇形を起こしやすいか(催奇形性)
- 胎児への薬の成分の影響(授乳)
まず催奇形性についてですが、デパスに限らず抗不安薬は口唇口蓋裂のリスクが高くなると言われていました。しかしながら、近年では因果関係がないという報告もされています。そのため、抗不安薬が奇形を引き起こすリスクは低いでしょう。
一方で、出産後には一定の注意が必要です。修正直後の離脱症状、また赤ちゃんに鎮静が認められれケースもあります。デパスを服用していることを先生に伝えておけば特段心配は要りませんので、ご安心ください。
次に胎児へ薬の成分が届くことによる影響についてですが、授乳時には注意が必要です。デパスのお薬の添付文章には、「授乳中の婦人に投与する場合には、授乳を中止させること」と記載されています。
そのため、基本的には授乳中はデパスの服用はしないほうが良いのですが、赤ちゃんの発達になにか影響を及ぼすという報告は現在のところ上がっていません。先生と相談しつつ、デパスを服用しながら授乳を続けるといった判断もあるでしょう。
一方で、母乳を通して赤ちゃんにデパスが伝わることは事実です。赤ちゃんの眠気が強くなり、栄養を十分に取ることができなくなることも考えられますので注意しましょう。
もしどうしてもデパスの服用がやめられない場合は、人工乳哺育にしたり、服用間隔を開けるなどの対処をすることができます。先生と相談しつつ、最適な方法を探るようにしましょう。
運転への影響
抗不安薬は原則的にすべてのお薬が運転や危険作業が禁止となっています。上述したとおり、眠気やふらつきといった副作用が生じる可能性があるためです。
また、デパスの添付文章では以下のように書かれています。
眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること。
こうした注意書きもあるため、デパスを服用したら運転を禁止したほうが良いでしょう。
しかし、実際は難しい問題となっており、社会生活の妨げになってしまうことも考えられます。さらに、抗不安薬を服用せずに不安のコントロールができないまま運転するほうが危険が大きいのではないか、という意見も出ています。
現状は自己責任で服用して運転している方が多いのが実情です。しかし、車の事故は自分だけでなく周囲にも迷惑を掛けるうえ、最悪の場合は命を落とすことにも繋がります。少しでも眠気を感じた場合は運転は行わないようにしましょう。
アルコール(お酒)との併用
お薬の添付文章では、
中枢神経系の抑制作用を有するアルコールとの併用により、相加的な中枢神経系抑制作用が増強されることがあるので注意を要する。本剤投与時には飲酒させないことが望ましい。
となっており、併用の注意喚起がされています。禁忌というわけではないものの、できるだけ控えるべきとされています。
アルコールとデパスは、どちらも中枢神経を抑制する作用があります。つまり併用することにより、脳の機能を落としすぎることになってしまいます。
このためデパスとアルコールを併用すると、薬やお酒が効き過ぎてしまう、効果が不安定になるといったことに気をつける必要があります。
デパスもアルコールも、どちらも肝臓で分解されます。このためお薬の効果が強まると同時に、アルコールに酔いやすくなってしまうことにも注意を要します。飲酒習慣がある場合には、肝臓の機能も変化していきます。それはお薬の血中濃度を不安定にさせ、効果も不安定にさせることになってしまいます。
そして、デパスとアルコールを併用することでの最大の問題は、双方に依存しやすくなってしまうという点になります。
まとめ
現在デパスを内服している方で副作用に不安を感じている方や、妊娠がわかった際などは我慢せずに医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
脳の状態を診断するQEEG検査(定量的脳波検査)【当日治療開始可能】
15歳男性 ADHD、アスペルガー症候群合併
21歳男性 アスペルガー症候群、不安障害合併
22歳女性 アスペルガー症候群、うつ合併
8歳女性 学習障害、ADHD合併
技術の進歩により、治療前と治療後のQEEGの変化を客観的に評価することも可能になりました。
QEEG検査で脳の状態を可視化し、結果に応じて、薬を使わない治療など個人に合った治療を提案します。