大人の愛着障害の克服に大切な安全基地とは
目次
愛着障害は、養育者との愛着形成がうまくいかなかったことで現れる小児期を中心とした疾患概念です。近年では、大人の発達障害には小児期の愛着形成が関係しているとされます。
今回は、愛着障害の予防と治療に必要な安全基地についてご紹介します。
愛着障害について
愛着障害は、両親などの療育者との愛着が形成されず、子どもの情緒や対人関係に問題が生じる状態を指します。
主な原因としては養育者からの虐待や離別があり、愛着がうまく形成できなかった子どもは過度に人を恐れたり、反対に誰に対しても馴れ馴れしく接してしまうといった症状が現れることがあります。
詳しくは以下の愛着障害についての記事を参考にしてください。
安全基地とは
安全基地とは、精神的に安定し、保護される保証がある環境を意味します。現代においては、子どもに限らず成人においても安全基地の概念は適用されると考えられています。
わかりやすく言うと「こころの拠り所」のことです。
子どもは養育者などの信頼を寄せる大人(=安全基地)があることで、自分から周囲の環境に関わっていき、自発的・自主的な人間に成長していきます。
安心して帰れる場所があり、困ったら必ず助けてくれる大人がいることが、主体性を養うために必要なのです。
物的環境を用意するだけでは足りない
子どもの好奇心を大切にし、色々な経験をさせてあげたいと考える親御さんは多いです。そのため、新しい位おもちゃを買ってあげたり、色々な場所に連れて行ったりすることがあります。
そういった経験は子どもにとってもちろん大切ですが、その経験と同時に精神的なサポートをしてくれる人が必要です。
子どもは、寝返り、ハイハイ、つかまり立ちというようにできることが増え、活動範囲が広がっていくことで、親から離れて好きなように探索するようになります。
興味を持ったものに自分から関わり、好奇心を刺激されていきます。そのため、好奇心を刺激する物的環境を用意してあげることはもちろん大切です。
一方で、子どもが新しいことやものに触れるとき、未知への不安や恐怖もつきまとっています。その不安や恐怖を乗り越えるために、そばで活動を見守り、何かがあったら必ず助けてくれる存在が必要になるのです。
このように、両親や保育者など、子どもにとって信頼できる「愛着対象」との間に形成された情緒的な絆を「アタッチメント」と呼びます。
愛着障害の克服と安全基地
上記のような愛着がうまく形成されず、情緒や対人関係に問題を抱えてしまっている状態を愛着障害と呼びますが、子どもであれ大人であれ、その状態を克服するためには安全基地となる存在が必要です。
今ある不安や心配、無力感、苦しみを受け入れてもらえる存在が、愛着障害を克服する一歩目です。
子どもであれば両親や保育者、養育者が愛着対象になることが多いですが、大人になるにつれて愛着対象は変わっていきます。友達、学校の先生、恋人など、安全基地になる対象は様々です。
幼い頃に両親や養育者との愛着形成がうまくいかなかった人でも、友達や恋人が愛着対象になり、絆を築くことは可能です。相手を信頼し、何かあったら助けてくれる存在は大きいのです。
注意すべきは、友達や恋人が愛着対象の場合、両親から無条件で受けていたアタッチメントとは異なり、相互的なアタッチメントになるということです。
何かあったら助けてくれるという安心感を、自分だけでなく相手にも与え、お互いに支え合っていく関係性になるということです。
安全基地があると何ができるようになるか
安全基地があると、他者に共感できるようになります。自分の気持ちを理解し、共感してくれる存在に出会うことで、自分も他者の気持ちを理解し、共感することを知ることができます。
他者に共感できるようになると、全部か無かの極端な思考が軽減されていきます。折り合いをつけた考え方ができるようになっていき、他者とうまくコミュニケーションが取れるようになっていきます。
しかし、愛着障害を持つ人は、人との距離感を保つのが苦手です。そのため、そもそも友達や恋人、配偶者という関係になること自体が困難なことも多いです。
専門家を安全基地にすることも選択肢
友達や恋人、配偶者と互いに支え合いながら愛着障害を克服していくのが理想的ではありますが、その1つ前のステップとして信頼できる専門家を頼ることできます。
心療内科や精神科の医師、カウンセラーに安全基地になってもらい、日常生活における不安や恐怖を定期的に話せる状態を作りましょう。
また、専門家に頼るとその他の精神疾患を調べることもできます。うつ症状などを併発していることもありますし、そもそも愛着障害の背景に発達障害が合併していることもあります。
愛着障害の克服のために、その背景の発達障害の治療を並行して行うことも可能です。
自分の状態を正確に把握することで、治療に前向きに取り組むことができますし、周囲の理解も得られやすいです。まずは専門機関を受診することも検討するのがおすすめです。
良い安全基地はどう作るのか
精神科医の岡田尊司氏は、自著の中で、良い安全基地の条件を以下のように紹介しています。
- 安全感を保証してもらえる。
- 感受性(共感性とも)を持ち、そうしてもらえる。
- 応答性があり、求めているときに応してもらえる。
- 対応に安定性がある。
- 何でも話せる。
上記の5つを満たす安全基地があると、安心して他者とコミュニケーションを取ったり、人間関係を構築することができるようになっていくとされます。
そもそも、上記の5つが幼児期に得られずに不安を感じても受け止めてもらえなかったことが愛着障害につながっているため、それを補うようにサポートしてくれる存在が重要です。
まとめ
安全基地は大人の愛着障害の克服には必要不可欠です。友人や恋人、配偶者と相互に支え合う関係性を作ることで安全基地を作ることが理想的ではありますが、その前段階として専門家を頼ることは悪いことではありません。
愛着障害は克服できます。ゆっくりでいいので、少しずつ克服していきましょう。
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