急性ストレス障害(ASD)とは?症状が続く期間やPTSDとの違い、対処法を解説
目次
事故や災害、暴力被害など、強い出来事を経験したあとに、気持ちが落ち着かない、眠れない、突然その場面を思い出してしまうといった反応が続くことがあります。つらい体験の直後に心身が不安定になることは珍しくありません。ただ、症状が強く、日常生活に支障が出ているときは、急性ストレス障害として考えられる場合があります。
この記事では、急性ストレス障害の特徴やPTSDとの違い、対処法、受診を考えたいサインをわかりやすく解説します。
急性ストレス障害(ASD)とは
急性ストレス障害(Acute Stress Disorder)とは、命の危険を感じるような出来事や、強い恐怖を伴う体験のあとに生じる急性のストレス反応です。一般的なストレスによる不調とは異なり、フラッシュバックや回避、強い緊張、不眠、現実感の薄れなどが続き、日常生活に影響が及ぶことがあります。
急性ストレス障害の原因
きっかけになるのは、災害、事故、火災、暴力、性的被害、虐待、身近な人の他界など、強い恐怖や無力感を伴うトラウマ体験です。自分が直接体験した場合だけでなく、重大な出来事を目撃したり、強い衝撃を受けたりしたことが影響するケースもあります。出来事の大きさだけでなく、そのときにどれほど強い恐怖や混乱を感じたかも大切な要素です。
主な症状
主な症状としては、体験した出来事が突然よみがえるフラッシュバック、悪夢、思い出したくない気持ちから関連する場所や会話を避ける回避、現実感が薄れる解離、些細な音にも過剰に反応する過覚醒、不眠、イライラ、不安などがあげられます。つらい記憶そのものだけでなく、身体の緊張が続く、ぼんやりする、感情が動きにくいといった形で表れることもあります。
症状が続く期間
急性ストレス障害は、一般的に心的外傷となる出来事のあと3日以上1ヶ月以内に症状が続く場合に考えられます。つらい体験の直後に一時的な動揺が起こるだけでなく、その反応が続き、苦痛や生活上の支障を伴う点が重要です。1ヶ月を超えて症状が続く場合には、PTSDが考えられます。
急性ストレス障害とPTSDとの違い
急性ストレス障害とPTSD(心的外傷後ストレス障害)は、どちらも強烈なトラウマ体験のあとにみられるため、違いがわかりにくいと感じる方も少なくありません。実際には共通する症状が多い一方で、症状が続く期間や経過の見方に違いがあります。
| 項目 | 急性ストレス障害 | PTSD |
|---|---|---|
| きっかけ | 災害、事故、暴力などの心的外傷的出来事 | 災害、事故、暴力などの心的外傷的出来事 |
| 主な症状 | フラッシュバック、回避、解離、過覚醒、不眠など | フラッシュバック、回避、過覚醒、不眠など |
| 症状の期間 | 3日以上1ヶ月以内 | 1ヶ月を超えて続く |
| 考え方のポイント | 強い出来事のあとに起こる急性期の反応 | 症状が長引き、生活への影響が続く状態 |
大きな違いは症状の続く長さ
急性ストレス障害とPTSDの大きな違いは、症状が続く期間です。急性ストレス障害は、強い出来事のあとに起こる急性期の反応で、一般的には1ヶ月以内の経過が前提になります。一方、1ヶ月を超えてフラッシュバックや回避、不眠、過剰な警戒などが続く場合には、PTSDが考えられます。
症状だけでは見分けにくい
急性ストレス障害とPTSDは、どちらもトラウマ体験のあとに起こり、フラッシュバック、回避、過覚醒など共通する症状がみられます。そのため、症状だけで完全に見分けるのは簡単ではありません。違いを考えるときは、症状の種類だけでなく、始まった時期や続いている長さも合わせてみる必要があります。
適応障害と混同しやすいケース
強いストレスで心身の不調が出る病気として、適応障害を思い浮かべる方もいるかもしれません。適応障害もストレスがきっかけになりますが、急性ストレス障害は、事故や災害、暴力などの心的外傷的出来事が背景にある点が特徴です。どちらもつらい状態であることに変わりはありませんが、きっかけとなる出来事の性質や症状のまとまり方に違いがあります。
急性ストレス障害の対処法
急性ストレス障害が疑われるときは、「早く元に戻らなければ」と無理を重ねるより、まず心身の負担を減らすことが大切です。症状の強さや生活への影響に応じて、休養や周囲の支援、必要な医療につなげていく視点が役立ちます。
まずは安全な環境で休む
強い出来事のあとに情報刺激へ触れ続けると、気持ちが落ち着きにくくなることがあります。災害や事件、事故に関する映像や情報を何度も見返すより、安心できる環境で休むことを優先した方がよい場合もあります。食事と睡眠のリズムを整え、身体を休ませることが回復の土台になります。
1人で抱え込まない
つらい出来事のあと、自分の気持ちを言葉にできず、1人で抱え込んでしまう方は少なくありません。しかし、安心して話せる相手がいるだけでも、緊張が和らぐことがあります。家族や信頼できる人に今の状態を共有し、必要に応じて相談先を確保しておくことが大切です。
治療は状態に応じて検討される
治療は症状の内容や強さに応じて検討されます。一般的には、安心できる関わりや休養を土台とし、必要に応じて精神療法や、一時的な不安・不眠への薬物療法が選択肢になります。急性期の症状に対する対応は一律ではなく、どの方法が適しているかは個々の状態によって異なります。つらさが強いときは無理に我慢せず、医療機関で相談することも大切です。
受診を考えたいサイン
つらい体験のあとに一時的な動揺が起こること自体は珍しくありません。ただし、症状が強い、長引いている、生活に影響が出ているといった場合には、無理を続けず相談先を考えた方がよいこともあります。ここでは、受診を考えたいサインについて紹介します。
フラッシュバックや不眠が続く
突然その場面がよみがえる、悪夢を見る、眠れない、些細な音にも驚いてしまうといった状態が続くと、回復に必要な休養も取りにくくなります。心身が休まらない日が続いているときは、早めに相談先を持つことが大切です。
日常生活に支障が出ている
仕事や学校に行けない、人と会うことが難しい、集中できない、食事や睡眠が乱れているなど、生活に支障が出ているときは注意が必要です。症状の有無だけでなく、今の生活が保てているかどうかも大切な目安になります。
1ヶ月近く症状が続いている
急性ストレス障害は、急性期の反応として1ヶ月以内に改善に向かうことが多い症状です。症状が1ヶ月近く続いている、あるいは1ヶ月を超えて続いている場合は、PTSDの可能性も含めて相談を検討した方がよいでしょう。経過が長引いているときは、自己判断だけで抱え込まず、医療機関に相談することが大切です。
まとめ
急性ストレス障害は、事故や災害、暴力などの強い出来事のあとに起こる急性のストレス反応です。フラッシュバック、回避、解離、過覚醒、不眠などがみられ、一般には3日以上1ヶ月以内に続く場合に考えられます。PTSDとの大きな違いは症状の続く期間にあり、1ヶ月を超えて続く場合は別の整理が必要になることもあります。つらさが強いときは無理をせず、安全な環境で休み、必要に応じて周囲や医療機関への相談を検討してください。
ブレインクリニックのPTSD外来紹介ページです。
この記事の監修医師
ブレインクリニック東京院 院長
矢嶋 正
- 経歴
- 杏林大学医学部 卒業
- 大阪大学医学部附属病院
- 2023.04ブレインクリニック東京院
- 2024.05ブレインクリニック東京院 院長
- 2025.09ブレインクリニック東京院 院長
兼 上級医 - 2026.08ブレインクリニック新宿院 院長
兼 上級医 - 2026.10ブレインクリニック東京院 院長
兼 上級医
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