
自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の治療法は?治療の具体的な方法などを解説します【医師が分かりやすく解説】

自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の方は対人関係を困難に感じたり、特定の領域に強いこだわりを示したりする傾向があります。自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)は、神経ネットワークの機能異常によって生じますが、自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の症状を改善する方法はあるのか詳しく解説します。
自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の非薬物療法
自閉症スペクトラムの、外出や他者との交流を避けて家庭内にひきこもる「社会的ひきこもり」の状態となることも多いため、就学や就労を含めた社会参加へ機会を作れるような支援が必要となるでしょう。
この場合、非薬物療法が主となります。
認知行動療法や社会技能訓練もある程度の効果は認められていますが、自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)に対する一般的な治療として十分に確立しているとは言えません。
なぜなら、患者が学習し、習慣化することはとても難しいからです。そのため、社会参加に向けての治療は精神療法や個別的な指導に加え、本人にとって最も適した支援を見つけていくことが重要となります。
自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)に特化した集団精神療法、デイケア、作業療法などは各専門施設が独自に行なっているものが多いです。
自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)に特化していない場合でも、「人に慣れる」ことを目的とした社会的ひきこもりからの回復に対しては一定の効果があります。また、参加している人が複数いれば、疎外感解消や疾病特性の指摘による気付きなど、通常の治療では得られない効果も期待できるでしょう。
ただし、「集団に参加する」「対人行動を高める」などの目標を立ててしまうと困難を伴う事が多くなるため、個々の特性を十分に理解した上で行う必要があります。
社会的ひきこもりが改善され、本人が就学や就労を望む場合、継続的に支援を行います。
自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)は治療できるのか?
自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)を根本的に治す薬は今のところありません。
現在自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の症状を改善可能という科学的根拠があるのは TMS治療(磁気刺激治療)という治療になります。
TMS治療に関してはこちらの記事をご覧ください。
TMS治療(磁気刺激治療)はなぜ自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)に効果があるのか?
自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)など発達障害の症状をきたすのは、大脳皮質の皮質の可塑性異常なのではないかと最近の研究から指摘されています。
ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)に関連している遺伝子は神経のシナプスの結合の発達と機能に関与している遺伝子であることが分かっています。
つまりASDは脳の神経シナプスの結合の異常によって引き起こされていると言えます。ASDではLTPという可塑性に関する機能が通常より過剰になっており、一度結びついたシナプスの結合が非上に強固で、それがこだわりや両極端な考えにつながっています。
長崎大学はマウスにLTPを増強するように遺伝子を組み込んだところ、こだわりが強くなったり、引きこもったり、音に対する過敏反応を示すことを発表しました。(理化学研究所 脳科学総合研究センターの有賀 純氏の研究より)
TMSは強固に結び過ぎたシナプスの結合を解除することが可能です。こだわりや強迫観念の原因となっていたシナプスの結合がなくなることで、症状を緩和することが出来るのです。
医師の主観ではなく、客観的なデータで診断
脳の状態を診断するQEEG検査(定量的脳波検査)

治療前と治療後のQEEG検査結果の変化

人工知能(AI)を用いて、ディープラーニング(深層学習)することで、様々な脳の状態を統計学的に把握することが出来るようになりました。
5歳から高齢者(大人)まで幅広い年齢層の方に対してQEEG検査の結果に即した、結果に応じて、薬を使わない治療など個人に合った治療を提案する事も可能です。
客観的指標のない精神科領域において、欧米では非常に需要のある検査法です。