
自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)によく見られる症状と年齢別の特徴について【医師が分かりやすく解説】
目次

自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)によく見られる症状と年齢別の特徴について医学的見地から詳しく解説します。
自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)3つの症状
①コミュニケーションの質の障害
会話能力は表面上は問題はありませんが、その会話の裏側の意図や行間の意味を読むことが苦手です。
場の空気や年齢に合わない喋り方をします。
年齢に応じた立ち振る舞いや常識に関する理解が十分ではなく、 遠回しの言い方や婉曲表現が得意ではありません。
②極端な思考や特定の対象へのこだわり
一度興味を持つと極端なまでに集中します。この極度の集中を過集中といいます。
決まったルールを好み、極端なこだわりを持ちますが、その決まったルールが破られることを非常に嫌う傾向があります。
一方、この性質は逆にプラスに働くこともあります。社会で重要な成果をあげた自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の人が多くいることがそれを物語っています。
③社会性の障害
どうやって他人と接して良いのか分からないため、うまくコミュニケーションが取れず、他人に興味がないように見られることがあります。
幼児期は一人遊びが多くなります。
自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の年齢別にみた症状や特徴
子供から大人に成長するに従って、症状や特徴がどう変わっていくか説明していきます
乳児(0歳〜1歳)の自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の症状や特徴
言語や認知機能が未発達な段階にあるため、症状が表に出ず、診断の難易度は高いため、すぐに自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の診断を行うことは少ないです。
乳児期によく見られる特徴的を紹介します。
①音に対する過敏性がある
周りの大人が大きな声で話したり、大音量で音楽を流したりすると機嫌が悪くなり、泣きます。
また、飛行機や繁華街など、騒音があるところに連れて行と、不機嫌で泣きっぱなしになるなどの症状があります。
この症状を聴覚過敏といいます。
②興味がある対象へは極端に集中する
自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の乳児は一度興味を持ったことに対しては、極端なまでに熱中します。
乳児期から既にこの症状があることが多く、一日中同じおもちゃを触っていたり、同じ絵本のページを見ていることもあります。
③視線が合わなかったり、表情が少ない
親が自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の子供の目を見ても、視線が合わなかったり、笑いかけても反応が薄かったりします。
例えば親が子供に食事の時に、親がスプーンで乳児の口まで食事を持っていく時に、「あ~ん」と言いながら自分の口を開けますが、普通なら子供もそれを真似して口を開けます。
これを動作共鳴といいます。
自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)のお子さんは、大人の動作にあわせて同調的にそれを模倣する動作共鳴が苦手なことが多いです。
幼児(1歳〜小学校就学)の自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の症状や特徴
乳児期には言葉を発するようになり、会話が出来るようになり、自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の特徴が見えやすくなります。
①表情が読み取れない
いたずらなどをして親が怒っても、自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の子どもは、親の表情から怒っていることを類推することが出来ません。表情から理解出来ないために言葉でハッキリと説明する必要があります。
②なぜ叱られているのか理解できない
自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の子どもは、常識があまり通じないのでなぜ怒られているか逐一説明しなければなりません。
アスペルガー症候群の一つの特徴として、仲良くなるのが苦手ということがあります。
③一人で遊ぶ事が多い
自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の子どもは、他人に興味を持たず、同年代の子供が遊んでいても一緒に遊ぼうとしません。
小学生の自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の症状や特徴
小学校では集団行動が多くなり、周囲と協調するのが苦手な特徴が明らかになってきます。
①特定の科目だけ得意
アスペルガー症候群には、知的に正常なので、テストの成績からは分からないこともありますが、数学が得意だけど、社会は苦手など、得意不得意が見られる場合があります。
②集団行動が苦手
自分のこだわりを優先したり、その場の空気が読めなかったりします。
一人遊びに没頭してしまったり、特定の友人とのみ親しくするなどの人間関係の偏りも見られます。
中高生の自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の症状や特徴
周囲と馴染めず、生きづらさを自覚し始めます。
①不登校になる
人間関係が上手くいかず、孤立したり、いじめの対象になり不登校になってしまうこともあります。
早期の対応が重要になりますが、無理に登校するように強制するのは自殺の原因にもなり得るため禁物です。
②友人を作るのが苦手
コミュニケーション能力の問題により、学校での自分の居場所をを見つけるのが難しかったり、友達が作れないなどの人間関係のトラブルも目立ちます。
大人の自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の症状や特徴
成人になると社会でうまくやっていく必要が生じます。自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)の方が仕事を選ぶ場合は、適した環境が重要です。
①職場での人間関係のトラブル
こだわりや協調性不足により、仕事上マイナスの評価が多くなることがあります。
何か他人より抜きん出た分野や能力がある場合は、人間関係のマイナス分を補う事が出来ますが、特に目立った能力がないと職場でお荷物扱いされることもあります。
② 二次障害が出やすい
生きづらさを感じ困難な人生を送ることも多く、そこから二次的にさまざまな問題が起こります。これがいわゆる二次障害です。
躁うつ病、うつ病、不安障害といったもの、あるいはアルコール依存症なども二次障害に含みます。
アスペルガー症候群の持つ才能とプラスの側面に関して
アスペルガー症候群は人類の脳の進化の1つの形ではないかという意見もあります。
感情やコミュニケーション能力に脳の神経ネットワークの機能を利用するより、コミュニケーション能力を抑えてまで論理的思考力、記憶力に関して最大限のパフォーマンスを得られるように最適化された脳の神経ネットワークの結果が、アスペルガー症候群なのかもしれません。
一般的な教育機関もカウンセラーも、ほとんどの専門家は、アスペルガー症候群について、プラス面をあまり意識していません。
周囲がアスペルガー症候群のマイナス面ばかりに目を向けてしまうと、アスペルガーの持つ才能が評価されなくなってしまいます。
ぐるぐる思考など、日常生活にマイナスになる症状や特徴だけをうまく治療で改善する事が出来れば、社会に大きく貢献する事が可能です。
医師の主観ではなく、客観的なデータで診断
脳の状態を診断するQEEG検査(定量的脳波検査)

治療前と治療後のQEEG検査結果の変化

人工知能(AI)を用いて、ディープラーニング(深層学習)することで、様々な脳の状態を統計学的に把握することが出来るようになりました。
5歳から高齢者(大人)まで幅広い年齢層の方に対してQEEG検査の結果に即した、結果に応じて、薬を使わない治療など個人に合った治療を提案する事も可能です。
客観的指標のない精神科領域において、欧米では非常に需要のある検査法です。