ADHD(注意欠陥多動性障害)の最新の診断方法に関して【医師が分かりやすく解説】

ADHD(注意欠陥多動性障害)の診断の歴史的変遷

 1968年にアメリカ精神医学会から出版された「精神疾患の診断・統計マニュアル第2版(DSM-II)」は初めて子どもの精神障害を記載し、その中には「hyperkinetic reaction of childhood(小児期の多動性反応)」が含まれていました。
1970年代になると、多動に加えて、注意の持続や衝動のコントロールも重視されるようになり、1980年に出版されたDSM-IIIでは「attention deficit disorder(注意欠陥障害)」という概念が提唱されました。
その後、不注意、多動性、衝動性が主症状として確立して、2013年に出版されたDSM-5では「attention-deficit/hyperactivity disorder(注意欠如・多動性障害/注意欠如・多動症): ADHD」という概念となっています。
DSM-5

ADHD(注意欠陥多動性障害)の診断:DSM-IV-TRからDSM-5への変更点

DSM-IV-TR DSM-5
症状確認が必要な発症年齢 7歳以前 12歳以前
診断に必要な項目数 6項項目 17歳未満:6項目
17歳以上:5項目
アスペルガー症候群との合併 認めない 認める
診断に必要な場 学校、職場、家庭 ざまざまな場所

子どものADHD(注意欠陥多動性障害)の診断

小学生では問診では特に正確に診断できない事が多く、後に述べる脳波検査による診断が有効です。

ADHD(注意欠陥多動性障害)によく合併する障害の診断

ADHD(注意欠陥多動性障害)の合併症診断

大人のADHD(注意欠陥多動性障害)の診断の問題点

DSM-5の診断基準では年齢が上がって成人になるにつれて診断基準に当てはまらなくなり、診断基準上は治る人が多いものの、機能的に日常生活に問題ないように改善している大人のADHD(注意欠陥多動性障害)の方は少ないことが明らかになっています。
大人のADHD(注意欠陥多動性障害)の診断の問題点 つまり、ADHD(注意欠陥多動性障害)は日常生活に問題ないように自然に治ることが少なく、大人まで続く慢性の疾患と考えられます。
日常生活に問題を抱えていても、ADHD(注意欠陥多動性障害)の診断基準に合致しないために適切なサポートを受けることが出来ないことも多いのが問題点です。

なぜ大人になって初めてADHD(注意欠陥多動性障害)と診断されることがあるのか?

大人になって初めてADHD(注意欠陥多動性障害)を発症しているのではありません。
子どもの時から症状があっても、「家庭や学校のサポート」「限られた負担と責任」により、障害に至らなかったと考えられます。
しかし、成人になり、複雑な職場環境、家族からの独立、結婚、出産などにより、対処能力が限界に達して、医療機関を受診することになるケースがあります。
一見、大人になってADHD(注意欠陥多動性障害)を発症したように見えますが、発達障害の特性はもともと持っていたと考えられます。

ADHD(注意欠陥多動性障害)の客観的な診断に有効なQEEG(定量的脳波検査)とは

脳波はデジタル脳波の時代になりました。
また、コンピューターを用いて様々な脳の状態を定量的に把握することが出来るようになりました。

米食品医薬品局(FDA)は、
発達障害のQEEG検査を承認しています。

脳波の基本
δ(デルタ)波:0.5~4Hz未満 ノンレム睡眠時に見られる
θ(シータ)波:4~8Hz未満 夢を見ている時、つまりレム睡眠時に見られる
α(アルファ)波:8~13Hz未満 閉眼、安静、覚醒した状態、ぼーっとしている時に見られる
β(ベータ)波:13Hz以上 物事を考えている時に見られる

これらの脳波の特徴を解析し、総合的に発達障害を診断します。

ADHD特性、アスペルガー特性、不安特性、うつ特性などを
診断することが出来ます。

客観的指標のない精神科領域において、欧米では非常に需要のある検査法です。

ADHD(注意欠陥多動性障害)は
脳波によって4つのグループに分類されることが明らかになっています。

δ(デルタ)波、θ(シータ)波β(ベータ)波の増加、θ(シータ)/ β(ベータ)波 比の増加が報告されています。

β(ベータ)波が強すぎる場合は、一つのことに過集中になる傾向が生まれたり、θ(シータ)波が強すぎる場合は、唐突に注意が途切れ、多くのことに注意が散漫したり、一つのことに深く集中できなくなる傾向が生まれたりします。

2017年ヴァルナの大学のRaya Dimitrova氏は発達障害患者と健常人の定量的脳波検査のデータを比較し、δ(デルタ)波、θ(シータ)波、β(ベータ)波に明らかな違いがあることを発表しました。

ADHD(注意欠如・多動症)ではδ(デルタ)波、θ(シータ)波の増加が目立ちます。

欧米ではθ(シータ)/ β(ベータ)の数値が診療に用いられています。

自閉症スペクトラム(アスペルガー症候群)患者では、特にδ(デルタ)波、θ(シータ)波が増加しています。
知能が正常な高機能アスペルガー症候群患者(ASD high)ではβ(ベータ)波の増加は穏やかで、知能が低下している低機能自閉症患者(ASD low)では著名なβ(ベータ)波の増加が見られました。

QEEG検査で脳の状態を可視化し、診断に応じて、薬を使わない治療など個人に合った治療を提案する事も可能です。